渚雅

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それは呪い。

まじない であり、のろいの言葉。

柔らかくて優しくて温かくて、たった一言で気分を浮上させてくれるブーケ。そして、それ故に儚く淡い期待を抱かせる残酷さも孕んだ真綿。相反する性質を表裏に持ち合わせた、それ自体はただの挨拶。


『またね』

大好きだった。
その言葉だけでその日が輝いて見えた。

『またね』

大嫌いだった。
会えない時間を長くさせる別れの言葉が。
言われなかった日には、絶望すら感じるほどに囚われた。


『またね──』

貴方はあの日も変わらずそう言ったのに。
また、なんて不明瞭な日は先月でも先週でも昨日でも、そして 今日でもなかった。

明日こそは。そう希って明かす夜は幾星か。
零れた雫はどれ程か。クルリ 回した砂時計はまた落ちるばかり。つかない既読を眺めたところで代わり映えもせず。


またね──

それは呪いの言葉



テーマ:【またね】

8/6/2025, 3:13:12 PM