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5/22/2024, 2:31:36 PM

また明日

ここまで生きてくると

「また明日」と言いながら
会わなくなった人の多さに驚く。

これが永遠の別れと思いながら
別れることなんてあるのだろうか?
とさえ思う。

「またね…」
手を振り
何時ものように
別れて会わなくなった友
友達はレストランの皿洗いのように
変って行く

「またね…」
あなたは、大きく手をあげた
何故だか私は
もう一度振り返った
今もあの時の父の姿を
覚えている

どうして
こんなに
別れは辛いのだろうね

だから
「またね、また明日」
そんな可愛らしい
言葉を呟くのかな

ランドセルを
背負った帰り道
別れ道で
友達に手を振るみたいに

「また、明日…」

それが、もう会わない
最後の日であったことは
ずっと後で知ることになっても

「また、明日…」

一期一会

2024年5月22日

心幸



5/21/2024, 4:28:23 PM

透明

僕は透明だった
全てが僕を通り抜け
誰も僕に気づかなかった

あの日大陸の
広い広いサトウキビ畑で
鉄砲を担いで
殺して殺され
広い広いサトウキビ畑で
鉄砲を担いで
突っ伏した

…それから、ずっと
僕は透明で
全てが僕を通り抜け
誰も僕に気づかなくなった

通り抜ける風に乗り
僕は懐かしい故郷に帰った
お母さんは待っていた
お父さんも待っていた
君も待っていた

けれど

透明な僕に
誰も気づかなかった

みんな泣いていた

僕なら、ここに居るよ
そう言っても
そう叫んでも
僕の声は届かなかった

僕は透明で
そこにいた
ずっとそこにいた

君のそばに

ずっとそうしていた
ずっとそうしていたかったから
そうした

やがて、何十年の月日が流れた

君は母親になり
君はお婆さんになった


そして君は居なくなった…


けれど、透明なそこにいる僕は
居なくなることが出来なかった
どうして?
僕は悲しくて悲しくて泣いた
夜中泣いた
風がそっと教えてくれた

僕は人殺しにされたから
君と
同じところには
行けない

透明のまま
歳ならあの日のまま
鉄砲を担いで
そこに居なければならない

僕はそのことを知った時
僕にそうさせたものを憎んだ
けれど、咄嗟にやめた
何故なら、それは僕が信じた
その時の
精一杯だったから

僕は静かに目を閉じて
顔を天に向けて

そして君の名を
呼んだ

その時声が聞こえた
星のように煌めき揺れながら
その声は
僕を抱いた

僕は後悔なんてしていないよ
あれがあの時の
僕の紛れもない精一杯
だったから

僕は愛するあなたを
守れたかい?

同じところには
行けなくても
透明のまま
ここにいるよ

君の子供たちも
やがては孫たちも
いることだし

僕は透明のまま
愛するものたちを
見守るよ
いいだろ?

それからまた
幾年流れ
ある夜

流れ星が流れた
その先に光は落ちて
君が居た

どうして?と尋ねる僕に
私は居なくなったんじゃない
あなたとまたこうして会うために
あなたの様に精一杯命を使ったの

だから、これからは
あなたとここにいる
透明な私たち

何時までも一緒に

あなたの居る場所が私の極楽浄土

2024年5月21日

心幸



5/20/2024, 1:00:08 PM

理想のあなた

わたしのあなたは
いつも、最後に笑ってる

大人しくて
私が私が私ってよくデキるでしょ
なんて、しゃしゃり出るあざとさの微塵もない
大きな声も張り上げない
決して人の前は歩かない
煩ささのないあなた

あなたの前では
時間が穏やかに流れていましたね

人を責める前に
庇っちゃう人で
与えちゃう人で
あげちゃう人で

気づけば
損ばかりしていた
損ばかりしているのに

最後に笑ってる

私はあなたには
叶わない

理想のあなたは

私の母でした


2024年5月20日

心幸




5/19/2024, 12:20:20 PM

突然の別れ

悲しみを満たした初冬の朝の光が差し込む部屋に突然鳴り響くベルの音。

なんのことか解らずに、悲しみから目覚めない私はまるで夢の中に居るようだった。

若い看護師が慌てて入って来た霊安室。

誰が押したか知らないが非常ベルが鳴っていた
霊安室の・・・。

あれは、父の無念の死の叫びだったのだろうか?私は少し霊感が強い方だが、そんな私が経験した霊体験のような父との突然の別れの朝だった。

いい人生だったのか
はた迷惑な人生だったのか

したたかに酒を飲み
酔った挙句に
帰れなくなってしまった
ヘタレ親父

情けないやら
悲しいやら

呆気にとられて
別れの言葉も涙も
出なくて
悪い夢でも見せられているように
呆然と立ち尽くしていた私を

目覚めさせるかのような
ベルの音
お父さん、そこにいるの?
何、悪戯してるの?
早く、戻ってよ!

