死ぬまで終わらない夢に
段々飽きていました。
生きた心地がしないまま
なんとなく生きていて
ふと、
どうでもいいなーと思いまして
海に身を投げたんですよ。
そしたら走馬灯?的な
まだ死んでなくて夢を見てるような
別の意識が生まれちゃいまして。
こんなはずじゃなかったんですけどね。
どうやら寝ている訳でもなく
死んだら終わるかと思うのですが、
この通り死ねなくてですね。
まるで水が入った水槽ですね。
息はできるんですよ。
わ、あんなところに本棚がありますね。
ひぇっ。
見てください。
こんなところに英語の辞書があります。
まさかの生と死の間際でも
勉強させられるんですね。
私は勉強嫌いですよ。
しないですからね!
そんなことを言ってたら
他の本は興味を引くものばかりでした。
教えて欲しそうですね。
いいですよ。
「猫を処方します」、「儚い羊たちの祝宴」、
「雨夜の星たち」、「コハク妖菓子店」。
この4冊気になりますか?
私はこっちの方がいいと思いますけどね。
ほら、1ページ目から面白そうです。
なんて言っていたら
そろそろ死ねそうですね。
私は今までと変わらなさそうです。
下の水色のボタンを押したら
私のことなんてすぐに忘れますよ。
"Good Midnight!"
透明な涙は海に溶けて
私のように
暗く深く見えなくなります。
おやすみなさい。
もらったメモをぐしゃぐしゃにして
丸めて食べた。
私はもうそのメモを書いた人のところに
行くつもりは微塵もなかった。
その日は泥のように眠り
起きたら夕方だった。
ここから見る夕焼けは
いつも見る夕焼けと変わらない。
でも暖かくて
いつまでもここにいたいって思えた。
すぐにサッチェルバッグに荷物を詰め込み
フェリーを予約した。
私が思ったことと逆のことをすれば
大体なんとかなっていたから。
ここにいてもまたメモが届くだけ。
そう言い聞かせて
1週間後には行くことに。
お気に入りのところ、
秘密の庭園、
私の隠れ家、
思い出はたくさんある。
1週間を使って
ゆっくり、じっくりと
私のいた街を見ていた。
沖に出れば
思い出なんてカスみたいに小さくなるけど
流されることはないんだと。
カスみたいになるまでの時間稼ぎで
今振り返ってると。
馬鹿みたいに自分に言い聞かせてるもんだから
思わず笑みがこぼれる。
1週間なんてあっという間で
少しの荷物を持って
フェリーに乗った。
行く先は1つ。
海に浮かぶあの街にいる
あなたのもとへ。
"Good Midnight!"
あー、
私が生きる明日は
なんて美しく最低で綺麗なんだ!
毎日辛くて
このまま死んでやろうかと思いながら
横断歩道を渡っている時
救ってあげようか。と、
すれ違いざまに言われた。
驚き振り向くと
一つ目の描かれた
昔のお面のようなものをつけた人が
こちらを見ている。
あの、!と声をかける前に
わかった。と言われた。
振動が来て
電話かとスマホを出すと
古い鳥居が映った。
そして気がつくとその鳥居の前で倒れていた。
潜ると神社があって
そこには
さっきの人みたいなお面をつけた人、
一つ目の描かれた紙をつけた人、
一つ目の描かれた竹傘を被った人など
大体30人くらいの人がそこにいた。
さっきの人は
急に目の前に現れたと思うと
私に紙をつけた。
意外にも一つ目のところから目が見えて
転ばずに済んだ。
いきなりみんなが
手から杖を出して
常闇幻日。
そんな声が聞こえたかと思うと
今度はみんなどこかへ行ってしまった。
それからはずっと神社にいた。
薄暗いのはずっとのようで
私は杖を出す練習をした。
この人たちは謎だらけだけど
なんだか居心地がよかった。
"Good Midnight!"
現代っぽさも私も捨て
そっと寄り添うように苔の匂いがしてくる。
輪廻を廻す私たちは
今日も常闇幻日と。
ずっとずっと
友達が大事で
全部失っても
友達さえいれば何とかなる、
別に大丈夫なんて考えてた。
たまに
友達の嫌なところとかを見つけた時 は
我慢するのが礼儀とか思いながら
目を逸らしてた。
でもそんなんじゃなかった。
私の考え方は変わってた。
変だった。
おかしかった。
そう言われた時は
じゃあ友達は大事じゃないのか。
友達なんかいなくても
自分で自分を幸せにできるのか。と、
何かが吹っ切れた。
身が軽くなった私は
少しの荷物を持って
海外に向かった。
趣があるお城、
妖精がいそうなカフェ、
雪山に囲まれた自然。
全てが私の興味をそそった。
ちょっとした事で気に病む私は
私じゃないみたい。
"Good Midnight!"
死にたくなるほど
生きたかった私は
まだ見ぬ景色を求めて。
友達がマンションに住む夢を見た。
その友達は
よくお昼ご飯のおかずを
分け合う仲だったから
一戸建てのイメージが定着してて、
マンションに住んだって言われた時は
嘘だ〜!と大きな声で言ってしまった。
嘘だと思うなら今から来なよ〜。
ついでにローストビーフ分けてあげる。
聞いた瞬間お腹が鳴って、
ダッシュで地図を見ながら
マンションに向かった。
着いたら友達は
部屋が多いから迷子にならないように
紹介するね。と言い、
10個くらいのドアを開けて
1つずつ紹介していった。
丁寧すぎて内容が入ってこなかったけど、
頭の中はローストビーフでいっぱい。
じゃあ、ローストビーフ渡すね。と
友達が冷蔵庫を開けたところで
目が覚めてしまった。
うわぁん!
貰えると思ってたから
お腹はずっと空腹のまま。
早く夜になれ!早く夜になれ!
朝から連呼する。
友達には夢の内容を話し、
大笑いされた。
瞼が重くなってきた夜中。
私が泣かないように
地球が回転してると仮定して
あの夢のつづきをもう一度。
"Good Midnight!"