夏の匂いがする、
そんな日の朝。
1人寝っ転がり空を眺めいた。
まだ4時だってのに
日はもう照っていて
蒸し暑かった。
1人寝っ転がり空を眺めいた。
私は雲を掴もうとして
馬鹿みたいに空を切った手で
少し寂しい気持ちになった。
今日のお昼は
冷やし中華か、そうめんか、
あっ、焼きそばもいいなぁ。
そんなことを考えながら
また雲を掴もうとしてみる。
けど今度は掴めて、
ひんやりとした雲の感触が
手に伝わってきた。
アイスみたいで、砂みたいで、
すごく不思議な感じがした。
"Good Midnight!"
けどまあ、
数分も経ったら飽きてきて、
雲一つ掴めたところで
世界も私も
何も変わらないことがわかった
今日この頃。
人は嘘をつく生き物。
本当のことを言うこともあれば
嘘を言うこともある。
では嘘をついた時に
隠された真実は
一体どこへ行ってしまうのか。
大体の嘘と真実がある
嘘管理大書庫を紹介しようと思う。
人が嘘をついた時に
真実が一つ欠ける。
その欠けた真実は
どこからともなく集められ、
嘘管理大書庫という場所に送られる。
そこでは
嘘と真実が入り交じっていて
特定の嘘と真実が書かれた本を
見つけたり、
この嘘管理大書庫を
迷わず歩けるのは、
ここで働く
私のような職員しかいない。
仕事は毎日、
山のように届く本を
置く場所が決められた紙を見ながら
並べていったり、
ほこりをとったり、
要望があれば本を探して
貸し出したりすること。
のんびりしているけど
届く本の量が多すぎて
嫌になってくる。
人は愚かな生き物だ、とほほ。
でもそれ以外は
文句なしの天職だと言える。
だから続けない理由なんかない。
ただ、
たまに探偵が調査めんどいからって
ここを使うのは
職務放り出しててムカつく。
"Good Midnight!"
人は嘘をつく生き物。
でも、
嘘をついてくれるおかげで
私は今楽しい職場で働けてて。
風鈴の音が
部屋いっぱいに広がって
あ〜、夏だなぁとか
考えてる間に寝てて
夜に起きる。
何にもしなかった休日は
手放すのが少し惜しくて
なんとも言えない気持ちになる。
今日やりたかったことが
片手じゃ数えられないくらい
あったのになーって。
金魚が描かれた風鈴は
夜になっても鳴りっぱなし。
窓から生ぬるい風が
春風みたいに入ってくるからね。
涼しいとは言えない
じめっとした空気。
あー、また私は
晩御飯も食べずにアイスを食べてる。
"Good Midnight!"
まあ、自分に甘く都合よく
見ないふりをしてあげようと
目を瞑り風を感じながら
残りのアイスを食べた。
真夜中の午前2時。
いつもと変わらない日で
いつもと同じ夜だった。
外は曇っていて
星なんか見えなくて
車の走る音と、
私の流す音楽しか聞こえなかった。
ほとんどの家では灯りが消えてて
窓から見える景色だけが
今の世界だとしたら
今だけ世界に私だけな気がした。
寒いくらいの冷房の風で
私の髪は頬を撫でなびく。
誰も知らない私の世界。
この部屋だけに広がる世界。
大好きな本を読んで浸っていた。
海の浅瀬にいる気分だった。
足首が浸るだけで
息がしやすくて
私の居場所って感じがするの。
こんな世界も場所も
簡単に作れるものじゃない。
だから大事にしたい。
手放さないように
私がそっと包み込んで、
私も包み込んでもらいたい。
全身が浸って
涙で息苦しくなるのは
ほどほどでいい。
だから私は、
人生ほどほどに。っていう言葉も
この世界と場所くらい大事にしてる。
"Good Midnight!"
私の家からかなり歩いた所に
高速道路の入口がある。
休日に何回か車で通るけど
家とは、こことは違う
別の世界への未知なる道っぽくて
なんだか安らぐ。
だから落ち着かない日は、
ただ心だけ、逃避行するだけ。
夢見る少女は
いつか絶対冒険者になる!と
小さな手で弓を引き
杖で回復し
ふたつの剣を振っていた。
そして少女の夢は
成長しても変わることはなかった。
誰かが言っていた。
物語の主人公は強いって。
でも少女は非力で弱かった。
なーんてことはなく、
とても強かった。
少し大きくなった手で弓を引き、
大きな水晶が付いた杖で回復し、
二刀流で短剣を振っていた。
そう、少女は冒険者になった。
人助けをしたり、
好きな道を歩いたりして
素敵な日々と冒険生活を送っていた。
たまたま通りかかった峠で
怪物に襲われて瀕死の人を見かけた。
少女は力強く怪物の前に出て
一撃で倒してしまった。
助けてもらった人は
少女にお礼を言い、
何かお礼の品をあげたいと
色々提案をしたけど
少女は全部断って颯爽と立ち去ろうとした。
助けてもらった人は慌てて引き止め、
せめてお名前だけでも!と言った。
少女は少し考えて笑って言った。
名乗る程の者ではありません。
"Good Midnight!"
私だけの力で人を助けて
気の向くまま冒険する。
私は世界一かっこいい冒険者。
名乗る程の者ではありませんって
やっぱりクールじゃない?