私は、心の中で叫んだが
言葉が声に出なかった

やっぱり、これって現実?
お父さん返事してよ!

父は笑っていた
最後に笑顔を残して逝った

え、寝てるんじゃないの?
飲み過ぎたって、頭かきながら
起きるんじゃないの?

なにこれ、悪い冗談やめてよ…

悪夢を掻き消すベルの音
でも、目覚めても悪夢は続いていた
それは、現実だったから

それが、父との
突然の別れだった

あの日から
私は、いってらっしゃいは
目を見て言うようになった

絶対に別れる相手が背を向けて
歩き出すまで見送るようになった

最後に高く笑顔で手を振った
父を忘れないために


2024年5月19日

心幸








5/18/2024, 1:24:20 PM

恋物語

ハート型の葉っぱのライラックの花言葉は初恋の香り。

彼女はライラックの花を知らなかった。
花びらが5枚のライラックをラッキーライラックと呼び見つけると幸せを呼ぶという伝説を信じてライラックを探す青年が白いライラックの咲くテニスコートで彼女を見つけるという物語を聴いて憧れていただけであった。

何故なら彼女は白という色を知ることが出来なかったし、ライラックという花を見つけることも出来なかったからだ。

彼女の目は光を色を知らなくて、心臓にも重い病があったから、七つの初夏からほとんど病院で暮らしていた。

そんな彼女を毎日見舞ってくれる彼がいた。

毎日彼女の病室を訪れては彼女の母が窓際に飾る花の色を彼女に教えたり、病室の窓から見える空の青さを教えたり春には桜が咲いたよもうすぐ紫陽花が咲くよ薔薇が咲いたよ向日葵が咲いたよ楓が紅く染まったよ木蓮が花をつけたよと教えてくれた。

彼も心臓に病があり二人は互いに励まし合いながら生きていた。

そんな彼が彼女にラッキーライラックの話を教えてくれた…。

何時か君をライラックの咲く場所へ連れて行って、僕がラッキーライラックを見つけて君に贈るよ二人はそんな約束をした。

二人は、心臓の手術を受ける日を待っていた。彼女が少し早く手術を受けた。彼女は無事に心臓の大きな手術を終えて、その病室で彼を待っていた。

彼は訪れて、何時ものように明るく爽やかな声で彼女に語りかけた。

「僕も手術が決まったよ」
「良かったわ、早くよくなってラッキーライラック見つけに行こうね」
「そうだね、そうしよう」彼の表情が少し曇っていたことに彼女は気づけない。
彼は、極めて明るく彼女に言った。

「ひとつ、言わなきゃならない事があるんだ」
「なに?」
「僕は、別の病院で心臓の手術を受けることになって、暫くここに来れないんだ」
「えっ、何時転院するの」
「明日」
「随分急ね…」
「うん、君の手術が終わってから言おうと思っていて」
「暫く会えないけど、約束するよ僕はまた戻って来るから…分かった?」
「…う、うん分かった」
彼女は暫く考えてからそう答えた。
光を知らない彼女の目からはキラキラと光る涙が溢れていた。
彼はその涙に口づけた。


それから暫くして、彼の手術まで連絡を取り合っていた連絡が途絶え彼女は心配でいたたまれなくなっていた。

そんな、彼女の元にある知らせが届いた
「角膜移植のドナーが見つかりました」
彼女は不安になりながらどうして急にそんなこと?戸惑う彼女に両親は、
「これで、目が見えるようになれば、彼とライラックが見に行けるぞ」
「お願い、そうして」と促され彼女は戸惑いながらも手術を受けた。


手術は無事に成功した。
彼女の目に光は宿ったが、心は光を失った。
何故なら、彼女の目には彼の姿は映ることがないと知ったから。

彼女は悲しみの底に居た。
深い深い漆黒の彼を知る前から知っていた漆黒の世界よりもまだ深い漆黒の世界に彼女はいた。

そこで、あの懐かしい声を聞いた。

「よく聞いて、僕の声が君には聞こえるだろ、僕ならここにいる、君の目の中だ心の中だ、僕の手術が難しいものだと知った時から僕は君の中で生きると決めていた、だからお願い悲しまないで、僕と生きて欲しい」はじめて見る彼の顔は優しいかった。「これが、笑顔というものか…」彼は最後に笑った。

微笑みこう言った。

「僕をライラックの咲く場所に連れて行っておくれ、二人でラッキーライラックを見つけよう」


白いライラックの咲くテニス場でラッキーライラックを探す彼女の目の奥に彼はいた。

小さな恋物語


2024年5月18日

心幸




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