るに

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10/11/2025, 2:39:09 PM

いつもと変わらない夏の日のこと。
もちろんする事なんか無くて
なんとなくいつもの場所に。
そこには君がもう居て、
ブランコに座って黒猫を撫でてた。
君は撫でていた手をぱっとこちらに向ける。
やぁやぁ。
ここにいると思ったよ。
軽く挨拶をして
渡された猫を抱き抱える。
君からは相変わらず
柑橘系の爽やかな香りがする。
最近どう?
まあまあかな、そっちは?
ぼちぼちかな。
眩しい日差しの中、
そんな中身のない会話をしていた。
でも、私は夏嫌いかな。
君は夏が好きそうな性格だったから
私は驚いた。
その一瞬を黒猫は逃さなかった。
するりと私の腕から抜けていき
公園から出ていってしまった。
あー!私まだあんまりもふもふしてないのにー!
君は猫を追いかけて走り出す。
君はいっつも1つのものを追いかけると
周りが見えなくなって
しょっちゅう迷子になったり、
無くし物をしたりするので
私も後を追う。
もう少し、
早く追いかけていたら良かったと思った。
丁度曲がり角を曲がった時
猫は歩道の向こう側に、
君は赤く光る信号が照らす
歩道に飛び出していた。
バッとなにか大きなものが来たかと思えば
それはトラックで、
君を轢きずって通り過ぎていった。
血飛沫は全身に飛んだ。
君からはもう
柑橘系の香りはしなかった。
鉄っぽくて酸っぱいような血の匂いばかり。
何かが込み上げてきて
私は激しくむせ返った。
目を瞑り
耳を塞ぎ叫ぶ。
嘘だ。
君がこんなところで死んじゃうなんて。
嘘、嘘、嘘。
嘘じゃないよ。
君の声か私の声か分からないような
そんな声が聞こえた。
ゆっくり目を開け見てみると
空気がゆらゆらと立っていた。
陽炎と言うのだろうか。
見るのは初めてでよくわからない
未知の交差点。
陽炎はこちらを笑顔で見つめていたけど
暑さと悲しさと気持ち悪さで
蝉の音しか聞こえず眩んだ。
"Good Midnight!"
目が覚めると
何故かベッドにいて
目覚めの悪い夢を見たと思い、
蝉の声に煩さを覚えた。

10/10/2025, 3:38:05 PM

秋風の吹く夕方。
一輪のコスモスが咲いていた。
夕日に照らされ、
真っ白なコスモスは
鮮やかなオレンジ色に染っていた。
見たことがないほど
真っ白なコスモスだった。
これほど綺麗な花が咲くってことは
誰かが水と愛情を
たっぷり注いだんだろうと思った。
私はその一輪を愛おしく見つめた。
ずっと眺めていたい。
ずっと、ずーっと。
そんな考えが
なぜか頭から離れなかった。
花を折りたいわけじゃない。
持ち帰りたいわけじゃない。
なのに手はどんどん茎に伸びていく。
どうやって咲いたのか、
どこの水を与えられたのか、
どこから来たのか。
知りたい、もっと見たい。
ぐるぐると
思考が支配されかけていた時、
私の手を誰かが引き止めた。
癖毛の可愛い子だった。
その子は一生懸命話をしてくれて
私の気を花から逸らそうとしてくれた。
次第に癖毛の子に意識が吸い込まれていく。
気づくともう19時で
癖毛の子と別れた。
"Good Midnight!"
このままじゃ依存するよ。
どこからかそんな声が聞こえた。
花はあの癖毛の子が育てたものだと、
癖毛の子は人を魅了しすぎると。
私は無視して家へと帰った。
頭の中はもう癖毛の子でいっぱいだった。

10/9/2025, 2:48:41 PM

1年振りの秋の紅葉に
焦がれ憧れたこの気持ちに
秋恋と名付けてみたりして。
どこにも片付けておけない気持ちは
さっさとゴミ箱に捨てちゃって。
挫折なんかもした事があって、
その時ハッキリ思った。
あぁ私、世界舐めてるなぁって。
あらゆる分野で言えてしまう。
適当にやってるつもりはないけど
努力的に見ても
客観的に見ても
適当にやってるようにしか見えなくて。
そのくせ楽しいことを探し求めてて。
自分の都合ってやつを
すごく大事にしてて。
"Good Midnight!"
風が強くて涼しい。
私は世界のことを舐めてるように
世界も私を舐めてて
今日も運が悪い。

10/8/2025, 3:21:35 PM

愛する、それ故に
私はその人から
だんだん離れていく。
だってその人私の事なんか
どうせ好きじゃないし、
むしろ苦手だと思うし。
あの私の友達の方が
その人と楽しく話せるし、
可愛いし、面白いし。
きっと友達の方がお似合い。
私はおじゃま虫だから
さっさと居なくならなきゃって。
でも、
どうしても足取りが重い。
だって私も愛して欲しいもん。
好きになってもらいたいし、
沢山話したい。
こういう言えない思いは
涙として外に流して
消してしまう方が楽だって。
なんでかなぁ。
諦めなきゃいけないって
ずっと思うのに
でも…やっぱり…って
私は立ち止まっては振り向くばかり。
"Good Midnight!"
人の幸せを願うほど
自分は幸せになれないって
気づいた時にはもう遅いね。

10/7/2025, 3:34:16 PM

静寂の中心で
誰かがパチンと指を鳴らす。
どこからともなく現れた霧と共に
サァーっと姿が見えてくる。
白髪の少女の正体は
ネブラスオオカミだった。
普段は白雲峠にいるが、
今日は風が強いので
少し風を弱めてもらいに
人里へ降りてきたという訳だ。
少女は迷わない足取りで
ある神社へ向かった。
修行僧が何十人といる中、
一際目立つ者がいた。
1人だけ錫杖を持っている者。
そう、少女が会いに来た人だ。
世間話をして本題に入る。
話はすぐに終わり、
少女は峠へと歩き出す。
さっきの者が500年ほど前より
理解力が上がっていることに
驚きを隠せず、
修行僧をまとめる者はやっぱり凄いなぁと
オオカミに戻っていった。
"Good Midnight!"
そよ風が心地よくなってきた頃、
次は300年後にでも
顔を出そうと空を見つめていた。

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