用事で出かけた帰り道、
一輪だけ
彼岸花が咲いてた。
真っ赤なやつ。
でも次通った時にはもう無くて
ちょっと寂しくなった。
咲くのをずっと見守ってたとか、
彼岸花がすごく好きとか、
そういう訳じゃないけど
なんとなく。
2Lの水を半分飲みほし
たけのこの里を5袋開ける。
鳩時計が午前3時を知らせてくれる。
することも無かったので
久しぶりに夜外出した。
私は耳が聞こえないので
外に出ても景色以外変わらない。
人の声など気にならない。
手話は苦手だ。
全然覚えられない。
まあ、口の動きでなんとなくは分かるので
コミュニケーションは取れてきた方だが。
街灯が照らす道を
ずーっと歩いた先に
痩せ細った女の子がいた。
まもなく死にそうな彼女は
口を動かしていた。
かみさま、と。
どうやら家族がいないようで
人生終了という目をしていた。
神になるつもりは無いが、
こんな所で死なせたくないと思ったので、
家に運び
食事を与え
手当をしてやった。
今更捨てるのも
自分に悪いような気がして、
家に置いてやっていた。
少し経つとすぐ懐いた。
筆談でおすすめの漫画を教えてやったり、
手話を習いたいと言ったので
通わせたりした。
ある日
急にふらっときて、
あ、これ目瞑ったら終わりなやつだ。と感じた。
必死に目を開けようとするが、
努力は虚しく。
白目をむいて終わりだった。
あれからどれほど寝ていたのだろうか。
目を覚ますと夜で、
病院で、
ベッドの上で、
たくさんの管に繋がれて横たわっていた。
少し横を見ると
あの女の子がいた。
そろそろ死ぬのだろうか。
あ、こういう別れ方をしてみようかな。
声が出ているか
出ていないかはわからないが
口を動かした。
"Good Midnight!"
洒落た一言。
でも大好きな一言。
すまないことをしたなぁ。
中途半端に育てて
私、何も出来てなかった。
何もあげられなかった。
ああでも、
哲学みたいなことは
手話で教えてみたりしたっけな。
どんな気持ちも
記憶に残さなければならない物なんだって。
人生はここで終わんないって。
あー。
あの彼岸花の赤色。
忘れたくても忘れられない。
最後は哲学みたいなことを教えたって話で
終わりたかったのになぁ。
10/17/2024, 1:21:57 PM