煩わしいと思っていた。
関わらないで、ほっといて欲しかった。
一人でいることに孤独を感じることなんてありもしなかった。そのはずだった。それなのに
「寂しい、なんて」
当たり前に隣にあった熱を距離感を。自ら拒絶していたそれを恋しく思う日が来るなんて思いもしなかった。
特段会話がなくたって目と目が合えば微笑み合う程度のそれだけのクラスメイトとも友人とも呼べない関係性が、それでも確かな繋がりであったなんて気がつきもしなかった。
「過去の自分が聞いたら失笑ものね」
大人になれば煩わしい関わりなんて綺麗さっぱり清算できるとそう思っていて。実際問題、仮初の蜘蛛の糸の如く脆くてか細いクラスメイトという名の強制力はその役目を終えたというのに。
あんなにも求めた、誰にも関与されず邪魔されない世界は何処か寒々しかった。
(こんなに弱かったっけ)
群れることは確かに嫌いだった。
周りに合わせるのも好まなかった。
自由に好きなように自分の意思を貫いていたかった。
そんな生き方を邪魔されることが我慢ならなかった。否定は好ましくはないけれど構わない。陰口は耳障りだけれど右から左。賞賛や同意が欲しいわけでもなかった。ただ、思うがままに自らの選択に責任を負いたかった。
地元を、親元を離れて。
自分ひとりで稼いで家事もして己の力だけで自分好みの生活をして。人の目も気にせずに自由気ままにふらり電車に乗って旅に出て。家に籠って料理してお菓子を作って本を読み耽って趣味に没頭して。何もかも望んだ通りに、干渉されず丁寧な暮らしを実践してるというのに。
「不満はないはず、なんだけどな」
仕事はやりがいがあって順調で。社内の人間関係も良好で周りからの覚えも悪くない。貯金も貯まってきていて欲しいものは大抵買える。行きたかった美術館も商店街もオシャレなお店にだって思い立って出かける毎日。手作りの食事もバランスは取れていて小洒落たスイーツもセットでまるでカフェのようなクオリティ。十分に恵まれていて
書き途中
テーマ:【ふたり】
"夢"だとか"目標"だとか
一見は抽象的な癖に、やけに型にはまっていて。誰かさんの世間の理想を求められる答えを、それが正しいとばかりに一方的に持つべきであれと押し付けられるある種の宗教は心底理解不能だった。
定義不足にもかかわらず、不正解は無遠慮に押し付けられ。答えはないと言いながら、模範解答以外に理由を求め、挙句顔を顰めて否定する。自由を掲げながら、子供の無邪気さを要求しながら、体裁を必要だと暗に伝えてくる。
「パーツが欲しいのならそう言えばいいのに」
それが正しさだと、ルールだと 明確に定められるのならこれほど楽なことはない。責任の所在は規則に、しいては定めた誰かに帰結するのだから。決められた範囲の中はすべて許される。白か黒だけの単純な世界。
言質はとらせない。選択権は委ねさせる。なのに選択肢は実質的に一択で、あなたが言ったのでしょうと 困ったらそう詰寄るだなんて。それはあまりに大人気なく卑怯だと思った。
守られる立場においてルールがあることは当然だと考える。ギブアンドテイクだと言われたって受け入れる。それができる程度には自己も判断能力もあるつもりだ。なのに子供扱いして都合良く操ろうだなんて、それは侮辱に等しい行為。
「夢は自由だと仰ったのはあなた方ではないの」
彼らの言う世界に、本当の"夢"というものが存在しているとはとても思えなかった。
───
テーマ:【ここにある】
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テーマ:【心の羅針盤】
それは呪い。
まじない であり、のろいの言葉。
柔らかくて優しくて温かくて、たった一言で気分を浮上させてくれるブーケ。そして、それ故に儚く淡い期待を抱かせる残酷さも孕んだ真綿。相反する性質を表裏に持ち合わせた、それ自体はただの挨拶。
『またね』
大好きだった。
その言葉だけでその日が輝いて見えた。
『またね』
大嫌いだった。
会えない時間を長くさせる別れの言葉が。
言われなかった日には、絶望すら感じるほどに囚われた。
『またね──』
貴方はあの日も変わらずそう言ったのに。
また、なんて不明瞭な日は先月でも先週でも昨日でも、そして 今日でもなかった。
明日こそは。そう希って明かす夜は幾星か。
零れた雫はどれ程か。クルリ 回した砂時計はまた落ちるばかり。つかない既読を眺めたところで代わり映えもせず。
またね──
それは呪いの言葉
テーマ:【またね】
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テーマ:【温い炭酸と無口な君】