鏡よ鏡。
この世で1番美しいのは誰?
有名なグリム童話、
「白雪姫」。
主な登場人物は
白雪姫と王妃と猟師と
女王が変装したおばあさんと
王子だけど、
白雪姫と王妃が逆の立場だったら
どうなっていたんだろう。
王妃は鏡の存在を知らないから
自分がこの世で1番美しいと
信じたままかもしれない。
白雪姫は自分が1番美しいと鏡に言われ、
美しさを求めすぎてしまうかもしれない。
立場が逆でもどちらかが狂ってしまいそうな
この童話を
物語管理官の私が
ハッピーエンドにするためのお話。
物語に入ってみんなを幸せにする
ステキなお仕事。
バッドエンドの方がいい話もあるけど、
それは管理官の判断に任せられる。
私は小さい頃から
管理官に憧れていて
「白雪姫」の王妃を
ずっと幸せにしたかった。
美しさで進んでいく面白い話だけど
そのせいで王妃は幸せになれてない。
人を殺めようとしたから
幸せになれないのは当然なのかもしれない。
だから私は
王妃に白雪姫に愛着が湧くよう
新しい召使いと言ってそばに居た。
その時に一旦鏡を隠し、
親子愛を育てることに集中した。
そして白雪姫が7歳になった時
白雪姫を美しく育てた王妃も
またお美しいですと、
2人に鏡を贈った。
2人とも喜んで受け取ってくれた。
鏡にこの世で美しいのは誰か、
聞いてみてくださいと
私は笑顔で言った。
鏡よ鏡。
この世で美しいのは誰?
それは
白雪姫様と王妃様です。
2人とも大喜びだった。
そして白雪姫の結婚相手を選ぶ時、
元々の話に出てきた王子を
白雪姫に提案した。
しかし白雪姫は
結婚を嫌がった。
嫁ぎたくないと。
王妃と離れたくないと。
あの鏡にいつまでも2人で写っていたいと。
王妃もまた
同じことを言った。
元の話とかけ離れてしまうと
私はこの物語から出ることができない。
王子が結婚する前に
白雪姫と出会って欲しいのに。
私は焦っていた。
手が震え、
体温が低下し、
心音が耳を塞いだ。
早く、早く結婚させなきゃ。
半ば強引に婚約させた日の夜。
白雪姫は王子を殺した。
帰れなくなった私は
もう全部を壊そうと思った。
白雪姫に沢山酷いことを言った。
どうせ出れないなら、と
私はここに来た時から
ずっと付けていた仮面を外し、
鏡の前に立った。
童話だから
ここにいる人は所詮
絵だ。
しかも古いものなので
別の世界にいた私には
勝てない。
鏡よ鏡。
この世で1番美しいのは誰?
それは貴方様です。
"Good Midnight!"
鏡の中の自分は
この世界の誰よりも不気味に
笑っていた。
11/3/2024, 12:32:13 PM