mia

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4/7/2024, 12:05:43 PM

こんな時間になっちゃいましたね

助手席に座る彼女が
フロントガラスから空を見上げながら言った

そうですね、でも日も長くなってきましたよね

赤信号
彼女にならって少しだけ空を見上げた

まあでも買い出しもいっぱい出来ましたし、新しいメニューも生み出しちゃいましょう!

ええ、もちろんですよ!

僕らの買い出しはいつも大量の荷物になって
いつも予定の時間をオーバーする
彼女と居ると時間が足りないと思うことがある

なんか、時間足りないですね

自分の考えていたこととシンクロするように呟いた彼女の方を見ると
夕日に照らされた髪とまつ毛がキラキラとしていた

信号が青に変わる
アクセルを少しずつ踏み込む

僕も、そう思います
とは言えずに運転に集中するように口を閉じた

4/5/2024, 1:06:37 PM

「なんか、今日星がきれいに見えますよ!」

外から聞こえてくる鳥の声が気になってリビングの窓の方へ行った彼女が、カーテンを少し開けてそう言った。

キッチンで洗い物をしていた僕は、一旦手を止め、手についた泡を洗い流してから、彼女のところへ向かった。

「ほらー!」

僕が近づくと彼女はそう言って、カーテンを勢いよくシャーっと開けた。

「本当ですね」

今日、彼女が昼間出かけている間に部屋の掃除をした。
そのときに少々窓の汚れが気になり、どうせなら、と窓全体を綺麗に拭いたところだった。
あまり変化は感じられないだろうけど。
ただ、それで空がきれいに見え、彼女も喜んでくれるなら気付かれずともやって良かったと素直に思えるのだ。

「流れ星でも流れそう!」
彼女はその瞳を星のようにきらきらとさせている。

「見逃さないようにしないと」
そんな彼女の純粋さに乗っかって、真似るように窓に顔を近づける。

すると彼女が唇に触れそうなガラスを曇らせながら囁いた。


「見逃しませんよ。窓の掃除、ありがとうございます。」

4/3/2024, 12:24:05 PM

「夢って見ます?」

いつもと同じ声のトーンで突然の問い

「僕はあまり見ないですね、よく見るんですか」

「私もあんまり見ないですけど、昨日は何だか変な夢を見て...」

彼女は少し俯いて、耳にかけていた髪の束がサラリと頬を撫でた

「変な夢、ですか」

「そうなんです...、笑わないでくださいよ?
...1つだけ願いが叶いますって書かれた葉書が届く夢で、
その余白に願い事を書いて返信すれば叶うって」

真っ直ぐな瞳で僕を見る

「へえ、面白い夢ですね。それで何と書いて送ったんですか」

「それが、夢の中の私ったら、───」


、────
ピピ...ピ...
目覚ましの音が聞こえた
まだ瞼の裏に夢の中の彼女の残像が見える

夢か......

何を願い事にしたのか分からずじまいだな...

1つだけ願いが叶う葉書か...それなら僕は、

4/2/2024, 12:46:57 PM

学年合唱
アルトパートだった私は
男声アルトを歌う男子のすぐ隣の立ち位置だった

初めての合同練習の日
すぐ隣に立っていた男子は隣のクラスの
まだ話したことのないバスケ部のイケメン君だった

その日は何を話すこともなく終わった

2回目の合同練習の日
歌と歌の合間のざわつきの中、イケメン君の方から

声めっちゃ出るね、と突然言われた

歌うことが好きな私は合唱でものびのびと歌っていた
え、あ...うん頑張ってる、とドキドキしながら焦って答えると

俺も頑張んなきゃー、と
指揮者の先生の方を向き直して言った
うん、がんばろ...っ!
ドキドキが収まらずそれがバレないようにと意識して小声になってしまった
聞こえていたのかは分からない

その日から、合同練習以外でも
廊下ですれ違うと言葉こそ交わさないけれど
お互いに目が合って「...っす」という感じで
周りが気づかないくらい小さな会釈をし合うようになった

合同練習をする度に、
歌の合間で課題の話や
今度のレクリエーションの話、
合唱を披露する本番の日の話...

盛り上がることもないけど
たぶんお互いこの時間をちょっとだけ楽しみにしていた気がする

そんなふうに、ぽつぽつと話すようにもなった

そして、日常と練習を重ね、
学年合唱を披露した本番の日

歌い終わり、合唱隊形の外側の人からステージを降り始めた
拍手とざわざわとした空気で包まれた体育館

そのときに、トントン、と肩を小さく叩かれた

振り向くと隣のイケメン君が少し笑いながら
お疲れ様っした、と右の手のひらを私に見せてきた

あっ、お、お疲れ様っした、
目の前のことを滞りなく処理することに必死で、
なのに言葉には詰まりハイタッチもちょっとだけズレた

彼が見せてきた手のひらに
小さくハイタッチした私の右の手のひらが汗ばんでしまっていたことに
直後気付いて恥ずかしくなった

そしてまもなく私と彼は
それぞれ反対方向に向かって歩き出し、ステージから降りた

練習を重ねてきた合唱曲【大切なもの】が無事に成功して安心していたはずなのに
ドキドキが収まらない

私はこの文字並びと合唱曲を見るといつも必ず
この“青春”を思い出す

4/1/2024, 12:39:09 PM

「嘘つき」
そう言った君の表情の揺らぎを
僕は一切こぼすことなくこの記憶に刻んだつもりだ

そう僕は嘘つきだ
だけど君にもまだ隠していることがあるだろう

いつか教えてくれよ、

まあ、そのいつかというのはきっと共通認識だろうけどね

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