ドライアイス触るなら死んだ方がマシ
って言ったら
ドライアイスで死んだんだよね〜。
ここはイマからかけ離れた天界。
子供のようにきゃっきゃっと話しているあの子は、
信号無視のトラックに轢かれて
投げ飛ばされた先で
トラックから落ちてきたドライアイスが
全身に降ってきて死んだ子。
ここでも時々、
全身が焼けるように痛いと
叫んでいる姿を見た。
この人は溺死、あそこにいる人は転落死。
なにで死んだか、
自分で話す人が多い。
つまりここにいる人は
ほぼジコ死の人。
ここで、
イマはこんなに物騒なのかと思うかもしれない。
事故ではなく自己。
事故死ではなく自己死。
あの子は信号無視のトラックに轢かれたと
言っているが
信号無視をしていたのはあの子の方。
ドライアイスも自分で買ったものだった。
この人は年を取りたくなくて
綺麗なまま消えたくて
自分の家の浴槽で…。
あそこにいる人はいい人だよ。
病気にかかったと嘘をつく親友に
お金を借してあげてた。
月80万くらいだったかな?
でもブラック企業でね、
本当は借せるお金なんか無かったの。
借金してまで渡してた。
最期は親友に借金の限界が来たから
そろそろ返して欲しいって言ったら
崖から突き落とされて…。
本当のことを知らずに逝っちゃって、
天界で知ったんだよ。
ま、可哀想だったから
私が教えたんだけどね。
管理者は別に、
こーゆーのんびりした感じでいいのよ。
キマリなんて
片手で数えれるぐらいしか無いしね。
にしてもイマって怖いよね。
暴言飛び交ってて、
その中に放り出される子たち
ほんと可哀想だと思うよ。
いつからこうなっちゃったんだろう。
でもイマを生きる
あの人も、その人も、
そのうちこっち側に来るし、
なんなら毎日誰か来てるし。
結局イマって
夜中みたいなもんで、
天界って
昼間みたいなもんなんだよ。
イマを生きるのは孤独。
暖かさを感じる時もあるにはあるけど、
すごく貴重で少ない時間。
ま、私はイマを生きることをおすすめするけどね。
人いるし、
賑やかだけど、
暖かすぎる。
孤独な時間が足りない。
"Good Midnight!"
イマは両方楽しめるから。
ちゃんと孤独も味わってよね。
海色の切手が無きゃダメだよ。
私はある人に手紙を出そうとしていた。
問題は、名前も思い出せないし、
住所も、生きてるか死んでるかすら
わからないこと。
そんな時
噂を思い出した。
「放課後ポスト」。
学校から開放された放課後のように
自由なポスト。
なんでも、
そのポストは
住所や宛名が書いていなくても
ポストの上にとまっているカモメが
必ず届けてくれるらしい。
でもまさか
そのカモメが喋るとか、
普通の切手じゃダメなのとか、
そんなことは予想つかないよね。
ねー、ボクもう今日の分運んじゃうけど。
カモメに急かされる。
ごめんなさい。切手、それ以外持ってないんです。
海色の切手、本当に持ってないの?
カモメはポケットをまじまじ見る。
よく分からないが、
ポケットをまさぐると、
藍色のような、水色のような、
綺麗な切手が1枚出てきた。
手書きのような字で
"Good Midnight!"
と真ん中に書かれていた。
ほら、あるじゃん。さっさとこの切手の上に貼って。
は、はい。
切手を貼ると、
さっきまで空白だった
住所と宛名の所に文字が現れた。
なるほど、この切手のおかげで
カモメが運べるんだ。
ね、キミさ、あとでそこの雑貨屋行きなよ。
と言うと、
カモメは数枚の手紙を持ち、
すぐに飛び立ってしまった。
言われた通りに雑貨屋へ行くと
フクロウに似たあの人が
店員さんだった。
お久しぶりです。
その声は
驚きすぎて
すぐお店のドアを閉めた
私の耳には届かなかった。
19時に起きて、
20時に外出、
21時にカフェ、
23時にご飯を食べて、
26時には帰宅。
あっ、忘れてた!
メモ用紙に今日の予定を書いていた私は
カーテンを開けるのを忘れていた。
カーテンを開けると、
さっきまで書いていた予定は
ぐちゃぐちゃに見えた。
午前4時にカーテンを閉めたままなのは
薄暗く視界が悪い。
そのせいで変な位置に書いてしまった。
まず、何時に起きるんだっけ。
8時だっけ。
9時だっけ。
ていうか今起きてるんだったら
もうなんでもいいか。
ん?
今から寝るんだっけ?
