「なんか、今日星がきれいに見えますよ!」
外から聞こえてくる鳥の声が気になってリビングの窓の方へ行った彼女が、カーテンを少し開けてそう言った。
キッチンで洗い物をしていた僕は、一旦手を止め、手についた泡を洗い流してから、彼女のところへ向かった。
「ほらー!」
僕が近づくと彼女はそう言って、カーテンを勢いよくシャーっと開けた。
「本当ですね」
今日、彼女が昼間出かけている間に部屋の掃除をした。
そのときに少々窓の汚れが気になり、どうせなら、と窓全体を綺麗に拭いたところだった。
あまり変化は感じられないだろうけど。
ただ、それで空がきれいに見え、彼女も喜んでくれるなら気付かれずともやって良かったと素直に思えるのだ。
「流れ星でも流れそう!」
彼女はその瞳を星のようにきらきらとさせている。
「見逃さないようにしないと」
そんな彼女の純粋さに乗っかって、真似るように窓に顔を近づける。
すると彼女が唇に触れそうなガラスを曇らせながら囁いた。
「見逃しませんよ。窓の掃除、ありがとうございます。」
4/5/2024, 1:06:37 PM