NoName

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10/12/2024, 4:59:31 PM

どかんっ

不意に襲う衝撃に、遅れてくる痛み
鼻から口に生暖かい感触が流れ、涙が出る

なっちゃんが駆け寄ってきて、
ティッシュを貸してくれた。

固く丸めたティッシュを詰めながら、
もう一度立ち上がる。

顔はアウトにならないから、まだ負けてない。

ボールを手に取り放り投げた。
日が沈むまでは、おわらない。

10/5/2024, 4:57:56 PM

プラネタリウム、最後に行ったのはいつだっただろう

小学生の頃の校外学習
中学生の頃の遠足
高校生の頃の合宿
大学生の頃の旅行

思い返せば何度もあって、気付けば無くなっていた
愛していた星々は、成長とともに忘れ去られた

「あれが夏の大三角だよ」

小さなあの子が示してくれたそれは
少し違うものだったけれど

あの頃の煌めきは変わることなく
胸の中に残っていた

空をみて込み上げる熱さは変わらない

あぁ、もう一度、
もう一度あれを見てみたい

その目いっぱいに広がる銀河の海を
人の作った結晶を

10/4/2024, 2:41:58 PM

「お手をどうぞ」

差し出された手のひらに自分のものを重ねる
似合わない、気取った態度に口元をほころばせる

ドタドタと足を踏みならし、
映画のシーンを真似した

あの映像には遠く及ばないけれど

今だけは、ここが世界で1番のダンスホールだ

10/2/2024, 2:51:36 PM

「─── さん─── さん」
「教えてください」

やわらかな風がカーテンを押し上げる
隙間から漏れた光がコインを照らした

キラリと光るそれにぴったりとくっついた指はみっつ
知りたいことはひとつだけ

「─── さん─── さん」
「教えてください」

失敗したら入れ替わる
おまじないの怪異、おまじないに成った怪異

「─── さんには、どこに行けば会えますか?」

貴方に会える奇跡を信じて

9/29/2024, 1:39:21 PM

ジッと音がなって、火が消えた。
ゆらゆらとした淡い光は無くなり、
ツンとした匂いだけが漂った。

もうここに音が響くことは無だろう。
付ける音も、消える音も。
妙な節の入ったその声も。

放棄され、朽ち果て、
いつかは崩れて無くなるだろう。

営みの証だけを残して。

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