間違えたもの、
さてどうしよう。
無かったことにするには
時間と力が必要だ。
こんな夜中に作業などしたくない。
でも私はしなきゃいけないことをためている。
後回し後回しで気づけばこんなことに。
午前2時54分。
すごく眠くなってきて、
早く寝たかったけど
しなきゃいけないことをしようか、しまいか。
するんだったら何からしようか。なんて
ずっと考えているからだ。
そうこうしてるうちに
うとうと…。
目が潰れるまでゲームしていたいって思うし、
声が枯れるまで叫びたいって思うし、
永遠に眠るように寝たいし。
いろんな感情が混ざりすぎたコレを
人は混乱や、焦りととらえるらしい。
はてさてねむいぞ。
うとうとしながら部屋を眺める。
"Good Midnight!"
牡羊座、牡牛座、双子座、蟹座、獅子座、乙女座、
天秤座、蠍座、射手座、山羊座、水瓶座、魚座。
星座は12個あるけど、
良いも悪いも存在しない。
それぞれ大体の性格があって、
大体当てはまるかな〜くらいの軽いもの。
でも私、
そんなあまり意味の無い星座でも
自分の星座がすごく好きなの。
水瓶座。
形も可愛いし、
名前もしっくりくる。
神様がどーたらこーたらの話は
よくわからないけど、
とにかく好き。
ある日、
イヤホンをどこかで落としたみたいで
カバンの中をいくらひっくり返しても
見つからなかったの。
私、人の声が苦手で
しんどい時はいつもイヤホンで音楽を聴いてるの。
家に帰って泣き叫んだ。
安かったからまた買ったらいいんだろうけど、
違うんだよ。
買いたくないの。
無くさないように気をつけてたのに
無くしたことがショックだった。
先月買ったばかりだった。
その時、
水瓶座の形をした指輪をしてたんだけど、
それを見たらもっと泣きたくなった。
始まりはいつも終わりみたいなものだなぁって。
明日がしんどいなぁって。
気持ちを落ち着かせるために
ベランダに出た。
今日はいい夜の匂い。
"Good Midnight!"
曇っていて
星は見えないけど
この世に星座は
確かに存在していて
水瓶座も
この空にある。
推し活。
それこそが私の生きがいであり、
存在価値なのです。
私は2次元にしか推しを作りません。
スマホでもなんでも
オリジナルグッズが作りやすいからです。
推しは多ければ多いほど
私を満たして幸せにしてくれると思ってます。
推しカラーは常に身につけるし、
推しが嫌いなものは私も嫌いです。
私の中心は推しなんです。
推しのために毎日生きているのです。
こんな私の考え方は
家族に否定されていると思っていました。
お金使いが荒く心配していてくれた両親。
好きなことにお金を使うなと言われたと思った私。
私の勝手な解釈で
すれ違いを起こしてしまったんです。
その事を知ったのは
両親が亡くなった数日後でした。
家が遠くて
お葬式に出られなくてごめんなさい。
車運転出来ないし、
電車も無くて、
徒歩で行こうとも考えたのですが、
姉に止められてしまいました。
涙が溢れました。
自分の推し活のせいで、
両親を何度も傷つけてしまったと思いました。
初めてこの泣いているところを
部屋に飾ってる推しに見られたくないと、
同じ空間に居たくないと思いました。
一度全てのグッズを押し入れに入れて
戸を閉めた時、
本当に私は何にも大切に出来ないんだと
また涙が溢れました。
この涙を拭ってくれるのは
もう姉しかいません。
立ち直るまで多くの時間がかかりました。
夜になると
夢の中で両親が私の喉を潰しに来ます。
怖くて怖くて
毎晩姉に泣きつきました。
そんな時姉が読み聞かせてくれた漫画。
その一言目に私は惹かれました。
なので姉はその一言を
いつも最後に言ってくれます。
"Good Midnight!"
