ジフ/gif

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大切なもの。

とある老人に聞きました。老人の答えは「お金」でした
とある少年に聞きました。少年の答えは「友情」でした
とある少女に聞きました。少女の答えは「命」でした

命。少女はなぜそう答えたのか?
大半の人が「命」と答えるから。
……そう思っていた。彼女は違った。

「なぜ、命が大事なの?」
「…私ね、病気なの。あと数年の命って言われたの」
「!」
「だから、命が大切なものなの」
「そう、かい」
「命がないと、何も出来なくなっちゃう」
「……」
「ねぇ…お兄さん」
「どうしたんだい?」
「お兄さんの大事なものは、なに?」
「僕は、『耳』かな」
「どうして?」
「僕も、最近耳が悪くなっちゃったんだ。…このまま進むと完全に聞こえなくなるって言われたんだ」
「そーなの…」

僕は彼女にこう言った。

「完全に聞こえなくなる前に君と話せて良かったよ」
「!!」
「『大切なもの』って、いっぱいあるね」
「…うん!……私もお兄さんと話せてよかった!」
「…じゃあ、また、どこかでね」
「うん…バイバイ。お兄さん」

彼女が歩き出す。僕に向けられた背中はとても勇気を持っていて、そして見えない美しさが広がっていた。

黒い道路に点々とした道路より黒い色が落ちる。
僕は、泣いてしまった。感情に身を委ね、沢山泣いた。
あんなに、必死に生きる子がいるんだな、と。






…あれから、どのくらい時が経った?
もう思い出せない。いや、もう記憶に残すことすら辞めていたのかもしれない。

「……!!!………!!」
「………」
「『おい、上矢!』」
「ああ、ごめん。最初っから筆談してよw」
「『もしかしたら聞こえるかもしれないだろ!』」
「それはもうないさw諦めるんだなw」

罪岩のペンが動かされている。
僕は、完全に耳が聞こえなくなった。

「『今日はお前に客がいるぞー』」
「どうせ医者だろ。もう大丈夫って言っといて」
「『それがなんと違うんだよ。多分女子高生』」
「『お前ストーカーでもしたのか?』」
「してないよ。で、お客とやらはどこにいる?」
「『後ろ』」
「え」

ふと見ると、制服姿の女子高生がいた。

「うお!」
「『すいません!驚かしてしまい…』」
「『じゃああとは2人だけで』」
「『……また、会えて嬉しいです』」


彼女の文字に、思い出した。
ああ、彼女は救われて、僕の前に現れてくれた。

「ありがとう…ありがとう!!」
「『私も嬉しい…ありがとうございます』」


今日は、いい日だ。
一生、忘れない。
『大切なもの』になった。

4/2/2023, 10:59:50 AM