こんなにも空は青いのに、私の春は青さを失ってしまう。
夜明けの訪れを喜ぶ鳥たちに、心底嫌気がさす。遠くの空が赤く染っていくけど、私はずうっと黒いまま。
あの日見た朝焼けの色は、あんなに美しく輝いていたのに、今はもう、こんなにも醜く私を嘲笑う。
細い月が白む空に浮かんでいる。あんなに明るい場所ならば、きっと月だって居心地悪いだろうに、何食わぬ顔でそこに漂う。
こんなに朝が嫌いなのに、この時に縋ってしまうのは、私の弱さの現れだ。
お願い、朝焼けよ、白さに溶けてしまわないで。
このときを終わらせないで、あの日の様に美しく、微笑みかけて。
私はいつからか、愛情が何かを忘れてしまった。
検索をかけてみると、相手に注ぐ愛の気持ち、異性を恋い慕う感情だと出てきた。それでも何だかぼんやりしていて、心に穴がぽっかり空いてしまったみたいだった。
唯一、あなたの顔だけ脳裏によぎった。あなたは誰にでも屈託のない笑顔で接していた。
今は何処で何をしているのか、私は全く知らない。それでもいつかもう一度、あなたに会えたら。
その時にはじめて、心から愛情を込めて
「大好き」
なんて、言えるのかな。
季節の変わり目、治まらない微熱。ここ一週間、なんとも言えない倦怠感と三十七度五分程の熱に悩まされている。学校には行こうとするものの、熱があるならダメだと親に止められてしまった。普段は丈夫な方で、こんなことめったに起きないので、病院に行くことにした。
病院では「季節の変わり目の風邪でしょう」と、一週間分の薬をもらって帰ったが、薬を飲んで眠っても全快しなかったので、いよいよ私には何故体調を崩したのか分からなくなった。。
ある日、親がこう言った。
「外の空気を吸ってみたら?」
それもそうだと思ったが、誰かに会うのが怖かったので、早朝に外に出ることにした。
あくる日。冷たい空気、青く広がる澄んだ空。なんだかどちらも、私の目にいつもより美しく映った。
微熱が冷めていくような、そんな風に吹かれて、自然と顔が綻んだ。
クラッカーが鳴り、紙吹雪が散る。バースデーケーキのキャンドルを思い切り吹き消す。
「お誕生日おめでとう!」
おもむろに言ってみた。はじめての一人で迎えた誕生日に耐えられず、一人で誕生日らしいことを全部やってみたけれど、やはり虚しいだけだった。
売り場で一番小さかったホールケーキを一欠片切り出して、お気に入りのお皿に乗せる。残りも明日、
食べてしまおう。
子供の頃は、誕生日は必ず祝ってもらっていた。両親、祖父母、そして友達。でも、大人になるにつれて、だんだん誕生日を祝えなくなっていた。大きくなるにつれて、したくないこと、できないことが増えていったから。
ふと、一件のLINEに気づく。両親からだ。
「お誕生日、おめでとう!最近調子はどう?年始だけでも、顔を出してね」
この時、私は誕生日に特別なことをしたかったんじゃなかったことに気がついた。ホールケーキより、みんなのお祝いの言葉やキャンドルの火を吹き消すより、大切な人からの一言が、大切なプレゼントだったんだ。
子猫みたいに無邪気な君。
鈴を転がすみたいによく笑い、甘え上手。それでいてとても気まぐれ。
だけど、君は時々不器用で、失敗をしてしまう。そこがまた可愛らしい。
でも、君は誰にでも甘えるから、私のこと本当に仲良くしたいと思ってるのか分からなくなる。
だけど、君が見せる屈託のない笑顔は、私を虜にする。
これが本当でないとしても、これに虜にされるなら、私はなんでも良くなってしまう。これが、守りたい、みたいな感情なのかな。