るに

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6/2/2025, 2:56:58 PM

薄暗い路地に
珍しい傘が売ってると言われてる
傘屋の「雨傘」があった。
知る人ぞ知るひっそりとした店で
入り組んでる路地にあるから
迷って行けなかった人もいたようだった。
買った人にしかわからない
傘の中の秘密。
店長はなんだか梅雨のような雰囲気を
纏っているから
アオツユと呼ばれているそうだ。
漢字で書くと青梅雨かな。
誰も名前を知らないけど
不思議とアオツユっていう名前が
元々その人の名前だったみたいに
すっごい似合ってるらしい。
私は1週間暇な時間に路地を歩き回り
ついに見つけた。
意外と新しいように見える建物に
「雨傘」と書かれた看板が
目立たないところに置いてあった。
入ってみると
アオツユさんは私を見て会釈し、
すぐ目を逸らした。
人見知りのように見える。
私は店内を何周かして
おすすめの傘を聞いてみた。
すると
ステンドグラスの模様が描かれた
カラフルな傘を渡された。
あなたにピッタリの傘です、と。
その言葉がなんだか嬉しくて
早くさしてみたかった。
けど、
代金は要りません。
お気持ちだけ頂きますね。
と言われてしまった。
2500円以内なら全然払ったのに…。
店から出て早速傘をさしてみると、
傘から雨がサーッと降ってきた。
傘は本来雨で濡れないためにあるのに
この傘は内側から雨を降らせるようだ。
じめっとして最悪な雨かと思いきや、
晴れの日の天気雨のように
優しくて暖かくて柔らかい雨だった。
"Good Midnight!"
そうだった。
私は私の夏を
まだ見ぬ何かに潤してほしかったんだ。
ちょっとだけ癒してくれて
ほんの少しだけ
気持ちを楽にしてくれて。

6/1/2025, 2:31:13 PM

雨上がりの庭で
くちなしの香りの
やさしさに包まれたなら
きっと
目にうつる
全てのことは
メッセージ。
「やさしさに包まれたなら」を
いい天気のベランダで口ずさむ。
雨上がりの庭でもよかったのだけど、
今日は丁度
カラッと乾いた暑い日だった。
上手くいかないことばっかりで
私今なんでここにいるんだろうって
何度も思って、
今日私はここにいる。
何でもかんでも
全部自分で選ばなきゃいけなくて
人生の分岐点でもあるかもしれなくて
本当にそれでいいのかもわからずに
ただ直感でやっていくしかなくて。
周りに当たりそうになって我慢した。
憧れを捨てて現実的な方へ進んだ。
我慢ばっかりでつまらない。
なんて言えれば
少しはマトモというか、マシというか、
そんな人間になってたかもしれない。
正直我慢は少ししかしてない。
周りに当たったことも1回はあるし、
憧れなんか捨てきれずに
進んでみた事もある。
もちろん失敗を恐れてたし
失敗を沢山経験した。
なんなら何しても失敗してた。
それでも頑張れたのは
何何のお陰だがら!って言うほど
何かにお世話になってない。
頑張ってなかったから。
私が頑張ったって言っちゃったら、
本当に努力して結果を手に入れた人と
努力も何もせずに流されていった私が
同じになっちゃうから。
18時でもまだ15時みたいに
明るくて太陽は高い。
夜に呑まれるのは
まだまだ先かなって
空から目を逸らす。
"Good Midnight!"
こんな私でも
やさしさに包まれたなら
きっと。

