『1つだけ』
思い出すのは家族や恋人でも無く、
みんなに見送られた時のことだった。
やたらとぐずる女の子をお母さんが必死になだめていた。
それでも女の子は機嫌をよくすることなくぐずっていた。
そんな女の子に軍服のお父さんらしき人が
一輪の花をあげていた。
女の子はたいそう喜び、お母さんは涙が溢れていた。
なんで今なんだろう。こっちは今も死にそうで
家族や恋人のことを考えない自分が薄情に感じるじゃないか。
いや、きっと羨ましかったんだろう。
家族や恋人から愛情を貰えていたかの答えが
今わかったからだろう。
「はは...愛されたかったな。」
温もりを求めて手を伸ばした。
その先にはあの一輪の花よりも大きな爆弾が飛んできた。
語り部シルヴァ
『大切なもの』
期限が明日にまで迫ってきた。
それでも一向に案が思いつかない。
明日は"大切なもの"をテーマに
スピーチを行わなければならない。
たった一分間。それだけのスピーチの内容が
全く頭に浮かばない。
うーん、ご飯は違うし趣味も違う...
大切なもの。それだけで頭が真っ白になってしまう。
僕には大切なものがない。
仕方ない...スマホを取り出して"大切なもの"を調べた。
みんなの大切なものを参考にスピーチをまとめることにした。
語り部シルヴァ
『エイプリルフール』
「...ウソね。」
俺の渾身のウソを見抜いて君は一言で片付けられる。
毎年エイプリルフールはウソをついて
君の驚いた表情を拝みたい。
なんてことをもう何年もやっている。
けれど...君の表情は変わらず、
頭の回転が早いからすぐ見抜かれる。
何年もやっているのに君が驚く表情は見れない。
もっと俺の頭が良かったら...拝めたかな。
「毎年ウソをつきに来るのはあなたぐらいよ。
...でもそれが楽しいから毎年この日が楽しみよ。」
そう言われて顔をあげる。
君は微笑みながら「ウソよ。」と一蹴。
また肩をガックリと落としたが
「あなただから楽しいのかもね」
と小声が聞こえた。
それがウソでも、とても嬉しいよ。
語り部シルヴァ
『幸せに』
幸せの鐘が鳴り響く。
青空の下で沢山の人が花嫁姿の君を祝っている。
君も幸せそうだ。
美味しいものを食べて、手紙を読んで泣いて
新しい装いに変えて...
今日はきっといい一日になる。思い出にずっと残る。
そんな君の晴れ舞台。
ほんとに...幸せになってくれよ。
招待された席は花嫁姿の君にスポットライトが
当たっているせいか暗く感じた。
語り部シルヴァ
『何気ないフリ』
春休みで部活しか無いからかいつもより校舎内は静かだった。
部活が早めに切り上がり、特に予定もなかった俺は
もう来ることは無いだろうと思っていた
2年の教室で桜を見ていた。
優しい春風がそっと桜の花びらを散らせる。
早咲きした分の桜の花びらが1枚、また1枚と舞う。
こういう景色を見ると、
どこかセンチメンタルな気分になるのは何故だろう。
春の陽気には拭いきれない不安が見えないけどある。
...今は春の陽気に身を委ねよう。
何も気づかない。気づいていない。
それだけでも不安は拭えるはずだから。
陽気に当てられて暖かいはずなのに
鳥肌が立った腕を優しく撫でた。
語り部シルヴァ