そういえば今日何するんだっけ。
朝ごはんいつ食べるか書いたっけ。
朝ごはんはカフェで食べるんだったっけ。
カーテンを開けて部屋を明るくすると
いつも焦ってしまう。
心臓がバクバクして、
指が震えて、
思考がパンクしてしまう。
冷や汗が止まらない。
今日もダメだった。と、
カーテンを閉めて
部屋を薄暗くする。
この症状は子どもの頃から治らない。
明るいと、パニックになる。
だから私の活動時間は
19時から午前4時頃までだ。
夜中に何をするのかというと
特に何もしないのだ。
あっ、でも散歩はするかも。
自分のテンションを上げるために買った服を着て
人が居なさそうな所かつ
街灯がある所を歩く。
街灯や電気は
何故か大丈夫なんだよなぁと
自分でも不思議に思っている。
夏は蒸し暑いから
散歩はしないけれど、
この間行った漫喫で
蛍の本を読んだ。
虫は嫌いだけど
蛍は近くで見なければ
暗いし大丈夫かなと思った。
近くの団地まで歩いている間、
そういえば今日カフェ行くんだったなーとか
今から寝ようとしてたんだったとか
整理出来てきて、
色々思い出していった。
多分朝日が昇るまでに帰れないからと
日光遮断率100%の日傘をさしていった。
段々明るくなっていく空のせいで
あんまり見えなかった蛍は
眩し過ぎるくらい光っていて、
悲しくなった。
帰り道、
私の大好きな漫画の一言を呟いた。
"Good Midnight!"
もう朝だけど。
今日もまた、
カーテンを開ける。
まだ私はいっぱいいっぱいだけど
きっともう大丈夫。
そう心の中で言いながら
レースのカーテンを眺めた。
黒猫はいつも
のらりくらり路地裏を歩いていた。
人間に散歩してもらってる犬らは
いつも吠えてくるから
人間がこない路地裏を歩く。
たまに河川を歩いたりするけど、
水が嫌いだから
ほんとにたまにしか行かない。
でもずっと同じ街はつまらない。
いつしか黒猫は
旅に出るようになった。
留まらずに歩き続け
疲れたら休憩。
人間が沢山居そうなところは避けて
また歩く。
少しした頃、
道端に喉が渇いて動けないという
大人しそうな野良犬を見つけた。
ついさっき水を飲んできた黒猫は
川まで案内した。
物知りな猫さん、ありがとう。
お礼に猫さんのお願いを聞いてあげるよ。
と、野良犬はいった。
ちょうど1匹で歩くのは
寂しいと思っていた黒猫は、
一緒に来てくれるように
頼もうとしたが、
野良犬はこの街を
離れたくなさそうだったので、
あと3日ほど滞在するので
この川で会って欲しいと頼んだ。
もちろん!としっぽを振りながら野良犬はいった。
1日目、
黒猫と野良犬は
近くの花畑へ行き
池の周りをぐるっと1周歩いた。
2日目、
黒猫と野良犬は
レストランへ行き
人間からおすそ分けをもらった。
もっと一緒にいたいと黒猫が思った3日目、
いつも通り川で待っていたが、
野良犬が来る気配はなかった。
心配になり
いつも野良犬が来る方向の道へ行ってみる。
そこには
カラスにしっぽを噛みちぎられ
虫の息の野良犬がいた。
ごめん…見送れ……そう…にないや……。
と野良犬が言った。
その言葉を最後に
野良犬の呼吸の音は聞こえなくなった。
黒猫は
"Good Midnight!"
と野良犬にいい、
野良犬を食べ始めた。
骨まで食べ尽くした後に
黒猫は1粒の涙を流した。
その涙の理由ははたして
悲しみからなのか、
それとも
一緒に旅に行ける
嬉しさからなのか。
お腹が痛い。
これは多分ストレスのせいだと思う。
いや、
違うな。
ストレスのせいにしたい。
何かのせいにして
楽になりたい。
ドタキャンされても、
嫌なことを言われても、
私は「もういいよ」って言う。
相手は許されたと思って
次の日からいつも通り接してくる。
でも私は許したんじゃなくて
諦めただけ。
このことは相手には言わない。
言わなくてもいいことを
言わない努力をしてるの。
まあいつか
その時が来たら本当のこと話すかも。
相手は本当のこと知ってるかもね。
それでも自分の口から言うことに意味がある。
色水は綺麗だよ。
でもずっと混ぜてなきゃ、
そのうち色が下に落ちていく。
飛沫は透明なままで
綺麗だけどね。
私の色水も
飛沫をあげたら綺麗かな。
もしかしたらその色水は
墨を洗った水で
飛沫さえもドス黒いかもね。
こんなこと心の中で呟いてる今日も
きっとまたお腹が痛くなる明日も
私はずっとこのまま。
心がお喋りなまま、
私のココロオドル一日は
"Good Midnight!"
で始まる。
夜から始まる。