NoName

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10/22/2024, 3:38:53 AM

 夢にお前が出てくるのは久々だった。沖縄の海、行きつけのバーガーショップ、二人乗りの自転車、ゲームセンター、毎日顔を合わせた教室、学生寮の互いの部屋。どこに行ってもお前は声が枯れるまで笑っていて、俺も楽しくて仕方がなかった。
 夢から醒めると俺は一人で横たわっていて、隣にはもうお前がいないことをまざまざと実感した。
 お前も心から笑っているんだと、呑気に信じきっていた自分が心底憎いよ。お前の陰りに気づいていたはずなのに、大丈夫という言葉だけを信じて、きっとお前を取り戻す最初で最後のチャンスにさえ、俺は傍にいなかった。

10/19/2024, 12:33:36 PM

 近づけるのに届かなくて、手を伸ばしたら見えない何かに押し返されるようで、そんな風に思って青ざめた顔を君だけには気づかれたくなかった。
 君に全部告げるべきだったのに。
 そうすれば、もっと上手く折り合いをつけられたかもしれない。君と道を違えることもなかったかもしれない。全部諦めて、自分なりに覚悟を決めて選んだ道を信じて歩み始めることは、思ったよりもずっと怖かった。

 だから私は、君と過ごした蒼い春を、君とすれ違った今もお守りとして胸に住まわせている。

10/18/2024, 1:43:06 PM

 まだ葉の色も変わらないけれど、風が確実に秋を運んできて、空の色が変わった。
 よく晴れた群青色の空の眩しさに顔をしかめつつ、隣にいるはずの人に声をかけようとして、ぽかりと空いた空間を見てはため息をついた。秋の空は殊の外切なさを含んだ色をしていて、やがて来るはずの寒々しい冬を恐ろしく思えてしまう。

 あいつのいない冬を迎えるのか。

 任務帰りにコンビニで肉まんを買い食いして、あいつの部屋に寄って炬燵を堪能し、たまには学食ではなく共に鍋をつついて、暖房の効いた温かい部屋で夜通しゲームをしてーー
 そんな日々はもう戻らない。
 戻らないけれども、その蒼い春が、今でも胸に住んでいる。