いつまでも変わらぬ形で保存すること───
それは考えてみれば存外、残酷でグロテスクな行為。
いずれ土に自然に帰るはずであったそれらを学術だ知の継承だのと恰もらしい理由をかこつけ鑑賞の材となす酷く不自然で理に反した背徳。
けれど、否、故にこそ。
生から隔絶させられた不変は、他には持ち得ない絶対的な美を宿す。劈くような静寂の中、ただそこにある行為こそがなにより雄弁で。遥か彼方の其の時を音もなく語りかけてくる。変化を奪われた彼等のせめてもの意思表示。
テーマ:【秘密の標本】
保存用
テーマ:【予感】
free と frend 。
語源を等しくするふたつの単語。
遙か彼方今や使われない言の葉を辿った先。インド・ヨーロッパ語 priy-ontが"frend"の始まり。意味は『愛している人』。
なにとなしに動かした指先がきっかけで知り得た物語。
霧───
特段、意識したこともないけれど、それが己の生活の一部であったのだと気がついたのは社会人になって地元を離れたタイミングだった。
天気予報で注意がないこと、早朝の視界が晴れやかなこと、霜の対策をする茶畑が存在しないこと。満員電車にも街中の喧騒にも慣れた今さらにもなって、ふと、もの寂しさを覚えた。
「曖昧な景色」
それが好ましいと、漸く気がついたから。
「帰ろう、かな」
テーマ:【光と霧の狭間で】
祖父母の家にあった壁掛けの時計。1時間ごとに短い音楽のなるそれが幼い頃から好きだった。
真夜中でも鳴り響く鐘のような音はともすれば不気味さすら漂わせるにも関わらず、静寂の中たったひとつ鼓膜を震わすその響きが心地いいと感じた。
揺れる振り子を好き好んでただ眺めている時間さえあった。一定のペースで行ったり来たり忙しないそれをじっと見つめていると、考えても解決しない自分の悩みを忘れられた。
一人暮らしを始めたワンルームに時計はない。アナログの壁掛け時計どころか卓上のデジタル時計すらも。初めから設置されていたテレビも撤去した。
スマートフォンひとつあれば時間の把握に困ることはない。アラーム機能もあればカレンダー機能もある。実用性で考えるのならば、アナログよりデジタル。そもそも用途の被った時計は不要だった。
それでも腕時計を買うと決めて、数多の中から選んだのはただ回る針が時間を示すだけのシンプルなシルバーの時計だった。なんの機能もない、ソーラー充電だけが
テーマ:【時計の針が重なって】