星ノ燈

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クラッカーが鳴り、紙吹雪が散る。バースデーケーキのキャンドルを思い切り吹き消す。
「お誕生日おめでとう!」

おもむろに言ってみた。はじめての一人で迎えた誕生日に耐えられず、一人で誕生日らしいことを全部やってみたけれど、やはり虚しいだけだった。

売り場で一番小さかったホールケーキを一欠片切り出して、お気に入りのお皿に乗せる。残りも明日、
食べてしまおう。

子供の頃は、誕生日は必ず祝ってもらっていた。両親、祖父母、そして友達。でも、大人になるにつれて、だんだん誕生日を祝えなくなっていた。大きくなるにつれて、したくないこと、できないことが増えていったから。

ふと、一件のLINEに気づく。両親からだ。
「お誕生日、おめでとう!最近調子はどう?年始だけでも、顔を出してね」

この時、私は誕生日に特別なことをしたかったんじゃなかったことに気がついた。ホールケーキより、みんなのお祝いの言葉やキャンドルの火を吹き消すより、大切な人からの一言が、大切なプレゼントだったんだ。

11/19/2024, 10:31:06 PM