紅葉の時期、
綺麗な落ち葉を何枚か拾い
水に濡らして透かすが
太陽の光は届かなかった。
見えないものは耐えなくて
私の心さえも見えなかった。
空は青くて、
宇宙は黒い。
境界線は
さぞかし綺麗なのだろうと思い
掴もうと手を伸ばすが
もちろん届かない。
指が痺れてきた。
見ると指の奥側に
小さい傷のようなものがあった。
何年か前に
暇していた時
指を見るとあった
傷のようなもの。
それから何ヶ月かに1回できていて、
最初は何も感じなかった。
けどだんだん
指の関節が腫れたり
痺れてきたりして
ちょっと怖かった。
今も腫れや痺れは来るけど
ほっとけばなんとかなると思って
普通に生活している。
私はこういうの、
大袈裟に捉えるタイプだから
大袈裟に心配されるくらいが
いいんだけどなぁ。
どんぐりを4つ集めて
持って帰らず、
そこらへんの芝生に寝っ転がる。
寒いけど暖かい。
お湯に浸かってるみたい。
全てが溶けそうな暖かい芝生だった。
"Good Midnight!"
まだ昼だけど、
どこかの国はもう夜だし。
この言葉も妥当だと思わない?
さっき拾った落ち葉の中に
1枚だけすごく綺麗な葉っぱがあり、
持ち帰ろうと思ってたが
水道があったので
濡らすことにした。
真上にある太陽に
透かしてみせる。
私の頬には
もみじ色の光が差し込んだ。
お祭りやパーティが終わった後、
楽しみにしていたことが終わった後など
哀愁を誘うシュチュエーションが
私は苦手だ。
甘い蜜だけ吸っていたい。
ずっと変わらないで欲しい。
私の中では
まだ終わってないものも
現実では既に終わってて
みんなそれに適応してる。
例えば
何かに夢中になっている時。
あっという間に
時間が過ぎてしまう感じと同じだ。
私だけ
過去に取り残されてる気がして、
すぐ追いつこうとするけど
離れていくばかり。
今日もまた
3連休の終わりだからか、
朝から私の時間は動いてないのに
外は真っ暗だ。
お風呂に入って、
やることをやって、
明日の準備をして、
眠らなければいけない。
ああ、
なんだかすごく寂しくて悲しい。
大好きな漫画にさえ
手を伸ばせない。
でも
それでも
今週頑張れるように、
週末は
2つの休日が待ってるから。
1ページだけめくる。
"Good Midnight!"
吹き出しに書かれた文字を
何度も読んだ。
私の3連休は
少し遠くに行ってしまっただけ。
また2週間もすれば
帰ってくる。
それまで
1歩踏み出せるかくらいのスピードで。
鏡よ鏡。
この世で1番美しいのは誰?
有名なグリム童話、
「白雪姫」。
主な登場人物は
白雪姫と王妃と猟師と
女王が変装したおばあさんと
王子だけど、
白雪姫と王妃が逆の立場だったら
どうなっていたんだろう。
王妃は鏡の存在を知らないから
自分がこの世で1番美しいと
信じたままかもしれない。
白雪姫は自分が1番美しいと鏡に言われ、
美しさを求めすぎてしまうかもしれない。
立場が逆でもどちらかが狂ってしまいそうな
この童話を
物語管理官の私が
ハッピーエンドにするためのお話。
物語に入ってみんなを幸せにする
ステキなお仕事。
バッドエンドの方がいい話もあるけど、
それは管理官の判断に任せられる。
私は小さい頃から
管理官に憧れていて
「白雪姫」の王妃を
ずっと幸せにしたかった。
美しさで進んでいく面白い話だけど
そのせいで王妃は幸せになれてない。
人を殺めようとしたから
幸せになれないのは当然なのかもしれない。
だから私は
王妃に白雪姫に愛着が湧くよう
新しい召使いと言ってそばに居た。
その時に一旦鏡を隠し、
親子愛を育てることに集中した。
そして白雪姫が7歳になった時
白雪姫を美しく育てた王妃も
またお美しいですと、
2人に鏡を贈った。
2人とも喜んで受け取ってくれた。
鏡にこの世で美しいのは誰か、
聞いてみてくださいと
私は笑顔で言った。
鏡よ鏡。
この世で美しいのは誰?
