日帰り旅行から
帰ってくると、
強烈な睡魔が私を襲った。
まだご飯も食べてないし
お風呂も入ってないのに…。
脳裏に浮かんだのは
今日行った綺麗な景色の所。
はっとする。
もうそこは朝。
歩き疲れた重い足を動かし
とりあえずご飯を食べようと
冷蔵庫へ向かう。
しかし中には何も入っていなかった。
しまった。
家に帰ったら、
コンビニ行こうと思ってたんだった。
午前6時。
まだ寒いけど、
ちょっと明るいので、
パーカーを着て
外に出る。
鼻が冷たくて
手で包みこんだ。
カップラーメンを買って帰り、
お湯を注ぐ。
湯気が鼻を温めてくれて、
いい匂いが入ってくる。
"Good Midnight!"
朝からカップラーメンも
たまにはいいよね。
糖分不足だ、
糖分が足りないんだ。
そんなことを言いながら金平糖を食べる。
今度は塩分不足なんて言い出して
とんがりコーンを1箱食べる。
雨が好きなのは
自分みたいに泣いてるように見えるから。
欠けたクッキーが好きなのは
自分も欠けているから。
昔から
「ジャックと豆の木」の
豆を植える前に
ジャックが食べてしまったら
どうなっていたんだろうとか
意味がないことを考えるのが好きで、
才能ないのに
努力をしないのに
全て上手くいくと思って続けて、
いつか私も
飛べるかもって
ボロボロの羽根広げて
天狗に笑われながらも
頑張ってた。
でもね
間違ってたんだ。
私はずっと寝てた。
夢の中で飛べないと嘆いていた。
しかもね、
中国で寝ていたんだ。
日本にいるのにね。
「千本桜」を聞いて
思い出したんだ。
いつかの昼頃。
眠くて眠くて
眠る前に聞いたこと。
それはその時好きだった曲名に
似たものが入っていてね、
なんとなく覚えているんだ。
けど、うん。
今ではマホウの言葉。
"春眠暁を覚えず
処処啼鳥を聞く
夜来風雨の音
花落つること知る多少"
目が覚めても夜だった。
でも日本。
夜桜を見た帰りみたいな気分だ。
羽根はないし、
天狗もいない。
しかし私は変わらぬままだ。
ま、こんな夜も好きだと
一生をかけて言えるようにするんだろう。
"Good Midnight!"
あなたとわたし、似てると思うの。
だからね、
わたしの叶えたかったこと、
暇になったら
叶えちゃって欲しいの___。
.......ジーツ、...ザザッ。
皆さん、こんばんは。
本日は「夜の鳥」をご利用くださり
誠にありがとうございました。
午前4時をお知らせします。
食堂は5分後に、
本の貸出コーナーは7分後に閉めてしまいます。
次の駅を乗り過ごしてしまうと
車庫に向かってしまいますので
お気をつけください。
それでは皆さんGood Midnight!
...プツンッ。
車庫で列車の中を見回り、
食堂でうどんを食べる。
アナウンスをする前、
うとうとしていたわけでもないのに
急にあの人のことを思い出した。
軽く人に頼んでいいほど
簡単なものではなかった。
それは「夜の鳥」を
夜更かししたい人を乗せる
夜の特別な列車にするということだった。
ポンデリングヘアを崩し、
朝日を見ながら
あの人のことを
少しだけ。
わたしね、
わたしたちみたいに
夜更かししたい人を集めて
夜景とか星空を
楽しんで欲しいと思うんだ。
だって暇じゃん?
でも寝れないじゃん?
話し相手は
多ければ多いほどいいと思うんだよね。
本当に少ししか思い出せないけど、
髪が長く綺麗で
明るくて…。
でもどう頑張っても
夜眠れない人で。
結局、重度の睡眠不足で
最後の最後で
あの人は長い眠りについた。
私は元々枕を作っていて、
ほどほどに売れていた。
でも列車が
車庫にずっと置いてあることを知った。
そしてあの人の遺書には
名のない列車のことを
「夜の鳥」と書いていた。
多分、
小鳥遊みたいな感じ。
眠りを鷹と捉えて、
列車に乗る人を小鳥と捉えたのだろう。
そんなこんなで
私は勝手に解釈し、
枕は乗客用に作ることに。
車両ごとにアナウンスするのも
お客さんを暇にさせないためだった。
朝日が昇り、
窓に反射する。
また2、3年後にでも
思い出しますよ。
それまで「夜の鳥」のこと
また見ててくださいよ。
"Good Midnight!"
寒くて寒くて
布団から出れない今日。
用事があるので
絶対に出なければならない。
もぞもぞし、
毛布を被りながら
裏起毛のセーターを探す。
テレビをつけると
午後から雨が降るようで、
傘を持っていけと言っていた。
水を一口飲んで
やっと毛布と布団から出る。
靴下を履くのを忘れていて
床が氷みたいに冷たかった。
吸い込む空気はひんやりしていて
鼻が痛くなった。
まだ時間に余裕があったので
もう一度毛布を被って着替えた。
息が整い、
足が温まり、
ポカポカしてまた寝そうになったが
スヌーズを消し忘れていた
アラームに起こされた。
用事を済ませ
家に帰ろうと歩くと
雨が降ってきた。
だが、
なんだか霧雨みたいな
柔らかい雨だった。
傘なんかいらない、
このままスキップでもして帰ろうと思った。
帰ると髪はしっとりと濡れていて
ボサボサだ。
やっぱり傘をさした方が
よかったかもしれない。
寒かったので
お風呂に入るか迷ったが、
めんどくささが勝ち、
服だけ着替えた。
なんとなくスマホを開いて
漫画を読んだ。
昨日最新話を読んだばかりなので
更新はされていなかったが
それでもよかった。
頭で何かをずっと考えていないと、
寒くて寒くて。
明日の朝は
今日より寒いらしく、
もうマフラーを巻いて寝ようか迷った。
なんだか背中が冷たいと思い見ると
髪の水が染み込んでいた。
思ったより濡れていたようだった。
すぐに小さめのタオルを取り
力強く拭いた。
"Good Midnight!"
ぽろっと落ちる
雫を見ながら呟いた。
紅葉の時期、
綺麗な落ち葉を何枚か拾い
水に濡らして透かすが
太陽の光は届かなかった。
見えないものは耐えなくて
私の心さえも見えなかった。
空は青くて、
宇宙は黒い。
境界線は
さぞかし綺麗なのだろうと思い
掴もうと手を伸ばすが
もちろん届かない。
指が痺れてきた。
見ると指の奥側に
小さい傷のようなものがあった。
何年か前に
暇していた時
指を見るとあった
傷のようなもの。
それから何ヶ月かに1回できていて、
最初は何も感じなかった。
けどだんだん
指の関節が腫れたり
痺れてきたりして
ちょっと怖かった。
今も腫れや痺れは来るけど
ほっとけばなんとかなると思って
普通に生活している。
私はこういうの、
大袈裟に捉えるタイプだから
大袈裟に心配されるくらいが
いいんだけどなぁ。
どんぐりを4つ集めて
持って帰らず、
そこらへんの芝生に寝っ転がる。
寒いけど暖かい。
お湯に浸かってるみたい。
全てが溶けそうな暖かい芝生だった。
"Good Midnight!"
まだ昼だけど、
どこかの国はもう夜だし。
この言葉も妥当だと思わない?
さっき拾った落ち葉の中に
1枚だけすごく綺麗な葉っぱがあり、
持ち帰ろうと思ってたが
水道があったので
濡らすことにした。
真上にある太陽に
透かしてみせる。
私の頬には
もみじ色の光が差し込んだ。