渚雅

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7/26/2025, 3:39:32 PM

過去は常に現在に上書きされて、いつの日か風化して色褪せては忘れられてゆく。

時折は思い出すこともあるけれど、当時の感情も情景もすべてが思い出として補正されて 消化され消耗されて、そのままの形として残ることはありえない。

辛かった日々すら青春とか良き思い出とか今に繋がる必要だった苦労だとか、そんなお綺麗な言葉で飾り立てられてまるで宝物のように鑑賞される。現在の娯楽へと成り果てる。それが他人であればなおのこと。体のいい嗜好品へ早変わりだ。



(前を向け。俯くな。視界は広く 空を見上げて)

足元を見てはいけない。蒼穹の下で己の周りだけに謎の雫が落ちてくるから。水は蒸発したとしても その痕跡を残してしまうから。だから、上を向け。

ただ、青く果てしなく広い空を。流れる雲を。眩い光と、今にも消えそうな白い月を。その壮大さを、自由さを、輝きを、健気さと気高さを。目に焼きつける。


(美しくあれ。誇り高く清らかに)

己という商品を簡単に浪費させるな。そう言い聞かせて表情を作る。普段通り、いやそれ以上に、魅力的な自分を。

弱さは寄り添える相手にしか見せてはいけない。友情というインスタントなビジネスライクには絶対に。弱い自分自身は心の奥底で揺籃で揺蕩っていればいい。例えその場所が涙の海を作ろうとも、表に出しては生き抜けない。それが、ある種の閉鎖空間的な学びの園のルール。



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テーマ:【涙の跡】

7/21/2025, 11:27:24 PM

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幼き頃追いかけたあの星は今やもう

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テーマ:星を追いかけて

7/20/2025, 4:49:38 AM

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テーマ:飛べ

7/18/2025, 9:38:26 AM

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まるで小さな聖域のようだと、そんな感想を漏らせば、まるで厨二病だときっと笑われるのだろうけれど。

広い敷地内の中いくつか点在するその樹木が嫌いじゃなかった。猛暑の日照りの中、木漏れ日の下、柔らかな風が肌を撫でては微かな緑の香を鼻孔へと届けてくる。深く息を吸い込めば



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テーマ;揺れる木陰

7/15/2025, 10:38:14 PM


それはいつの日か定めた、ママゴトのようなたわいない秘め事。

今になって考えてみれば、なにも特別なことなどではないセピア色の1ページ。けれど、幼き日の無邪気な心にとっては、何事にも変え難い眩いばかりの宝石のような煌めきに見えていた。


幼心の無邪気さと無知とまだ見ぬ未来への羨望、誰にも理解されない理解されたくないという未熟で青い反抗心。秘密というほんの少しの背徳感に、互いへの執着にも似た独占欲をスパイスに溶かして煮詰め交えた、ちょうど大人が立ち入れない小さな閉ざされた世界を築き上げる程度の、ありきたりで使い古されたストーリー。

されど それは痛い程に透明で、誰にとって無意味だとしても本人たちにとっては神聖でかけがえのない秘密。誰の目にも触れさせない、いっそ信仰にすら等しい無償の、ただし存分に歪んだ献身。


『だいすき。誰より何より大切よ』

──愛してる。そんな言葉は知らなかった。

そしてそれは正しく、愛ではなかったのだろう。ただ、どうしても手放すことができなかっただけだ。手離したくなかったから、まだか細い指先を絡み合わせて肌を寄せあって。何者にも妨げられぬよう境界線をあやふやに、互いが互いの唯一で在り続けんとした。

それは、いつかしか色褪せた過去。
まだ幼い日の、ふたりだけの秘め事。




「──愛してる」

妖艶な笑みを纏わせ誰にそう嘯いてみせたとしても、あまりに初々しい、まだ何者も知らず無垢だったあの頃の混じり気ない"好き"には決して敵わない。

使い古された告白にイロと欲望はあれど、焦がれるような想いは欠片も込められない。大量生産のチープなチョコレートみたいな、陳腐で心にもない薄っぺらい睦言を振り撒いて。ありふれた熱を求める。


「寂しいの」

喪失の恐怖は身を蝕み心の臓までもを凍てつかせてしまう。それでも尚、この両手から取りこぼされるものがあるなんて耐えられないのだ。あまりに尊すぎて眩しすぎて容易に触れるなんてできない、この美しい魂をいつか失う日が来るだなんて、どうあっても。誰よりなによりもと、そう希うのはただ1人だけ。

それならばと、可愛らしく微笑ましい夢は夢のまま この世のものとは思えないほど美しく、どこまでも慈愛に満ちていて。呪いのような言霊をそっと飲み込んで。


「あたためて」

主語のない感情をイミテーションで彩って。無垢なふりをして、甘やかに愚かしく。

嘘も誠も光も闇も全て抱え込んで、この薄い腹の内は底など知ることない通りすがりの誰かさんに曖昧に笑うのだ。

今日も明日もその先も。ぽっかり空いた隙間が埋まることなどありえないと理解しながら、伽藍堂な胸を焦がして生き続ける。



『大好きよ』

ほんの微かも理解し合えない胸の裡をそっと擦り合わせて。未だ変わらず触れ合う36度8分の体温に安堵しながら。

永遠の太陽に溺れながら。








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お題:二人だけの。

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