それは
白雪姫様と王妃様です。
2人とも大喜びだった。
そして白雪姫の結婚相手を選ぶ時、
元々の話に出てきた王子を
白雪姫に提案した。
しかし白雪姫は
結婚を嫌がった。
嫁ぎたくないと。
王妃と離れたくないと。
あの鏡にいつまでも2人で写っていたいと。
王妃もまた
同じことを言った。
元の話とかけ離れてしまうと
私はこの物語から出ることができない。
王子が結婚する前に
白雪姫と出会って欲しいのに。
私は焦っていた。
手が震え、
体温が低下し、
心音が耳を塞いだ。
早く、早く結婚させなきゃ。
半ば強引に婚約させた日の夜。
白雪姫は王子を殺した。
帰れなくなった私は
もう全部を壊そうと思った。
白雪姫に沢山酷いことを言った。
どうせ出れないなら、と
私はここに来た時から
ずっと付けていた仮面を外し、
鏡の前に立った。
童話だから
ここにいる人は所詮
絵だ。
しかも古いものなので
別の世界にいた私には
勝てない。
鏡よ鏡。
この世で1番美しいのは誰?
それは貴方様です。
"Good Midnight!"
鏡の中の自分は
この世界の誰よりも不気味に
笑っていた。
小春って
秋の終わりから
冬にかけての頃のことなんだって。
春じゃなくて。
なんだか知ってても、知らなくても
変わらないような事を知った今日、
7年ほど前に買った
クマのぬいぐるみに
オルゴールがついてることを初めて知った。
ぜんまいを回すと
よく聴く音楽が流れ、
なぜか懐かしいような感じがして
涙が出てきた。
泣き顔なんか私に似合わないと思い、
パワパフを見て
涙を乾かした。
そういえば、
ニュースで知ったんだっけ。
小春が春じゃないって。
ニュースの前に見た
「女子高生の無駄づかい」で
すごく笑ったっけ。
そんなことを思い出しながら、
開きたくないスケッチブックを開いて
持ちたくないシャーペンを持って
絵なんて描きたくないのに
嫌いなのに描く。
この世は我慢しなきゃ
生きていけないのだよ。
いつかの昼、
手紙を出した時
喋るカモメに言われたこと。
私はその通りだと思った。
我慢ばっかりは良くないとか
どっかで聞くけど
我慢しなくていい隙間なんて
私の所にはなかったな。
一緒にいたいのかも分からない友達と
一緒にいて、
分からない話に
無理に合わせて、
みんな絵を描くのが好きだから
私も好きなフリをして。
どこに我慢しなくていい隙間があって
どこが省ける私なのか
さっぱりわからない。
明日は絵の見せ合いっこしよう。
言われた時
思わず吐き気がしてしまった。
ちなみにその吐き気は今も生きてる。
苦しかった。
眠りにつく前に
期待をした。
きっと明日は
我慢しなくていい。
きっと大丈夫。
きっと、きっと。
"Good Midnight!"
翌朝
曇りで風も程よく
快適な気候。
ああ、
小春日和って
こういうことなんだな。
Ooh, girl, don't you stop
Don't you stop 'til you get enough honey
Oh, honey, honeypie
Honey, honey, honeypie
急に「Honeypie」が聴きたくなった夕方、
歌詞を口ずさみながら歩く河川敷は
いつもより気持ちいい風が吹いていた。
私はスマホを開き、
今日あった出来事を書いていく。
いつやっても変わらないと思って、
明日の私に押し付けるのは
1日を大事に出来てない証拠だから、
毎日忙しい方が暇するよりいいって、
最近気づいた。
だからこうメモをして
証明してる。
ここに残してる。
今日の私は確かにこう過ごしたんだって。
犬の散歩をしてる人に会釈して、
少しベンチで休憩する。
いつも河川敷を歩くけど、
やっぱり家につく前にここで休んじゃう。
ここ数日ずっと肌寒い風が
髪を弄ぶから
頭はアフロのよう。
少し顔の方向をズラすと
夕日が眩しくて目を細める。
まあでも
こういう毎日が
何気に好きな時間ではある。
目を閉じて浮かんでくるものは
毎回違うけど
なんだかんだ最後にはやっぱり
"Good Midnight!"
かな。
ふと、耳飾りを太陽に透かして
甘いものが食べたくなってくる。
甘いもの、
全てを満たしてくれるような
んーハチミツ?
三連休前はやっぱりハチミツか〜。
よし、食べに帰ろう。
ベンチから立ち上がり
再び家へと歩いていく。
そろそろ鬼リピしている「Honeypie」にも飽きてきた。
だけど、
ハチミツが足りるまでやめないで。
永遠に。