『沈む夕日』
今日はやけに空が晴れやかだった。
ゲームでレアキャラが出てきたわけでも
可愛い子に声をかけられた訳でもなかった。
ただなんだかいい一日だった。
夕焼けも綺麗で、今のところ今年で1番綺麗なんじゃないだろうか。
桜の花びらが舞い散っているのもあって、
ものすごく素敵な夕焼けだ。
なんともない一日だった。
それなのにこんな素敵な景色を見れてよかったのだろうか。
たまには...ご褒美としてってことでいいか。
優しい夕焼けに照らされながら思い切り伸びをする。
空に突き上げるように伸びをした手には
桜の花びらが一枚降りてきた。
語り部シルヴァ
『君の目を見つめると』
普段目が合わない君と偶然目が合った。
漫画とかでよくある「バチッ」という表現がある。
まさにそれが脳裏によぎった。
まるでお互いがお互いを固めているようだ。
普段見ない君の目。
光が反射する角度じゃないからキラキラしていないけど、
茶色の虹彩は今まで見た茶色よりも鮮やかだ。
数秒経つとお互い体が動くようになり、席に着いた。
隣の席同士だったことも
知らなかった他人同士なのになぜだろう。
少し君のことを知りたくなった。
最近あったかくなったからか、顔が暑い気がする。
語り部シルヴァ
『星空の下で』
夜風は春を帯びて草木の匂いが混じっている。
昼に少し雨が降ったせいか雨の匂いも若干する。
それでも星空が綺麗に見えるほど今の空は晴れている。
ずっと同じ場所に住んでいるのに1年経つと
匂いの感覚もほぼ忘れているようで、
毎年四季折々の匂いに心を惹かれる。
日中の熱をまだ忘れていないこの時間帯は
散歩するには丁度いい。
頭を抱えた時、酷く落ち込んだ時には
こんな環境で散歩するのが1番だろう。
深呼吸すれば春の匂いが、
手を広げれば夜風が、
空に目をやれば満点の星空が、
ちっぽけな自分を救ってくれるんだ。
だから明日も頑張れるんだ。
家からずいぶんと離れたところまで散歩してしまった。
そろそろ帰ろう。
五感で受けた余韻に浸りながら...
語り部シルヴァ
『それでいい』
「ねえねえお父さん、ここの答え教えて。」
最近息子が宿題の答えを聞きに来るようになった。
最初こそ頼られて嬉しかったがこれじゃあ勉強の意味がない。
自分でよく考えて、それでもダメなら
聞きにおいでと伝えるようにした。
もちろん答え以外で分からない部分は頑張って説明する。
最終的には自分で考えて答えを導くことが重要だ。
なかなか自分の気持ちが伝わらず答えを泣きながらでも聞いてきたが、徐々に自分で考えて答えを出せるようになってきた。
今じゃ答えの解説までしてくれるようになった。
息子の得意げな笑顔になんだか誇りを持てた。
語り部シルヴァ
『1つだけ』
思い出すのは家族や恋人でも無く、
みんなに見送られた時のことだった。
やたらとぐずる女の子をお母さんが必死になだめていた。
それでも女の子は機嫌をよくすることなくぐずっていた。
そんな女の子に軍服のお父さんらしき人が
一輪の花をあげていた。
女の子はたいそう喜び、お母さんは涙が溢れていた。
なんで今なんだろう。こっちは今も死にそうで
家族や恋人のことを考えない自分が薄情に感じるじゃないか。
いや、きっと羨ましかったんだろう。
家族や恋人から愛情を貰えていたかの答えが
今わかったからだろう。
「はは...愛されたかったな。」
温もりを求めて手を伸ばした。
その先にはあの一輪の花よりも大きな爆弾が飛んできた。
語り部シルヴァ