燈翠。

Open App

∮時計の針

どこにでも溢れているような夜。

その日は何となく気怠くて、思考がまとまらなくて。

だからだろうか

何時もは気にもしない時計の音が頭の中で響いていた

チクタク、チクタク、チクタク、TiCTAC‥‥

「五月蝿い」

思わず時計を手に取り秒針を引き抜いた

一定のリズムを刻んでいたはずのそれは、私の手にすんなりと収まっている

辺りに静けさが戻っていた。

唐突に私は怖くなった

どうしようもなくなって、手を時計に伸ばす

そして、また秒針がチクタク、チクタクと音を奏でるようになった

嗚呼、今になって気付く

私は、無音が、嫌でも記憶を思い出させる静けさが苦手なんだと。

それ以来、その時計は今でも私の部屋で時を刻んでいる

2/6/2024, 3:50:24 PM