問1
ここに1つだけりんごがあります。
さて、どうしますか?
海琉君の答え 『手に取って丸かじりする』正解。
才智君の答え 『切ってお友達と食べる』正解。
野乃ちゃんの答え 『何もしない』正解。
大須君の答え 『ゴミ箱に捨てる』正解。
杉田君の答え 『三角コーナーに捨てる』正解。
どうしましたか?
採点ミスが多いって?
いいえ。私はミスはしてませんよ。
1つのりんごだけでも、こんなに色々な可能性があるんです。それは、全て尊重されるべきと私は考えてます。
じゃあ、テスト返却してきます。また会いましょう。
大切なもの。
とある老人に聞きました。老人の答えは「お金」でした
とある少年に聞きました。少年の答えは「友情」でした
とある少女に聞きました。少女の答えは「命」でした
命。少女はなぜそう答えたのか?
大半の人が「命」と答えるから。
……そう思っていた。彼女は違った。
「なぜ、命が大事なの?」
「…私ね、病気なの。あと数年の命って言われたの」
「!」
「だから、命が大切なものなの」
「そう、かい」
「命がないと、何も出来なくなっちゃう」
「……」
「ねぇ…お兄さん」
「どうしたんだい?」
「お兄さんの大事なものは、なに?」
「僕は、『耳』かな」
「どうして?」
「僕も、最近耳が悪くなっちゃったんだ。…このまま進むと完全に聞こえなくなるって言われたんだ」
「そーなの…」
僕は彼女にこう言った。
「完全に聞こえなくなる前に君と話せて良かったよ」
「!!」
「『大切なもの』って、いっぱいあるね」
「…うん!……私もお兄さんと話せてよかった!」
「…じゃあ、また、どこかでね」
「うん…バイバイ。お兄さん」
彼女が歩き出す。僕に向けられた背中はとても勇気を持っていて、そして見えない美しさが広がっていた。
黒い道路に点々とした道路より黒い色が落ちる。
僕は、泣いてしまった。感情に身を委ね、沢山泣いた。
あんなに、必死に生きる子がいるんだな、と。
…あれから、どのくらい時が経った?
もう思い出せない。いや、もう記憶に残すことすら辞めていたのかもしれない。
「……!!!………!!」
「………」
「『おい、上矢!』」
「ああ、ごめん。最初っから筆談してよw」
「『もしかしたら聞こえるかもしれないだろ!』」
「それはもうないさw諦めるんだなw」
罪岩のペンが動かされている。
僕は、完全に耳が聞こえなくなった。
「『今日はお前に客がいるぞー』」
「どうせ医者だろ。もう大丈夫って言っといて」
「『それがなんと違うんだよ。多分女子高生』」
「『お前ストーカーでもしたのか?』」
「してないよ。で、お客とやらはどこにいる?」
「『後ろ』」
「え」
ふと見ると、制服姿の女子高生がいた。
「うお!」
「『すいません!驚かしてしまい…』」
「『じゃああとは2人だけで』」
「『……また、会えて嬉しいです』」
彼女の文字に、思い出した。
ああ、彼女は救われて、僕の前に現れてくれた。
「ありがとう…ありがとう!!」
「『私も嬉しい…ありがとうございます』」
今日は、いい日だ。
一生、忘れない。
『大切なもの』になった。
「聞けえ!」
「うっさいわね!なに!?」
いつも通りの始まり方。でも内容は180°違った。
「俺彼女出来たんだ!」
「......は?」
嘘。絶対嘘。こいつに彼女ができるはずない。
「ほんとかしら〜?」
「ほ、ほんとだ!写真送ったろか!?」
「いいわw別にw」
あーこれ諦めた方がいいやつ...かな
「お前はただの親友だったってこったw」
「お前を欲しいとは思わないからな〜」
「お前なんか大嫌いだ!」
「ちょ、冗談きつい。あとお前って...」
「あ、まち」
「ん?」
「今から遊ぶ事になった!じゃあな!」
トゥルルンと音をたてる。
きっと彼女だろうな。
あーなんで泣いとんのや、私。
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「聞いてよ〜」
「どうした?」
「私が使ってたノートPC壊れた泣」
「え、ガチ!?大丈夫!?まぁまぁ値段したヤツだよね?」
「...ふふふ、なんてね」
「え?」
「今日はエイプリルフール!嘘をつく日よ?」
あ、なんかそういうのあったな。こういう何もない時に時間が過ぎるのは早く感じる。
「あ〜...そんなのあったね」
「引っかかったねw」
彼女のスマホが鳴る。
「友達から電話だ...ちょい出てくる〜」
「ん〜」
あれ。待てよ。エイプリルフールって事は...
思わずLINEを開く。
「お前はただの親友だったってこったw」
「お前が欲しいとは思わないからな〜」
「お前なんか大嫌いだ!」
これが、嘘だとすると。
考えるだけで顔から火が出るほど熱くなった。
照れてる。私照れてる。
「ただまー...ってどした。顔トマトだよ?」
「彼氏出来たわ」
「はー?」
急な宣言しても大丈夫。
なんたって今日はエイプリルフール。
とりあえず告白と受け取っておこう。
気が早いけどね
バットエンドだった?
時を戻してどこで間違えたか考えてごらん。
心当たりある?
いってらっしゃい。
いらっしゃい。
ハッピーエンドを迎えれた?
良かったね。自分のちゃんと誤った所を直せたんだね。
じゃあね。
起きな。
どーした。顔色いつも悪いのに今日は調子良さそうだ。
......へ?学校へ行くって?
まじか。良かった。丁度今休みの連絡いれるとこだった
ん?教室登校は無理だって?
わーってるよ。じゃあちゃんと保健室と担任に連絡しておきます。
うん。いってらっしゃい。
誤った所を直す、ねぇ。
簡単じゃないけど、あいつみたいに一歩でも進めたら
俺もハッピーエンドになれるかな。
この人生は分岐だらけだけと、きっとどれも
『ハッピーエンド』へと繋がってるだろう。
-----ハッピーエンド-----
「ちょっと貸してよ」
「いいよー」
「お前すごw」
そんな会話が私の隣で広がってる。
どうやらゲームをしている様子。タイピングゲー。
「やっぱKは打つの速いよな」
ボソッと私は言った。
言った後、近くの想い人の瞳が私を捕まえる。
「いや、君の方が速いね」
そんな瞳で見つめながら言わないで欲しかった。
悪い意味では無い。良すぎて、壊れてしまうと思った。
「えーそう?でもKの方がやっぱ上だよ」
返事をする。
素直に「ありがとう」と言えなかった。
彼は首を振りながら「いやいや」といってる。
愛らしかった。
またあの瞳に捕まりたい。見つめてくれ。
そして私の心を思う存分乱して。
見つめて。見つめて。