ひゅーっと通り抜ける春の風。
まだ肌寒くて
冬の感じが残っているけれど、
それでも薄着をして
風に当たりたくて。
風に吹いて欲しくて。
今日、
絵を描いたんだ。
ショウジョウトキっていう
フラミンゴみたいな赤色で、
くちばしが細長くて
羽の先が黒い鳥。
目立つ色をしてて
見つけやすいと思う。
見たことはないけど
多分風に乗るのが上手い。
風に話しかけてもらってるみたいに
高く飛ぶと思う。
トンビもびっくりするほど。
風が運ぶものは
いつだって鳥とか葉っぱとか
私に足りてないもので
見る度に
ああ、そうだった。って気付かされる。
どう思ったって変わらない未来と過去が
私を縛ってきて
ちぎれそうになるけど
風は風邪も持ってきてくれるみたいで。
熱が40度になった時は
暑すぎて倒れるかと思った。
"Good Midnight!"
だから何でもかんでも受け取らずに
花びらとか
綺麗な葉っぱとか
そういう小さな幸せが飛んできた時
受け取れたらいいなぁって。
question one。
生まれながら持つと言われる人それぞれの能力は
本当に持っているのでしょうか。
みんな同じように出来てしまうのではないでしょうか。
question two。
人は物をすり抜けられないものなのでしょうか。
出来ないと思ってしまうから
出来ないのではないでしょうか。
question three。
夢とは本当に寝ている間に
自分が作り出した世界なのでしょうか。
思い出したら辛くなる
楽しい思い出なのではないでしょうか。
大体こんなことが書かれたメモ。
古そうな紙に書かれていて
読むのも一苦労だった。
このメモは私も一部共感するところがあったので
捨てる気になれなかった。
上手くいかないこと続きで
もみじの葉を見たいような日だったので
お守り代わりにでも持っておこうかと。
手に取る本は
どれも面白そうな表紙ばかりで
内容を覚えていても
読み始めて、読み終えて、
また読み始めてしまう。
それを世界と言うんだね。
本の中にはその言葉も
似た言葉も出てこないのに
内容にぴったりな言葉。
なぜか
メモもこの本にぴったりな気がして。
"Good Midnight!"
夕焼けに手を伸ばして
メモと本を見比べる。
空を落ちて、君と出会う。
キャッチコピーにも惹かれてしまって。
嘘、嘘、嘘。
私は昔から嘘が大好きだった。
幸せな嘘だけじゃなくて
小さな嘘から大きな嘘まで。
ずっとつき続けてきたものだから、
信頼を失うだとか、
友達がいなくなるだとか言われ続けたけど、
本当の自分なんか
自分だけが知ってればそれでいいという
塞ぎ込んだ性格だったから
全く聞かなかった。
偽りのない約束をしたのは
白髪の少女に出会ったその日のこと。
バス停でバスを待っていた時、
白雲峠から来たんだ。なんて
自身の話を突然し始めた白髪の美しい少女。
おかしい人か、宗教勧誘か何かの人だろうと思い
無視することにした。
けど、
キミ、虚言癖持ち?
なんて言われたら
興味には少し足りない感情を抱くのは
不思議では無い気がして。
思わず耳を傾けてしまう。
ボクさ、キミの嘘どうかと思うんだよね。
そのうち一人で死にそーじゃん?
だからボクともう嘘つかないって
約束して欲しいと思うんだけど。
私から出てくる言葉に偽り以外の文字は無いと
十分承知だったのだろう。
ちなみに、破ったらキミのこと丸呑みしちゃうからね。
ボク、オオカミなんだ。
嘘だとすぐに思ったけど
どこか嘘では無い気がして。
それに、
本当の約束というものをしてみたかった私は
少女と約束をした。
じゃ、破ったらすぐ来るからね。
と言った少女は
本当にオオカミになり
四足歩行でどこかへ行ってしまった。
"Good Midnight!"
これが人生で初めてにして最大の約束。
どんな嘘もつけないというのは
骨が折れるほど辛かった。
でもまだ、
まだ丸呑みされるくらいの人になってないから。
少女が丸呑みできなくなるぐらい
いなくなったらすぐわかるような大物になろうと
私には似合わない目標を持って
嘘をつくために頑張ってきたから。
ひらりと舞い散る桜が恋しくなってきた時、
多分私は怒っているようにも
困っているようにも
悲しいようにも見える
複雑な顔をしながら歩いていた。
寝不足…。
今週は早起きをしなきゃならない理由があって
そのせいであまり寝られない。
寝る時間を早めることも
昼寝をすることもできずに
ただただ寝不足のままで過ごすしか無かった。
下を向いて薄らと愚痴を零しながら
ずーっと歩いていくと
お姉さん、ちょいとそこのお姉さん。
花びらついてはりますよ。
と、
なんだか心地よい声が聞こえた。
顔を上げるとそこには
狐目の可愛い女の子が私を見ていた。
桜はまだ寒くて咲いてない。
なのになんで私に花びらがついてると…?
不思議に思ったし、
もっと声を聞きたいとも思ったけど
ここは一旦無視することに。
すると、
頭の上から被ったかのように
急に花びらが落ちてきた。
あらあら、花びらに埋もれてしもうて。
お姉さんお疲れとちゃいます?
なんでそれを、と言いかけたところで
お疲れなんやったら、ええ所紹介しますで。
私の友人がやっとる所やねんけどねぇ。
と言われ手を引っ張られた。
ついた店に入ると
そこは雑貨屋さんのようなところで
個性的な内装だった。
隅っこには小さなカフェもあって
気になりジロジロ見ていると、
フクロウに似た店員さんが
ちらりとこちらを見てから
虹色のケーキ、美味しいですよ、食べやすいし、
ほかの店より安いです。と
ケーキをおすすめしてくれた。
2つ買って、
紹介してくれたお姉さんと
フクロウに似た店員さんにお礼を言い、
店員さんは
"Good Midnight!"
と言っていた。
私は会釈をして店を出た。
いつもとは違う道から
いつもとは違う足取りで帰った。
寝不足も飛んでいくぐらい。
あの店に行ってから
なるべく上を向いて歩こうと思った。
下を向いてばかりじゃ
花びらが舞ってても見えないから。
暗闇から声がした。
ねえ。
今そこから声がした?
ちょっと。
誰かしら?
なんて
後ろに向かって言ってみたけど
誰もいなかったわ。
もしかしたら
目に見えないのかもしれない。
いつもそこにいるような気はしたのよ。
だから声をかけてみたの。
ねえ。
そしたら子どものような声がした。
はぁい。
きっと恥ずかしがり屋さんなのね。
私も人見知りでそうだから、
気にしなくていいわよ。
って伝えてみたの。
そしたら美しくて可愛らしい少女が見えたの。
腕にはトランシーバー?といったかしら。
それがついていて
もう片方のトランシーバーを渡してきたの。
受け取ろうとしたら
消えてしまったんだけどね。
体調が悪いのかと思って
ご老中に聞いてみたの。
でも首をかしげて
んん?何それ?
と言われて終わりだったわ。
あの言い方はわかってる人の言い方だったけれど。
"Good Midnight!"
少女とは友達になれたらいいなぁと
思うくらいだわ。
これ以上求めてしまったら
戻れなくなりそうだからね。