るに

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9/17/2025, 5:16:48 PM

うっかり紐を踏んでしまったので
靴紐を結び直す。
こんな僅か数秒の間に
過去のちょっぴり悲しいことを
いくつも思い出してしまう。
一生懸命に描いた絵が
白紙の方がマシと言われた時。
その紙すら邪魔なので
返すから捨てろと言われた時。
靴紐を結び終えただけなのに
ポロポロと涙が零れる。
私の頭の中は
もう悲しかったことでいっぱいだ。
このまま消えてしまいたくなる。
少し自分が否定されただけで
こんなに生きにくい世界なら。
私が泣いていても
もちろん誰も足をとめない。
結び目は緩く、
すぐ解けてしまうので
また結ぶ。
苦しくて悲しくて
今すぐ家に帰って大泣きしたい。
再び結び終わると、
私は走り出していた。
今出せる全速力で。
何度も転けそうになった。
何度も人とぶつかりそうになった。
でも私は止まらなかった。
"Good Midnight!"
押し殺した泣き声は
いつの間にか唸り声に変わり、
気づいた時には夜だった。

9/16/2025, 3:37:39 PM

幸せってなんだろう。
本を読んでたら心が落ち着く。
でもそれは
心が満たされてるわけじゃない。
幸せってきっと
心が満たされてることだ。
料理を食べてたらお腹が満たされる。
でもそれは
ずっと食べていたいとか
そういうわけじゃない。
幸せってきっと
ずっと続けていたい、
続いていて欲しいものだ。
好きな映画を見たら?
自分の部屋で毛布にくるまったら?
多分どれも幸せとは少し違う。
曖昧で
答えが一人ひとり違うからこそ
探すのも、見つけるのも難しい。
でも真夜中は他とは違う何かがある。
私は真夜中がちょっと好きだ。
眩しく光るコンビニ、
ぽつんと佇む自販機、
帰宅・出勤する車の音。
他にも沢山。
一つでも欠けてたら
どんなに夜がいいものでも
私は好けなかっただろう。
"Good Midnight!"
生まれてから
もう何千回と繰り返した
1日を締めくくる真夜中。
幸せの答えは、まだ見つからないまま。

9/15/2025, 3:39:45 PM

温泉には
多くの人が来る。
特に9月は多い。
それに色んな人が来る。
9月は環境がガラッと変わることが
毎年あるので、
言わば
センチメンタル・ジャーニーということ。
ここは白雲峠にある温泉宿、
「真夜中の泉」。
私は今夜も
フロントスタッフとして
お客様を出迎え、ご案内する。
普通の人間のお客様から
ネブラスオオカミのお客様まで、
真夜中の泉は
白雲峠のみんなに愛されている。
なぜ名前が真夜中の泉かというと、
ここには露天風呂があって
真夜中に丁度どの温泉も
暗く黒くなり、
そこに星屑と月が浮かぶから。
もちろん営業時間が
真夜中からだからっていうのも
あると思うけどね。
建物が全て木でできたこの温泉宿は
白雲峠で1番遠い場所から来てくれる
プチ旅行を楽しむお客様も大勢いる。
私はそんな
温泉を楽しみにしながら
受付をするお客様を見るのが
毎日とても楽しい。
ここのフロントスタッフは
頭が痛くなるほどの靴箱の鍵の保管で
少しきつい所があるが、
お客様の楽しみそうな顔は
私たちフロントスタッフの仕事を
笑顔を使って応援してくれている。
"Good Midnight!"
今日も温まりたいお客様や、
プチ旅行しに来たお客様が
フロントへとやってくる。

9/14/2025, 3:54:19 PM

君と見上げる月…🌙
それはどこでも見れる月で
いつもと満ち欠けしか変わらなくて
なのに今日は
君はにゃあっと鳴いて、
三日月に乗った。
えっ?って戸惑いすぎて
私も乗れるかなぁなんて
考え始めてたけど、
君が飛び跳ねてこっちに来ると
その反動で
月は太陽と役目を交代。
あっという間に昼になってしまった。
君は月と太陽で
時間を替えれちゃう、
ちょっとすごい猫だったんだ。
でも私は真夜中が好きで、
君も真夜中が好きだったから、
こーゆーことが出来るよーって
見せてくれてから、
君はまた真夜中に戻してくれた。
「時の番人」。
君はそう呼ばれているらしい。
世界の時を調整しつつ、
乱すやつがいないように守る役目だとか。
"Good Midnight!"
知ってるのは一部の人だけで
君は私を
真夜中と同じくらい
好きだと言った。

9/13/2025, 4:20:31 PM

真っ白なキャンバスを
一人ひとり違う色で染めていく。
誰しも自分に合った色を持っていて
その色や他の色が混ざった色で
キャンバスに絵が描かれていく。
みんなは自由に筆を動かして
満面の笑みで綺麗な花や
山や海、家まで描いてしまう。
私のキャンバスは空白だった。
ぽっかりと空いた
ドーナツの穴みたいに
色とりどりのキャンバスの中で
私だけ真っ白だった。
そう、私は自分の色が白だった。
何色にでも染まる、
誰にでも頷く、
つまらない人間ってことだ。
正直息苦しかった。
息はクロールや平泳ぎの時よりも
断然吸いやすいはずなのに
鼓動が早くて
吸っても吸っても足りなかった。
ドーナツの穴みたいに
抜け落ちてしまいそうで、
埋もれてしまいそうで、
私は何度も筆を落としてしまった。
その度にため息をつき
急いで筆を拾っていた。
ここじゃあ私はやっていけない。
白では何を描いても残らないし、
簡単に他の色に染まってしまう。
私はやめようと思った。
キャンバスを手放して
みんなと同じ自由になろうと。
そんな時、
フクロウに似た人に出会った。
その人はフクロウみたいなメガネを
くいっと上げて、
私のキャンバスをどうにかするのを
手助けしてくれた。
色んな手放す方法を聞いたけど、
最後に教えてもらったのは
白色でもつまらない人間でも、
見える人にはきっと見える。
君の膨大な努力と諦めない根性が。
ということ。
不思議と心が軽くなって
見えなくてもいいから
描いてみようと思えた。
急いで来た道を戻り、
私は白くて大きいクジラを描いた。
大きなクジラは
少しずつ他の人の色と混ざり合い、
虹色のカラフルなクジラになった。
"Good Midnight!"
今日も真っ白なキャンバスは
一人ひとり違う色で染められていく。

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