るに

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7/28/2025, 7:29:59 PM

虹のはじまりを探して、
クラゲはぷかぷか流されていく。
波に任せて、
運に任せて、
真夜中の海を漂う。
今日っていうのはそうだな…、
久しぶりに夜に雨が降って
上がった日のこと。
空に架かる
七色の橋を見たクラゲは
あそこに行きたいと思った。
初めて目的地も
意味も特に無い
この広い海に流され動くことに
目的地も
意味も出来た瞬間だった。
向かっている途中は
沢山の仲間に出会う。
クローバーのような
模様がついたクラゲ、
光るクラゲ、
足が長いクラゲ、
とても小さいクラゲ。
しかし波は気まぐれで、
虹のはじまりを探し、
目指すクラゲは
瞬く間に一匹になった。
"Good Midnight!"
ある夜
クラゲは自分の身体に
月とは別の色が
反射していることが分かった。
それは丸く黄色い月と
七色に輝く線だった。
虹のはじまりに
ようやく辿り着いたクラゲは
透けた身体で感じ取った。
今日は月が綺麗に映るものね。

7/27/2025, 5:14:21 PM

夜行バスに揺られ
たどり着いたのは
家から程遠い場所。
木漏れ日が多くて明るい森の奥まで
少し歩くと、
小屋が見えてきた。
ノックをして事情を説明し、
中に入れてもらう。
そこはまさにオアシスだった。
沢山の魔導書に、
魔女の家あるあるの大鎌、
何かの調合のメモが貼ってあった。
そう、私がここまで来たのは
不老不死の薬を作り
自分で飲んだ魔女がいると聞いたから。
別に私には
不老不死になろうと思ったことに
そこまでの理由はない。
特に大切な人がいる訳でも
死にたがりな訳でもないので
なんとなーく不老不死で
何千年か生きちゃいますかーって感じで、
だらだらと生きていようと思った。
魔女さんは薬を飲んだ時が
15、6歳の少女だったからか、
身長の成長も止まり
少し背が低い。
けどまあ、
肉体の歳が近いっちゃ近いから
話しやすいのはある。
魔女さんにとっても不老不死は
そこまで必要な物じゃなかったらしい。
ただの魔法バカで
調合大好きマンで
寝ないで作業してたら
体調を崩してムカついて
不老不死の薬を作ったんだとか。
けど魔女さんも
衝動的にとはいえ
えぐいものを作ってしまった自覚はあるようで、
そこまでホイホイ
人には教えないようにしていると。
私は国家転覆やテロなどは
起こすような人に見えないから
全然おっけーと言って、
小屋に着いてから30分ほどで
もう不老不死の薬を出されてしまった。
"Good Midnight!"
飲んだ後に身体に異常は特に無いけど、
これで
何千年も生きていくのかと思うと
1回くらいノーベル賞でも取りたいと思った。

7/26/2025, 5:35:22 PM

初めて特別かもって
思っちゃった。
スンってした顔。
真剣そうな目。
低い背。
ゆらゆら揺れる、
クラゲヘアーを低いところで
ひとつで括った髪。
黒猫みたいな人。
でも力強さを感じて
足を大きく広げて立っている、
可愛くてかっこいい姿。
わからない。
私にはこの感情が
この人が特別だと思ったのか、
広い世界を知らなさすぎるのか。
もしかしたら来年は
ここに居ないかもしれなくて、
そう思ったら胸が苦しくて、
またあの横顔を見たいって思って。
ずっと見ていたいって。
でも許可なく写真は撮れない。
一応犯罪を犯すつもりは無い。
1、2年前、
毎日絵を描いて
ある程度の画力を付けておいてよかった。
目の中に閉まって
頭で記憶したあの人を
真っ白な紙に描くことができた。
けどその顔は
スンっとしていた。
そりゃあそうだ。
私はスンっとした顔しか見ていない。
まあ、欲張りは言えない。
2時間、3時間と
絵に描いたその姿、顔、髪を
眺め続けた。
特別かもって思っちゃった。
でもこの特別は
多分危ない。
一方的過ぎてキモチワルイ。
あぁ、
もっと去年とかに
出会えてたらなぁ。
好きかもという気持ちは
推しという言葉に変えて
推しを描くのはこの1枚で最後にした。
"Good Midnight!"
紙が少し濡れていく。
私の頬も濡れていく。
もちろん拭わない。
涙の跡は自分と戦った印だから。
数え切れないほどの気持ちを
毎回沈めて来たのだから。

7/25/2025, 4:11:51 PM

半袖。
珍しい服装だった。
だってここじゃあ、
真夏でも10℃を下回るから。
白雲峠は深い峠だから
日陰ばかりで中々暖まらない。
1ヶ月ぶりに機織り機を使っていた時、
狐に似た人が
少し奥の方を見ているのが見えた。
視線の先には
半袖の白いシャツに
ハーフパンツ、
長い黒髪の少女がいた。
早朝だったから
ネブラスオオカミはまだ寝てて、
襲われる心配はないんだけど、
霧が少し出てたから
危ないと思ったのかな。
狐に似た人は駆け寄って
道案内をしてた。
けど狐に似た人は
すぐに困り眉になった。
白雲峠を越える人は
今までに何人かいたが、
どうやら用があるのは白雲峠のよう。
ネブラスオオカミは
起こしちゃ悪いし、
狐に似た人はテキトーに
趣味でほっつき歩いてるだけだから、
私にその少女の道案内が託された。
少し分厚めのカーディガンを貸して、
ランタンで霧をかき分けながら進むと
少女は目的地がここだと言って
私を引き止めた。
そこはひっそりとした
滝がある池で
最近の私のお昼を食べるスポットだった。
"Good Midnight!"
少女は池に飛び込んで
ガラスの花を咲かせる方法の紙を
池の底から取って戻ってきた。

7/24/2025, 4:11:51 PM

もしも過去へと行けるなら
私は沢山の歴史を見たい。
けど
お腹の中に
針を入れられたように痛くて、
お腹をへこませることも、
膨らませることも出来ずに
一点を見つめながら耐えるしかない
苦痛の和らげ方は知らない。
だって自業自得だ。
多分昔の人もそうする。
暑かったら急いで熱を冷まそうと、
冷たいものをかき込んで
一気に冷やす。
何のための汗かも知らずにね。
あー人間って大変。
恐竜とかだったら
暑い時どうしてたのかな。
"Good Midnight!"
また私は耐える。
もっといい過去見れたらな。

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