耳を澄ますと、時計の針の音が聞こえてくる。
あれって意識しなくても聞こえてくるのよね。
だから、耳を澄ますとって表現は当てはまらない気がしたのでもう一度耳を澄ました。
今度は、1階のリビングでつけっぱなしにされているテレビの音声が聞こえた。
残念ながら、何を喋り伝えているのかは聞き取れない。
私の家には、雑音が溢れかえっていて自然の音は聞こえない。
ああ、でも耳を塞ぐと聞こえる音があるのを思い出した。
耳を押さえつけるように塞いで音に耳を傾けると、血管がドクンと脈立てる。
貴方の好きな音色はなあに?
お終い
私は、自分が生きている道を作るのではなく完成してから通りたい。
未来は見えない、誰にも分からない。だから、そんなものにいつまでも気を向けすぎるなと言われるのではないかとビクビク怯えてる。
でも、完成している道路は違う。自分の思い描いた道はもう既に作り終えて変化はない。これは、既に過去だから。
私は、未来に怯えている。まだできていない道を君達は車で通るか?
よっぽどの馬鹿でもない限り、未完成の道路を通るやつは居ない。そもそも、現実なら規制線が引かれるから通ろうにも通れない。
ルールを破ることに躊躇のない馬鹿野郎なんかは、気にしないだろうがな。
「幸せに」
温かい夢を見ている、過去は冷たいから。
私は夢を見ているのでは無い。
現実を夢で置き換えているだけ、未来だけが怖いのだ。
過去は乗り越えられない、進むしかない。
私は過去に囚われているのだろうか。現実を夢見て歩き続けてる。
未来を夢見ることはできないけど、ゆっくりと歩みを進める。
道が未完成な道は行かない、完成されている道をただゆっくりと歩く。
決して足場を踏み外さないように。
過去は冷え、現実は生ぬるく、未来は乾いてないコンクリート、幸せになるには何処に行けばいい。
お終い
手紙での連絡でごめんなさい。携帯料金の事を考えると電話より手紙の方がこちらとしては都合が良かったので手紙という選択肢を取りました。
改めて、お久しぶりです。こちらは、気候が安定しているので体調を崩さないで元気にやれています。
ただ、言語の壁というのは乗り越えるよりもぶち破る方がいいのかもしれないと思うようになりました。
友達ができたみたいだけど、言葉が通じないのでジェスチャゲームを交えながら言語を取得しています。
たまに、変顔を入れられるので笑ってしまいます。
〇〇より
2人ぼっちといった俺から君へ
お前、俺からの電話を断った挙句に手紙でよろしくとはいい脳ミソをお持ちのようだな。
是非とも、どうすればそのような素敵な脳ミソが出来上がるのかじっくりと観察してみたいものだ。
改めて、久しぶり。元気にやれているようで、安心した。
友達ができたみたいってなんだよ。お前、そいつとの会話の時特に考えずうんうん頷いてただけだろ。
お前は、ただでさえストレスに強くないんだから体調管理を怠らないように。
後、人間関係でも無理をしないように。
△△より
2人ぼっちの会話は、文通の方がお似合い。
お終い
誰かが褒めてくれる時は、星を透明な瓶の中に入れる。折り紙で作った偽物のお星様。踏んだら潰れてしまう、紙のお星様。
とても、とても大事なお星様。でも、その瓶に入っていたはずのお星様がいつからか溜まらなくなった。
「〇〇、好きだよ。」
「〇〇が大事なんだよ。」
『どうして分からないんだよ。』
『お前なんか産まなきゃよかった。』
どうして、溜まらなくなったのか分からない。愛情が分からない、誰かを愛することも、愛される喜びも分からない。愛し方が書かれた本を読んで、試しに行動に移してみたけれど何も感じなかった。
「〇〇って優しいけど、人に興味無いよな。」
「そう?私あの子優しくて好きだけどな〜」
「うーん、なんて言うか〜優しいけど冷酷って感じ?」
「何それわかんねー」
知人の話す会話の種、無視すればいいと言うが噂の情報は耳から入ってくるのだから正確には耳を塞いで過ごせというのが正しいと思うのは私だけだろうか。
愛は溢れた、星は潰され元には戻らない。
お終い
この人の瞳は笑っている時と笑っていない時がある。前髪が長めだから瞳に光が入らないのかと思っていたこともあったけど、それは違うと分かった。
つい先週、前髪を切った影響かいつもの大人っぽさから少しばかり子供っぽさが出た。前髪の長さも目にかかるくらいから眉毛が見えないけれど瞳を隠さない長さに切られていた。
でも、それでもこの人の瞳はちっとも笑っていない。
「これぇあと」
「…あぁ、さっきの煎餅ね。よかったね〜」
この人は、わたしと遊ぶ時は瞳に光が入る。子供が好きなのだろう、だってわたしが他の人に感じる面倒だという感情がこの人には無い。
わたしの頭を撫でるこの人の手は少し冷たい、冷え性だからか体から冷気が漂ってると家族から文句を言われていた。
「〇〇ちゃん、またね〜」
あの人は帰ってしまう、私と血が半分だけ繋がっている姉はいつもこの家には居てくれない。
安らかな瞳が見れるのに、この家には居てくれない。
お終い