∮星が溢れる
夢を見た。
世界には自分しかいなくて、空は泣いていて
ずっと荒廃した緑を裸足で彷徨った
無限のように感じた永い時間を過ごしたような気分
ふと顔を上げてみたら、そこは一面の青だった
嗚呼、やっと辿り着いた
何故そう思ったのかはおぼろげだけど
きっと君の姿が遠くに在ったように見えたから。
いつの間にか泣き止んだ空は満天の星が輝いていて
ガラス張りの足元を反射し照らしていた
君のもとへ駆け出しても、君は同じ歩幅で進んでしまう
水が弾け、呼応するかのように流れ星が走る
ふと、君はこちらを向いた。
そして、優しく笑いかける
(………─────。)
「待ってっ!往かないでっ、いかないで…!」
姿が崩れ、身体から星が溢れる
あまりの眩さに目を瞑った
「、!!」
起きてみたら、私は泣いていた。
アラームの隣に飾ってある、君との写真を眺める
もう夢は掴めないところまで消えてしまったけれど
この感情は絶対に忘れないと思った
∮誰よりも
私が一番私のことを愛してあげられる
その愛をお互いに半分こできる人に出会えたらいいな
∮誰もがみんな
願いが叶ってほしいと祈っている
でもそれは大きな矛盾で、それが叶わないことも
実るわけでもないことを知っている
だから祈らずにはいられないんだろう。
どうか些細な奇跡が起こりますように
∮どこにも書けないこと
昔、女の子が好きだった。
好きっていう自覚はなかったけど、今思い返せばあれは好きという感情だったのかなと思う
小学5年生くらいで、その子がある男の子に告られたとき
その子は告白を断って、そんな悪いやつじゃないけどと言いながらあっけらかんとしていた
よく一緒に喋っていたちょっかいをかけてくる男子が
「よくこんなんに告ろう思ったな、凶暴だし」
なんて言うもんだからすかさずその子が反撃して
私はその姿を見て笑っていて
その日の帰り道。毎日一緒に下校していたからいつも通り、他愛もない話をしていた
あんまり会話の内容なんて思い出せないけど
でもこれだけは記憶に残っている
ふいにその子が言ったこと
「でもなーほんとなんで告られたんだろ。そんな魅力ないっしょ」
「えー笑?いやいやあるでしょたくさん」
何気ない会話のワンフレーズ、たったそれだけ。
そんな些細な自分の言葉と同時に感じた感情を、私は今でも鮮明に覚えている
(私はそいつなんかよりもずっと、その子のいいところを知ってる)
「だってうちのどこが好きか聞いたらビジュってどうよー?」
(私なら一つのことに集中して一生懸命に取り組むとことか、笑ったときに目尻が下がる顔が好きとか、いっぱいあるのに)
「まあだから彼氏にしたいとかは‥ねぇ?」
(私ならその子を幸せにできる、私がその子の彼氏になれたらいいのに)
LGBTなんて存在すら認識してもいない幼さの頃。
こんな風に思うことが、人と違っていることも
友だちにはそんな感情を覚えないことも
これを読んでくれているあなたにも聞きたい。
あなたは、友だちに恋に似た感情を覚えたことはありますか?
その後、私たちは大きくなって
今でもその子は私にとって大切な幼馴染の友達です
∮時計の針
どこにでも溢れているような夜。
その日は何となく気怠くて、思考がまとまらなくて。
だからだろうか
何時もは気にもしない時計の音が頭の中で響いていた
チクタク、チクタク、チクタク、TiCTAC‥‥
「五月蝿い」
思わず時計を手に取り秒針を引き抜いた
一定のリズムを刻んでいたはずのそれは、私の手にすんなりと収まっている
辺りに静けさが戻っていた。
唐突に私は怖くなった
どうしようもなくなって、手を時計に伸ばす
そして、また秒針がチクタク、チクタクと音を奏でるようになった
嗚呼、今になって気付く
私は、無音が、嫌でも記憶を思い出させる静けさが苦手なんだと。
それ以来、その時計は今でも私の部屋で時を刻んでいる