mia

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9/12/2025, 1:30:20 PM

深夜2時ころ

貴方も、私も
明日も仕事

眠りたいのに
抗えない衝動に
身を任せれば

台風が過ぎ去ったあとのように
散らかった部屋

眠ったふりをして
繋ぐ度に感じた
金属特有の冷たさを
反芻していた

冷たくて甘くて
痛かった

9/9/2025, 11:39:41 AM

言えぬ思いを
フィルターに通して
不純物だと
証明される


貴方の眼鏡も
貴方の煙草も
貴方の指先も
その指輪も

目眩がするほど
綺麗であるのに

綺麗であるから

9/6/2025, 11:21:08 AM

早朝には少し涼しさが訪れはじめた夏の終わり

先生の車もまだ数台しかないような時刻

自分の足音だけが廊下に響く


昨日の夜、先輩から「明日やろうよ」と連絡が来ていた


その約束のために早起きをした

自転車を漕いで乱れた前髪を少し整えてから
先輩が待つ、三年二組の誰もいない教室へ向かう

扉が全開になっている入口から中をそっと見ると
先輩は窓に背中を預けて足元を見ていた

「おはようございます」と静かに歩み寄りながら言うと

顔を上げた先輩が爽やかに笑って「おはよ」と私の目を見た


「ここ座っていいよ」「俺の席で良ければ」

そこは窓際の一番後ろの席だった

「ありがとうございます」「先輩は?」

「俺はこっち」

てっきり隣に座ると思ったのに、
先輩はいつもずるい

私が座ったすぐ前の席に座り、振り返り、背もたれで腕を組み、
私の顔を覗き込むように、にやり、とした

「この方が近い感じすんじゃん?」


ああ、本当にこの人にはかなわない。


「はい、やるよ。」
パン、と手を叩く先輩


あと30分も続かない空間。
先輩と、私の、二人きり。

9/4/2025, 2:08:57 PM

言い出せなかった「お酒飲まれるんですか」

喉に詰まってそこから動かせなかった
不自然じゃない言葉なのに、飲み込んでしまった


聞いてみたい「どんな音楽聴くんですか」

もしくは貴方の運転する姿を見られた暁に
そこで流れる音楽をこの耳で確かめたい


吸ってみたい「じゃあ一瞬だけ」

そう言って、私の人生の最初で最後のたばこを
咳き込む私を見てにやりと笑う貴方の吐く煙を

そのシワひとつない真白なワイシャツからする柔軟剤の匂いを

9/3/2025, 11:16:26 AM

その音が鳴ると
もう一度鏡と見つめ合って
“大丈夫”であることを確認する

そして
22:46と浮かび上がる液晶を
真っ暗にした部屋の中で視界に入れ
着信の通知を盗み見る

その瞬間が罪深く甘い

緩みそうになる口元をきゅっと結んで
暗闇の世界へと踏み入れる

階段を降りるリズムに合わせるかのように
心臓も強く脈打つ

コン、コン、と助手席の窓を鳴らす

無音の車内に座ると
頭にあたたかな手のひらが触れた

おつかれ

とだけ言って離れていく大きな手

それはいつもの出発の合図


過ぎゆく街灯の微かな光さえ
いやに反射させる薬指の金属

絶対に外さないその輪っかにさえ
救いようもないほど私の心は熱くなっていく

溶けてしまえそうなほど
溶けてしまいたいほど

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