どかんっ
不意に襲う衝撃に、遅れてくる痛み
鼻から口に生暖かい感触が流れ、涙が出る
なっちゃんが駆け寄ってきて、
ティッシュを貸してくれた。
固く丸めたティッシュを詰めながら、
もう一度立ち上がる。
顔はアウトにならないから、まだ負けてない。
ボールを手に取り放り投げた。
日が沈むまでは、おわらない。
プラネタリウム、最後に行ったのはいつだっただろう
小学生の頃の校外学習
中学生の頃の遠足
高校生の頃の合宿
大学生の頃の旅行
思い返せば何度もあって、気付けば無くなっていた
愛していた星々は、成長とともに忘れ去られた
「あれが夏の大三角だよ」
小さなあの子が示してくれたそれは
少し違うものだったけれど
あの頃の煌めきは変わることなく
胸の中に残っていた
空をみて込み上げる熱さは変わらない
あぁ、もう一度、
もう一度あれを見てみたい
その目いっぱいに広がる銀河の海を
人の作った結晶を
「お手をどうぞ」
差し出された手のひらに自分のものを重ねる
似合わない、気取った態度に口元をほころばせる
ドタドタと足を踏みならし、
映画のシーンを真似した
あの映像には遠く及ばないけれど
今だけは、ここが世界で1番のダンスホールだ
「─── さん─── さん」
「教えてください」
やわらかな風がカーテンを押し上げる
隙間から漏れた光がコインを照らした
キラリと光るそれにぴったりとくっついた指はみっつ
知りたいことはひとつだけ
「─── さん─── さん」
「教えてください」
失敗したら入れ替わる
おまじないの怪異、おまじないに成った怪異
「─── さんには、どこに行けば会えますか?」
貴方に会える奇跡を信じて
ジッと音がなって、火が消えた。
ゆらゆらとした淡い光は無くなり、
ツンとした匂いだけが漂った。
もうここに音が響くことは無だろう。
付ける音も、消える音も。
妙な節の入ったその声も。
放棄され、朽ち果て、
いつかは崩れて無くなるだろう。
営みの証だけを残して。