るに

Open App

真っ白なキャンバスを
一人ひとり違う色で染めていく。
誰しも自分に合った色を持っていて
その色や他の色が混ざった色で
キャンバスに絵が描かれていく。
みんなは自由に筆を動かして
満面の笑みで綺麗な花や
山や海、家まで描いてしまう。
私のキャンバスは空白だった。
ぽっかりと空いた
ドーナツの穴みたいに
色とりどりのキャンバスの中で
私だけ真っ白だった。
そう、私は自分の色が白だった。
何色にでも染まる、
誰にでも頷く、
つまらない人間ってことだ。
正直息苦しかった。
息はクロールや平泳ぎの時よりも
断然吸いやすいはずなのに
鼓動が早くて
吸っても吸っても足りなかった。
ドーナツの穴みたいに
抜け落ちてしまいそうで、
埋もれてしまいそうで、
私は何度も筆を落としてしまった。
その度にため息をつき
急いで筆を拾っていた。
ここじゃあ私はやっていけない。
白では何を描いても残らないし、
簡単に他の色に染まってしまう。
私はやめようと思った。
キャンバスを手放して
みんなと同じ自由になろうと。
そんな時、
フクロウに似た人に出会った。
その人はフクロウみたいなメガネを
くいっと上げて、
私のキャンバスをどうにかするのを
手助けしてくれた。
色んな手放す方法を聞いたけど、
最後に教えてもらったのは
白色でもつまらない人間でも、
見える人にはきっと見える。
君の膨大な努力と諦めない根性が。
ということ。
不思議と心が軽くなって
見えなくてもいいから
描いてみようと思えた。
急いで来た道を戻り、
私は白くて大きいクジラを描いた。
大きなクジラは
少しずつ他の人の色と混ざり合い、
虹色のカラフルなクジラになった。
"Good Midnight!"
今日も真っ白なキャンバスは
一人ひとり違う色で染められていく。

9/13/2025, 4:20:31 PM