と。
魔法のような言葉です。
この言葉を聞くと
両親が微笑みながら
話しかけてくれる夢をみれるのです。
私は当分推し活ができないでしょう。
推しは悪くないのですが
今はお金すら見たくありませんね。
なので姉が頼りなのです。
姉が居なくなったら
私…私……。
頭がおかしくなっちゃいそうです。
アトラス彗星。
今を逃すと8万年ほど後まで
見られないといわれている彗星。
秋晴れの今日なら見られると空を見上げた私は
急に天気雨が降ってきたことに気づいた。
狐の嫁入り。
こんな彗星が見れる日没に嫁入りとか
ロマンチックでいいなぁと呑気に思っていると、
段々雲が出てきた。
もちろん彗星は見えなかった。
嫁入りも中止だろうか。
スーパームーンも見れなかったんだ。
今日くらい見せてくれよぅ。と
空に向かって叫んだ。
午前1時24分。
ぼーっとしていたら
いつの間にかこんな時間になっていた。
眠いけど寝たくない。
明日が来て欲しいけど夜更かししていたい。
曖昧な感じだった。
足も腕もクタクタだ。
4時間昼寝をしたってのに、
疲れが取れないのは何故だろう。
買った時は毎晩読んでいたのに
忙しくて触れてすらいなかった漫画に
手を伸ばす。
"Good Midnight!"
はい、この言葉大好きでございます。
心の中で何故か敬語で喋っていた。
今日は本当に疲れたな。
彗星はもう見えないかな。
でも、いっか。
また8万年後に見れば。
用事で出かけた帰り道、
一輪だけ
彼岸花が咲いてた。
真っ赤なやつ。
でも次通った時にはもう無くて
ちょっと寂しくなった。
咲くのをずっと見守ってたとか、
彼岸花がすごく好きとか、
そういう訳じゃないけど
なんとなく。
2Lの水を半分飲みほし
たけのこの里を5袋開ける。
鳩時計が午前3時を知らせてくれる。
することも無かったので
久しぶりに夜外出した。
私は耳が聞こえないので
外に出ても景色以外変わらない。
人の声など気にならない。
手話は苦手だ。
全然覚えられない。
まあ、口の動きでなんとなくは分かるので
コミュニケーションは取れてきた方だが。
街灯が照らす道を
ずーっと歩いた先に
痩せ細った女の子がいた。
まもなく死にそうな彼女は
口を動かしていた。
かみさま、と。
どうやら家族がいないようで
人生終了という目をしていた。
神になるつもりは無いが、
こんな所で死なせたくないと思ったので、
家に運び
食事を与え
手当をしてやった。
今更捨てるのも
自分に悪いような気がして、
家に置いてやっていた。
少し経つとすぐ懐いた。
筆談でおすすめの漫画を教えてやったり、
手話を習いたいと言ったので
通わせたりした。
ある日
急にふらっときて、
あ、これ目瞑ったら終わりなやつだ。と感じた。
必死に目を開けようとするが、
努力は虚しく。
白目をむいて終わりだった。
あれからどれほど寝ていたのだろうか。
目を覚ますと夜で、
病院で、
ベッドの上で、
たくさんの管に繋がれて横たわっていた。
少し横を見ると
あの女の子がいた。
そろそろ死ぬのだろうか。
あ、こういう別れ方をしてみようかな。
声が出ているか
出ていないかはわからないが
口を動かした。
"Good Midnight!"
洒落た一言。
でも大好きな一言。
すまないことをしたなぁ。
中途半端に育てて
私、何も出来てなかった。
何もあげられなかった。
ああでも、
哲学みたいなことは
手話で教えてみたりしたっけな。
どんな気持ちも
記憶に残さなければならない物なんだって。
人生はここで終わんないって。
あー。
あの彼岸花の赤色。
忘れたくても忘れられない。
最後は哲学みたいなことを教えたって話で
終わりたかったのになぁ。