その音が鳴ると
もう一度鏡と見つめ合って
“大丈夫”であることを確認する
そして
22:46と浮かび上がる液晶を
真っ暗にした部屋の中で視界に入れ
着信の通知を盗み見る
その瞬間が罪深く甘い
緩みそうになる口元をきゅっと結んで
暗闇の世界へと踏み入れる
階段を降りるリズムに合わせるかのように
心臓も強く脈打つ
コン、コン、と助手席の窓を鳴らす
無音の車内に座ると
頭にあたたかな手のひらが触れた
おつかれ
とだけ言って離れていく大きな手
それはいつもの出発の合図
過ぎゆく街灯の微かな光さえ
いやに反射させる薬指の金属
絶対に外さないその輪っかにさえ
救いようもないほど私の心は熱くなっていく
溶けてしまえそうなほど
溶けてしまいたいほど
9/3/2025, 11:16:26 AM