5/31/2025, 4:11:53 PM

勝ち負けなんて
気にしなくていい。
私は私を信じて
やれる事をやるだけ。
手順は手に染み込んでる。
作法というのは
勝手に覚えるもの。
だから無理に思い出さなくていい。
気にしなくていい。
お腹に力を入れつつ深呼吸して
緊張をバネにする。
今日は老若男女問わず行われる
執筆テスト。
2時間で1つの物語を作る。
最初は
一斉にペンのキャップを外し右側に、
下書き用の紙とペンを左側に置く。
これらの動作は流れるように
静かに行う。
時間が決まってるから
ペンを止める訳にはいかない。
作法を行っている間も
頭の中で物語は紡ぎ続ける。
私は毎回、
奇想天外な作品を作っている。
他の人はどうか知らないけど。
人によって物語の構成も
ジャンルも結末も違う。
だからこそ面白い。
もちろん順位はつけられる。
下位に入ると執筆補習会に呼ばれてしまうので
何とか避けたい。
中位は次の執筆テストに出られる権利、
上位にも、もちろんテストの権利が与えられる。
それだけでなくハンドルネームも与えられる。
私はハンドルネームが欲しかった。
ここでは執筆テストで上位を取った者以外
ハンドルネーム、つまりニックネームで
呼ぶことが禁止されていた。
本名に文句があるわけじゃないけど
ずっと憧れで
ずっとギリギリ届かなかった。
"Good Midnight!"
いつもとはちょっと違う、
雰囲気や背景を夜にした物語を紡いだ。
静かだけど灯りが賑やかで
涼しいけど暖かく包み込まれてるみたいで
寂しいけど安心できるような。

5/30/2025, 3:44:08 PM

私的には
もう幕は降りてるはずなのに
まだ続く物語。
退場させて欲しいのに
周りは無理やり続けようとする。
傀儡人形みたいに
糸が張られて動かされる。
口を動かされて、
思ってもない言葉が出てくる。
手が動かされて、
何故か机に向かって書いている。
足が動かされて、
行きたくもない場所へ行く。
あれ、私何してたんだっけって何回も思う。
同じような傀儡人形が
何人もよく見える。
糸を切って逃げ出す人もいたけど
その先は真っ暗。
本当に家に帰れたんだろうか。
操りきれないくらい
下に体重をかけて
ぺたんっと座ってる人もいた。
けど座ると
次立つのがキツくて
私が見たのは2人、
床を突きぬけて下に落ちていった。
糸はもちろん体重を支えきれずに切れた。
私もどちらもやろうとしていた。
だからこそ
先にやってくれる人がいて
どうなるのかがわかってよかった。
要するに逃げられないってコト。
娯楽があるっていっても
満たされたり
幸せな気分になるのは一瞬だけ。
すぐ飽きる。
バリエーションが少ないのだ。
泣く暇もなく
次の日がやってくる。
"Good Midnight!"
今日も朝か昼かわからない1日を
傀儡人形みたいに
傀儡人形みたいな人と
社会を生きていく。

5/29/2025, 3:38:27 PM

夏にここへ渡ってくる鳥。
渡り鳥は夏を連れて来る。
それからずーっといって
ここに夏を満遍なく降り注がせる。
秋頃になると
また夏を連れて去っていく。
私は夏も渡り鳥も大嫌いだ。
変な声で鳴くし、
夏は暑いし。
それでも毎年やってくる。
私のように嫌いな人もいれば
夏に見れる景色が好きだとか
暑いのが好きだとかいう
物好きな人もいる。
よくわからないけどね。
実際のところ、
物好きな人には会ったことがない。
ここには夏が嫌いな人しかないない。
だから渡り鳥の鳴き声を聞くと
みんな家に閉じこもって
エアコンをつけたり
扇風機をつけたりする。
日陰ロードといって
ミストと屋根がついた道が
街中に行き渡り、
日を浴びたら死ぬゾンビのように歩いた。
夏はぐーたらする季節なんて
定着してきちゃった頃、
ぱったりと渡り鳥が来なかった年があった。
みんな焦った。
いつ夏が来るのかわからなくて
1日中エアコンをつけた。
1日中扇風機をつけた。
1日中ミストをつけた。
そして電力不足になってきた時、
ようやく渡り鳥が来た。
10月のことだった。
"Good Midnight!"
秋だというのに
寝苦しい夜が続き
私はこうして
夜更かしが日課になった。

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