るに

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うっかり紐を踏んでしまったので
靴紐を結び直す。
こんな僅か数秒の間に
過去のちょっぴり悲しいことを
いくつも思い出してしまう。
一生懸命に描いた絵が
白紙の方がマシと言われた時。
その紙すら邪魔なので
返すから捨てろと言われた時。
靴紐を結び終えただけなのに
ポロポロと涙が零れる。
私の頭の中は
もう悲しかったことでいっぱいだ。
このまま消えてしまいたくなる。
少し自分が否定されただけで
こんなに生きにくい世界なら。
私が泣いていても
もちろん誰も足をとめない。
結び目は緩く、
すぐ解けてしまうので
また結ぶ。
苦しくて悲しくて
今すぐ家に帰って大泣きしたい。
再び結び終わると、
私は走り出していた。
今出せる全速力で。
何度も転けそうになった。
何度も人とぶつかりそうになった。
でも私は止まらなかった。
"Good Midnight!"
押し殺した泣き声は
いつの間にか唸り声に変わり、
気づいた時には夜だった。

9/17/2025, 5:16:48 PM