私が生まれた村は
おかしな村だった。
赤いアクセサリーをつけた
毎年決められた家の子どもを
大樹に生贄として捧げ、
豊作を願い、
病が治るよう願い、
幸せを願った。
小さい命を犠牲に。
赤いアクセサリーをつけた子どもは
6歳から村の一番端にある
地下の実験室に通うことになる。
そこでは病を治す薬の投与実験、
未知の実の毒味実験、
薬と薬を混入させる変異実験、
薬物を打たれ症状を観測することも
あるんだとか。
そうしてボロボロのまま
12歳から16歳の間に生贄となる。
良くないものが身体に入っている者を
生贄として捧げて
何が願いを叶えてくれ、だ。
なんて思っているが、
私の耳には赤いピアスが
生まれた頃から付けられていた。
何度も実験台にされ、
その度に死にたいと思った。
だけど不意に現れたその人は
外は広く美しいと、
その村から連れ出してくれた。
幸い後遺症はそこまで酷くなかった。
ああ、そうそう。
外ってのは眩しくて
知らないことだらけだった。
助けてくれた人は
私に色んなことを学ばせた。
そして暖かい暮らしを教えてくれた。
私はそれを受け取って
これからの糧にした。
教会に入ったこともあったけど、
教えられたことはどれも、
助けてくれた人が毎日1つずつ
話してくれることだったので
すぐ辞めてしまった。
そのうち助けてくれた人は
不治の病にかかった。
私を置いてまだまだ世界を見るんだと
助けてくれた人は言っていたが、
私はずっとその人のそばにいた。
私は言った。
救ってくれてありがとうって。
あなたに出会えたから
生きててよかったって思えたって。
だから今は少しの眠りについて、
また私を救いに戻って来てって。
"Good Midnight!"
ドンドン鳴り響く
祭りの太鼓の音に合わせ
心臓にも響く熱い鼓動。
全身に太鼓を埋め込まれて
それを叩かれてるみたいだ。
ビリビリと振動が重い。
かき氷のシロップの匂いと
焼きそば、唐揚げの匂い。
浴衣を着て走っている少女たち。
いかにも夏祭りって感じがする。
私は揺れる装飾がついたかんざしが
落ちないように気にしながら
金魚すくいの屋台に来ていた。
金魚をすくいたい訳でも、
金魚を飼いたい訳でもなかった。
ただ祭りっぽいことをして
安心したかった。
金魚すくいで金魚をすくう
あの丸いやつ、ポイの紙は
元々の乾いたままで
すくいに行ってしまうと
すぐ破れやすい。
少し浅く水に濡らして
浸してからすくいにいく。
大きいやつはなるべく選ばず、
角にいる小さいやつを狙う。
入れ物をポイを持ってる手に近づけ、
ここだと思った時に
オルゴールを優しく回すようにすくって
入れ物に入れる。
綺麗な赤い金魚がすくえた。
気づいたら4匹もすくっていたので、
屋台の人に言って、
1番最初にすくった赤い金魚をもらった。
鈴の音が鳴る。
シャラシャラと近づいてくる。
まさかと思い振り向くと
狐に似た人がいた。
こういうイベントでは
知り合いと会いたくない私は
会釈をして
笑顔のまま道を外れた。
狐に似た人もまた
会釈をし、
笑顔のまま去っていった。
"Good Midnight!"
花火が打ち上がる前に
金魚と空き地へ行く。
事前に買っておいた線香花火で
早いとこ私の祭りを終わらせる。
あれもこれも
全部タイミング。
あのタイミングでこうしていたから
ここに私がいて
わたしの周りに
あって当たり前の物たちがある。
でもこのタイミングだったから、
ふとした瞬間思い出す嫌なこと、
ずっと頭に残ってる
苦しかったことがある。
これからもタイミングが大事で
タイミングに運命を握られる。
自分で選んでるけど
こっちだよって
道を辿っていくみたいな。
"Good Midnight!"
望んで生まれた訳じゃないって
よく聞くけど
無意識に自分で選んだタイミングかもね。
虹のはじまりを探して、
クラゲはぷかぷか流されていく。
波に任せて、
運に任せて、
真夜中の海を漂う。
今日っていうのはそうだな…、
久しぶりに夜に雨が降って
上がった日のこと。
空に架かる
七色の橋を見たクラゲは
あそこに行きたいと思った。
初めて目的地も
意味も特に無い
この広い海に流され動くことに
目的地も
意味も出来た瞬間だった。
向かっている途中は
沢山の仲間に出会う。
クローバーのような
模様がついたクラゲ、
光るクラゲ、
足が長いクラゲ、
とても小さいクラゲ。
しかし波は気まぐれで、
虹のはじまりを探し、
目指すクラゲは
瞬く間に一匹になった。
"Good Midnight!"
ある夜
クラゲは自分の身体に
月とは別の色が
反射していることが分かった。
それは丸く黄色い月と
七色に輝く線だった。
虹のはじまりに
ようやく辿り着いたクラゲは
透けた身体で感じ取った。
今日は月が綺麗に映るものね。
夜行バスに揺られ
たどり着いたのは
家から程遠い場所。
木漏れ日が多くて明るい森の奥まで
少し歩くと、
小屋が見えてきた。
ノックをして事情を説明し、
中に入れてもらう。
そこはまさにオアシスだった。
沢山の魔導書に、
魔女の家あるあるの大鎌、
何かの調合のメモが貼ってあった。
そう、私がここまで来たのは
不老不死の薬を作り
自分で飲んだ魔女がいると聞いたから。
別に私には
不老不死になろうと思ったことに
そこまでの理由はない。
特に大切な人がいる訳でも
死にたがりな訳でもないので
なんとなーく不老不死で
何千年か生きちゃいますかーって感じで、
だらだらと生きていようと思った。
魔女さんは薬を飲んだ時が
15、6歳の少女だったからか、
身長の成長も止まり
少し背が低い。
けどまあ、
肉体の歳が近いっちゃ近いから
話しやすいのはある。
魔女さんにとっても不老不死は
そこまで必要な物じゃなかったらしい。
ただの魔法バカで
調合大好きマンで
寝ないで作業してたら
体調を崩してムカついて
不老不死の薬を作ったんだとか。
けど魔女さんも
衝動的にとはいえ
えぐいものを作ってしまった自覚はあるようで、
そこまでホイホイ
人には教えないようにしていると。
私は国家転覆やテロなどは
起こすような人に見えないから
全然おっけーと言って、
小屋に着いてから30分ほどで
もう不老不死の薬を出されてしまった。
"Good Midnight!"
飲んだ後に身体に異常は特に無いけど、
これで
何千年も生きていくのかと思うと
1回くらいノーベル賞でも取りたいと思った。