あーあ。
またやっちゃった。
川で洗濯するはずが
どういう訳か滝へ来てしまった。
勘違いの多い私の人生。
やろうとしたこと、
言われたことを
頭で勝手に別のものに変換してしまう。
メモをとってもメモを無くす。
こんなんで一人で
やっていけるわけない。
もちろんその通りだった。
最初の頃は草原の川近くで
暮らしてたけど、
ネブラスオオカミが
たまたま通りかかった時に
私を哀れに思って
この白雲峠まで案内してくれて
ここでなら輝けるかもよ?
と言って去っていった。
その言葉は絶対信じないようにしてた。
結果はわかりきってた。
私が一人でやっていけないなら
大人数でも一人で足を引っ張るだけだ。
非力なので力仕事もできない。
不器用なので服を作ることも、
人見知りなので団体行動をすることも
私にはできなかった。
そんなある日、
遠くの声に耳を傾けると、
誰かが読んでいて
そっちの方向に行くと
一人のネブラスオオカミの少女が
私に話しかけてきた。
ボクさ、キミにぴったりの場所知ってるんだけど。
ついにここから追い出される時が来たか。
そんな考えは嫌でも浮かんできた。
けど少女はにこっと笑い、
白雲峠の中にあるんだよ。
顔に出てたのだろうか。
私を安心させるためにそう言ってくれた。
目を瞑れと言われたので
目をゆっくり閉じると
まぶたの裏に古い鳥居が見えた。
もう開けていいよ、そんな声が聞こえたので
目を開けると
そこにはまぶたの裏で見た鳥居と
同じものがあった。
奥には神社があって、
一つ目の描かれたお面、紙、竹傘をつけた人が
30人ほどそこにいた。
さっきの少女は
急に目の前に現れたと思うと
私に紙をつけた。
意外にも一つ目のところから目が見えて
転ばずに済んだ。
いきなりみんなが
手から杖を出して
常闇幻日。
そんな声が聞こえたかと思うと
今度はみんなどこかへ行ってしまった。
杖さえあればついていけるのかと
20分ほど頑張って手から杖を出すことに成功。
詳しくは言えないけど
足を引っ張ることなくついていけた。
"Good Midnight!"
勘違いする考えも私も捨て
そっと寄り添うように昔の匂いがしてくる。
ここに来てよかった。
ネブラスオオカミに会えて、
白雲峠に来れて、本当に。
輪廻を廻す私たちは
今日も常闇幻日と。
私はどこかの誰かなあなたに
あなたの家で勝手に寝てて欲しい。
夏が近づいてきて暑い、っていうか
寒暖差が凄くて
頭がおかしくなりそうだった。
こんな毎日はどうもやる気が起きない。
まあ普通でも起きないけど。
起きれないなら寝てればいいか。
全てがどうでもよく思えた。
完全に春眠暁を覚えず状態になり、
最初に言った通りの思考になったわけだ。
けど私は
寒めの方が好きだ。
馬鹿だとは思うけど
冷房を入れた。
そこに毛布と掛け布団。
するとなんということでしょう。
びっくりするほど快適だった。
暑いと思えば足を出せばひんやり、
寒いと思えば布団をもっと被れば
あったかくなった。
ここにアイスとおしるこを加えると
尚よし。
自分の機嫌は自分で取らなきゃ。
たとえどんなにおかしな事だと思ってもね。
さすがに気持ちよすぎて
寝落ちた。
起きると正午で太陽は真上に。
いつもと同じお昼ご飯を食べ
またベッドに戻る。
嫌な日は自分でいい日に変える。
お腹いっぱいになったからか
今度はケロケロという声で起きた。
午後3時。
鳩時計ならぬカエル時計が
そう知らせていた。
この2度寝で
小さな幸せって
寝てる間にもあるもので、
自分が気づかなくても
そこにあったものなんだって
よく分かった。
"Good Midnight!"
だから今は
春恋!夏嫌!
明日や明後日、
1ヶ月後なんかも
記憶の写真屋は未来を撮れない。
それでは未来はこちらで。
ここは未来図を作る未来図制作所。
写真屋と違って
写真じゃなくて紙に直接書く。
時刻や場所もピッタリと。
衛生や占い師は必要ない。
企業秘密のものを使って
淡々と未来図を書き、
それをファイルに止める。
一応パソコンにもデータは入ってるけど
付箋やらなんやらを貼り忘れると
大変なことになる。
なんでも、
1つのファイフにつき約1000枚。
1000個のファイルがしまってある棚が10個と
中々の量だから。
最初ある程度のファイルを探してもらうのは
パソコンだけど
そこからは自力で探して
お客さんに渡さなきゃいけない。
私はこの仕事にやりがいを感じてる。
写真屋よりかはお客さんが来ると思うけど
暇なここが、
自分の未来ですら書くことがあるここが、
たまらなく好きなんだ。
"Good Midnight!"
全ての人の未来を握ってる。
ここの紙に全部書いてる。
多分写真屋と未来図制作所が合体したら
個人情報どころではない、
その人の人生全てをカンニングできる、
カンペキな脅しもできちゃうわけだ。
紫陽花は散らない。
どの本でだったかは覚えてないけど
そんなことを読んだ。
その時花も木も散るものだと思ってた私は
驚いて思わず立ち上がってしまった。
けど今はどうでもいいこと。
ゲームが好きで
上手くなりたいと思ってて
勉強は嫌いだけど
最低限できるようになりたくて
私はどちらもできないから望むけど、
少し周りを見渡せば
すぐ近くに両方できる人がいて
世渡り上手な人もいて
努力の天才もいて
羨んだこともあった。
けど今はどうでもいいこと。
あの時ああしていたら、
そんな後悔するだけ無駄だ。
受け止めるのはいいこと。
でも受け止めすぎたら無駄になる。
私は今を見ている。
今ここにいる。
とりあえずそれだけ知っていれば
死にはしないし、なんとなく生きれる。
って、
そんなこと言ってきた人もいたなぁ。
その人は迷子列車の「夜の鳥」の運転手になった。
ポンデリングヘアが特徴で
運転手にはある人に頼まれてなったらしい。
完全に昼夜逆転して
各車両ごとにアナウンスをして話し相手になって
夜更かしを毎晩するぐらい
必要な事だったのかは
そのポンデリングヘアの人にしか
わからないだろう。
"Good Midnight!"
またいつかの真夜中
迷子列車に会いに行こう、そう思い
薄らと雲がかかった空を見上げると
紫陽花ひとひら私の手の中。
都会よりも田舎道が好きなのは
非現実で魅力的に感じるから。
田んぼが一面緑の時期は
元々見通しが良かったところに
草が加わるので
よりよい非現実な風景が見られる。
風景を引き立てる音も大事。
風鈴はもちろん、
ホラーゲームにもよく登場する
ヒグラシ。
セミだけでなく虫全般ムリだけど、
音だけならまあ。
あとはモビールとかかな。
ちょっと遊び心があるような
ごちゃっとしたのが好き。
服はあまり見かけないクラシックロリータ系で。
そうこれ。
これだよこれ。
まるで1人彷徨う不思議な少女が
偶然見つけた開けた田舎道のシチュエーション。
ヒグラシが鳴いていて
夕焼けが眩しくて
どこかで風鈴の音はするのに
見当たらない。
"Good Midnight!"
ああ、夏が待ち遠しい。
まだまだ寒い日もある
春初めの頃。