世界の終わりに君としたいこと。
爪を磨く。強く握っていてもケガしないように。
目薬をさす。最後の日でもドライアイは継続中。
ソファーを綺麗にする。映画を見る準備をする。
バック・トゥ・ザ・フューチャーはpart2が最高。
この未来にいつ行けるか楽しみにしていたのに。
先に逝ってしまった君に再会できるように願って。
ヒトをずっと見ていた。愚かでみじめで自分の人生を縮めることばかりをして笑顔を浮かべているので見ていてとてもおもしろかった。その愛しい子どもが天国へとやってきた。嬉しかった。ずっと見ていたその子が今度は人生を縮めることなど気にせず「楽」を追い求められるのだから。
しかし、光があり音があり食べ物もあり、緑もあり、水もあり、何もかもが人間たちにとっての快適を与えるこの場所で彼は泣いていた。
兄がいないと泣いていた。あの世界で、兄はこの子どもを殴っていた。愛してはいたがそれは正しい愛し方ではなかった。だから兄は切り落とした。今では地獄で楽しくやっているはずなのだ。なのに、子どもは兄がいないと泣いている。
「愛しい子、泣かないで。ここなら君の願いは全て叶えられるよ」
「なら、兄さんのところに、連れて行って」
「君は兄によって人生を縮められていた。アルコールとドラッグまみれの人生にしたのは君の兄だ、君の兄は悪者だ」
「ちがう、そんなことない。兄さんは、優しかった」
「ああ愛しい子。馬鹿な子! 愚かな人間!! 君はここで過ごすことができる! でも君がここから行けるのは君の兄が絶対に行けない世界だけ! 君は救われるから! あいつは! 地獄へ!! 落ちる!!!! それが世界の真理!!!!!!!」
子どもは泣いていた。わたしはどうしてこの子どもを愛しく思っていたのか忘れてしまった。わたしはまた下の世界をのぞき込むことにした。
恋って無理にでもしていなければ大人になれないのだと思っていた。ドラマも漫画も本も映画も大人はみんな恋愛をしていたから。
――別にしなくていいだろそんなの。
そう話しかけてきたのはゼミの友達だった。演習で同じ班になって以来、仲良くしている。
彼に関しては、まわりから「付き合えば」と言われながらも絶対にわたしたちは恋人にはならなかったし、告白もしなかった。お互いに友情はあったかもしれないが恋愛的な意味の好意はなかった。
「でも、してないと変な人に見られる」
「中指立てとけ」
「……下品だなぁ」
「相手を異性をパートナーにする恋愛感情ありき、性欲ありきの人間とみなす方が下品だと思うね俺は」
そう言われて、わたしは隣に座る男をそのように見ていると思った。彼には可愛い彼女がいつかできるのだろう、とそう思っていた。
ごめん、とわたしが謝ると彼にはちゃんと伝わったらしく「いいよ」と笑っていってくれた。
真夜中というものは大人の時間だと思っていた。よる9時になれば「はやく寝なさい」と言われていたし、明日の朝起きられないでしょと言われたら言い返せなかった。
大人になっても自分はまだ早く寝ている。子どもの頃からの習慣ではない。毎朝はやくにジョギングをしているあの人のことを見たいからだった。
真夜中は、まだ自分の時間ではない。
BL 弟×兄
どうして怒るんだよ。
兄が不思議そうに聞いてくるから、自分はこの兄のためにどれほどの人生を使わなきゃならないんだろうと思った。
人を殴っちゃいけない。ただそれだけのことが兄には分からない。俺をバカにしたやつを許しちゃいけないなあと兄は思って(それだけで正直頭が痛い。)丁度持っていたピアニカでぶん殴ったのだそうだ。何度も何度も。俺が駆けつけた時には相手はもう答えることもできなくなっていて、俺は怖くてチビりそうになった。兄は「お前を悪く言うやつは兄ちゃんが懲らしめるから安心しろよ」とか言っていた。ふざけんな安心できるわけねーだろうが。
兄は相手の家族に非難されても、両親にしこたま叱られて蹴られてもピンピンしていた。ただ、俺が「一緒に寝るの怖くてヤダ」と言った時にだけ泣きそうな顔をしていた。