『君が染まる色』
君の周りには、沢山の色が溢れているね。紫、黄緑、赤…あの子は黄色かな?それともピンク?
前までは黒一色だった君がカラフルな色に染まった。これ以上嬉しいことはないよ。
だから……
「退いてくれるか、あの子を迎えにいかなくては」
「はっ、何たわけたこと言ってんだよ。
ぜってぇ退くもんか…!!」
絶対に逃げ切るんだよ。
【カラフル】
『僕だけの楽園』
「ただいま」
そう声をかけると彼女の体がビクリと震えた。
「ただいま」
もう一度名前を呼びながらそう言うと、彼女は震える声で「おかえり」と言った。
「今日もいい子にしてた?」
「うん…もちろん…!してたよ…」
「ふぅん……その割には手首に痣が増えてるね」
彼女の手首を持ちあげると、ジャラという音と重さをついてくる。彼女の手首に着いている銀色の下にはぶつけたような痣があった。彼女は「あ…え……」と戸惑った声を出す。気づかれないとでも思ったのだろうか。僕には全部お見通しなのに。
「…ここから逃げようとしたの?」
そう問うとまたビクリと震えた彼女の体。「はぁ…」とため息つきながら僕は口を開いた。
「どうしてここから逃げようとするんだい?ここは僕たちの家だ。楽園だ!君が逃げる理由なんて無いはずだ」
僕がそう言うと、それまで怯えるように震えていた彼女は目をキッと釣り上げて怒りを顕にした。
「僕たちの楽園!?巫山戯ないで!!楽園だと思ってるのはあんただけでしょ!?私はこんなこと望んでない!!」
言い切るとハァハァと肩で息をする彼女。僕はそんな彼女の両頬に手を当て顔を近づけた。
「…すごい!君のそんな表情初めて見たよ!あははは!今日はいい日だ!」
僕の手に包まれている彼女は絶望したような顔をしている。僕は彼女に向けてとびっきりの笑顔を浮かべた。
「やっぱり君を手放す訳にはいかない!」
【楽園】
『街の風』
今日もこの花畑に来た。
近くに設置してあるベンチに腰をかける。今にも降り出しそうな雲の色をしているせいか周りには誰もいない。
彼が消えてから1年が経った。
消える数日前に彼に「会えるのは今日が最後」と言われ、今彼に起こっていることを説明された。彼はこの街のヒーローだからいつかそういうことがあるかもしれないと覚悟はしていた。だが実際に言われると耐えられないわけで。顔をぐしゃぐしゃにして泣く私を彼は優しく抱きしめ「ごめん…ごめんね」と震える声で謝った。謝るぐらいなら消えないでほしい、とは言えなかった。だってそれは、今まで街を守ってきた彼を、彼らを否定することになるから。「最後なんて言わせない!ずっとずっと待ってるから!」涙が収まってきた私は彼を指さしてそう言った。その言葉を聞いた彼が寂しそうに、でも嬉しそうに笑ったのが頭に残っている。
それから毎日私はこの花畑に足を運んでいる。彼と出会ったこの花畑に。ここに来れば彼に会えるような気がしたから。でも……彼は現れない。
「辛いな……」
彼が現れない毎日を過ごす度、辛さが積もっていく。「ずっとずっと待ってる」と言ったくせに根をあげようとする自分が情けない。
そろそろ帰ろうかなと立ち上がろうとした時、強い風が吹いた。花弁が舞い上がって思わず目をつぶる。
その風と共に私を呼ぶ声が聞こえた。ハッと目を開ける。
目の前には彼がいた。あの頃と何一つ変わらない、彼が。彼がもう一度私の名前を呼ぶ。
「風が…風が貴方を運んできてくれたのね」
そう震える声で言う私の頬に手を伸ばす彼。
「あぁ……この街の風に乗って帰ってきたよ」
彼の指が私から出る涙を拭う。彼のその暖かい体温に想いが溢れ出し、勢いよく彼に抱きつく。
「おかえりっ!!」
【風に乗って】
『最初の出会い』
それは、彼の名に相応しい一瞬の出来事だった。
戦闘中に足を挫いて、避けるのが遅れてしまった。目の前では敵が武器を振り下ろしててもうダメだと思った、その時、彼が現れたのだ。彼は敵と距離を詰めると、刀を一振して敵の首を落としてしまった。敵の体がぐらりと傾き、そのまま倒れた。
彼は敵も私にも目を向けることなく、そのまま去っていった。
「…なに、あの人……」
目の前の光景に呆然とした私の足だけがジンジンと傷んでいた。
彼とは後に本部で出会うことになるけど、それはまた別のお話。
【刹那】
『邪魔なH』
「ようやく見つけたの!私の生きる意味!!
だから……邪魔しないでよ!!!」
【生きる意味】