NoName

Open App

 まだ葉の色も変わらないけれど、風が確実に秋を運んできて、空の色が変わった。
 よく晴れた群青色の空の眩しさに顔をしかめつつ、隣にいるはずの人に声をかけようとして、ぽかりと空いた空間を見てはため息をついた。秋の空は殊の外切なさを含んだ色をしていて、やがて来るはずの寒々しい冬を恐ろしく思えてしまう。

 あいつのいない冬を迎えるのか。

 任務帰りにコンビニで肉まんを買い食いして、あいつの部屋に寄って炬燵を堪能し、たまには学食ではなく共に鍋をつついて、暖房の効いた温かい部屋で夜通しゲームをしてーー
 そんな日々はもう戻らない。
 戻らないけれども、その蒼い春が、今でも胸に住んでいる。

10/18/2024, 1:43:06 PM