ドンドン鳴り響く
祭りの太鼓の音に合わせ
心臓にも響く熱い鼓動。
全身に太鼓を埋め込まれて
それを叩かれてるみたいだ。
ビリビリと振動が重い。
かき氷のシロップの匂いと
焼きそば、唐揚げの匂い。
浴衣を着て走っている少女たち。
いかにも夏祭りって感じがする。
私は揺れる装飾がついたかんざしが
落ちないように気にしながら
金魚すくいの屋台に来ていた。
金魚をすくいたい訳でも、
金魚を飼いたい訳でもなかった。
ただ祭りっぽいことをして
安心したかった。
金魚すくいで金魚をすくう
あの丸いやつ、ポイの紙は
元々の乾いたままで
すくいに行ってしまうと
すぐ破れやすい。
少し浅く水に濡らして
浸してからすくいにいく。
大きいやつはなるべく選ばず、
角にいる小さいやつを狙う。
入れ物をポイを持ってる手に近づけ、
ここだと思った時に
オルゴールを優しく回すようにすくって
入れ物に入れる。
綺麗な赤い金魚がすくえた。
気づいたら4匹もすくっていたので、
屋台の人に言って、
1番最初にすくった赤い金魚をもらった。
鈴の音が鳴る。
シャラシャラと近づいてくる。
まさかと思い振り向くと
狐に似た人がいた。
こういうイベントでは
知り合いと会いたくない私は
会釈をして
笑顔のまま道を外れた。
狐に似た人もまた
会釈をし、
笑顔のまま去っていった。
"Good Midnight!"
花火が打ち上がる前に
金魚と空き地へ行く。
事前に買っておいた線香花火で
早いとこ私の祭りを終わらせる。
7/30/2025, 4:13:47 PM