悪魔。
それは仏道修行を
さまたげる魔物とされる
人を悪に誘う存在。
なんとなく
悪魔は他人のことなどお構い無しで、
全てが自己中心的・傲慢で、
人を堕落させたり
時には犯罪の手助けをしたり
マイナスなイメージをもつだろう。
しかし、少女は違った。
短所より長所を好み、
投票・少数派の尊重重視。
人を堕とすなんて無理ですと言わんばかりの
人助け三昧の救い。
悪魔の中でも群を抜いた変わり者で
なぜ天使ではなく悪魔なのか
というところまで来ている。
本来、
魔界では自己殺人が一番良いものとされ
悪魔は魔王の使者として
自己殺人へ導くという
使命的なものがあるのだが、
少女は自己殺人を救ってしまう。
生きることこそ悪と向き合うことであり
悪に立ち向かうためなら手助けをする、という
なんとまあ
お人好しすぎる使命的なものを持っている。
堕天となるのも時間の問題だと
他の悪魔は関わることを辞め始めた頃、
少女は魔王様に頼まれ
一人の若者と出会う。
若者は少女の事が見えるようで
人見知りな少女に
毎日たくさん話しかけていた。
若者は少女を笑わせたいようで
元々多かった口数が更に増えていった。
口が達者になるということは
人を堕とし込みやすくできるということ。
少女も少し悪魔らしくなってきたと
魔王様も喜んでいた時だった。
若者が事故で亡くなった。
もちろん事故ではない。
若者は自宅で紐をぶら下げ
自己殺人をした、
つまり若者自身が殺したのだ。
"Good Midnight!"
真っ青な空に
風で揺れる羽根。
黒くてコウモリのような
悪魔と呼ばれる少女の羽根。
泣きながら今までの話が楽しかったと
目一杯墓の前で語り、
最後ににっこりと笑った。
それは若者が
ずっと少女にさせたかった表情だった。
私の中にある秘密の箱。
それは墓場まで持っていくと決めた箱。
出かかって食い止めた
言わなくてもいいこと、
大声で大嫌いだって
言ってやりたかったこと、
叶わないと初めから思っていて
想うことすらやめたくなったこと。
握り潰せば息がしやすくて
箱に入れれば生きやすかった。
私はただ幸せを感じたかった。
なのにクソみたいな性格は
クソみたいな世界に合わないらしかった。
寂しさと箱ばかり増えて、
ポッカリと穴が空いてくる。
そこは風通しが良くて
埋められなかった。
私と同じ思いをしてる人は
きっとそこら中にいるし、
なんなら本の中にもいる。
なのに客観視した時
自分が1番苦しそうに見えるのは
自分だけの苦しさがあって
それが絡まって解けないから。
"Good Midnight!"
涙は目が腫れるだけの水だから
なるべく流したくない。
でも今日だけは
溢れさせてあげようと思った。
無人島に行くならば
私は本を持っていく。
大体の人は
食料だったり、ナイフだったり、
無人島で生きようとする。
私はどうにも理解できない。
誰かに見つけてもらえる距離の
無人島だったら
そんなものが無くなってすぐ見つかる。
もし遠く離れた無人島だったら
私は迷わず生きることを諦める。
これが痛いのもしんどいのも
全てが嫌で面倒くさいと感じる人の末路。
最後の暇つぶしに
私は本を選ぶ。
それも5回ほど読んだことのある
お気に入りの本。
新しい馴染みのない本を選んでしまうと
その本が面白くなかった時
最期がこれって…ってなるから。
私、一応最期を気にする系だから。
まあそんな感じで
多分「あの夏が飽和する。」を選ぶ。
逃避行とは少し違うけど
最後のシーンの
込み上げてくる感動は
何回読んでも止むことはない。
でもやっぱり
無人島で生き抜こうとする人は
よくわからない。
"Good Midnight!"
こうして今日も
つまらない人間として
生きているわけで。
からんっ。
古い棚から瓶が落ちてきた。
ラベルには秋風🍂と書いてある。
中身は少しだけ残っていて
同じように
ラベルが貼ってある瓶は
山ほどあった。
中身を少しだけ空気中に撒いてみると
さーっとひんやり涼しい風が吹いた。
まさか現実に影響するとは思わなかったけど。
急に寒くなってしまった外。
きっとこれから秋本番!って時に
元々吹いていた秋風プラス、
瓶の風を撒いてしまったからだ。
やるなら夏だったなぁと
瓶を見つけた自分を恨んだ。
もこもこの服と靴、
少し早い気がするコタツ。
足は冷えやすくて吊りやすいから
私は全て早めに出すのだ。
ずっと瓶はそこにあったのに
存在に気づかず過ごして
こんなことになるなんて。
"Good Midnight!"
昨日の最低気温が
今日の最高気温な毎日へ。
雨の予感。
パラパラと私の気持ちを
さらっていく。
流してくれる。
留めておきたいとは思わない。
私に必要な気持ちだとしても
今は要らない。
消えて欲しいと思ってた。
押し殺して飲み込むだけじゃ
溢れちゃうから。
楽しい思い出も
悲しい思いも。
過去の全てを
流していくしかない。
人はいっぱい持てないから。
"Good Midnight!"
すっきり空っぽになった私を埋めるのは
やっぱり楽しい思い出と
悲しい思いだけだった。