『木漏れ日の跡』
散歩で公園に来た。
道中に木の屋根でできた道を通る。
秋風に吹かれて揺れる葉の隙間から木漏れ日が差し込む。
茶色や黄色、緑の葉が木漏れ日に照らされ道が輝く。
少し足を止める。
自然の香りに涼しい秋風と木漏れ日で輝く道。
歩けば乾いた音で割れる枯葉...
五感が自然に包まれて心が洗われるようだった。
木漏れ日の跡に立つとスポットライトに
当てられたような気分にもなる。
今この瞬間、私は主人公になった気がした。
語り部シルヴァ
『ささやかな約束』
「...おはよ。」
「おはよ!」
朝目が覚めたらいつも幼馴染が
ベッドに寝てる俺を見つめている。
晴れの日も雨の日も土日も...
「あのな...わざわざ毎日来なくてもいいんだぞ?」
「別に〜?無理してないよ。」
このやりとりもほぼ毎日。ほんとに飽きないな...
「じゃ、玄関で待ってるからね。」
そう言って俺の部屋から出ていった。
「もしかして...いや、まさかな。」
階段を降りていくとおばさんが声をかけてくれた。
「あ、いつもありがとね。朝ごはんは...食べてきたかな?」
「はい、いつもお気遣いありがとうございます。」
「こちらこそだよ〜!...あの子は約束忘れてると思うけど...
それでもやってくれるなんて本当ありがとう。」
昔交わした約束。
ねぼすけな君が困っていたから
僕が起こすよと言うと喜んでくれた。
そんな君の寝顔を見れるんだ。毎日来たくなるさ。
語り部シルヴァ
『祈りの果て』
-神はいます。信じる者にこそ神は応じてくれます。-
見習いシスターの頃はよく言い聞かされた言葉。
私はそれを信じてその言葉をみんなに届けては
神を信じ毎日祈りを捧げてきた。
戦争が続く日々が早く終わるように。
少しでも多くの命が救われますように。
現実逃避のひとつだったのかもしれない。
思えば私は成り行きでシスターになった。
やりたいことも将来の夢も
こんなことになっていなければあったかもしれない。
祈りを捧げては自分を押し殺していた日々だった。
それに気づいたのはここが爆撃されたとき。
教会どころか村はほぼ壊滅。生き延びたのも私だけだった。
神はいたんじゃないのか。
信じれば応じてくれるんじゃないのか。
私はこんな地獄を願ってなんていない。
祈りを捧げていた日々を笑うように神は現実を見せてきた。
...バカバカしくなった。
私は久しぶりに声を上げて笑った。
爆撃が終わり静かになった村に私の声が響くほどに。
語り部シルヴァ
『心の迷路』
「あのーすみません。予約していた○○です。」
「本日はお越しいただきありがとうございます。
入る前に事前説明と同意書の記入をお願いしておりますので
待合室にてお待ちください。」
最近話題になっている迷路。
ただの迷路ではなく人によって内容が変わっているらしい。
しかも迷路に入っている間は
何週間何ヶ月と経っている感覚なのに
迷路から出ると入ってから一分と経っていないらしい。
運営側の私達も詳しいことは知らされていない。
事前説明や同意書も迷いに迷って出られなくなっても
自己責任だという確認で、
そこで怖くなってリタイアする人も多い。
ただひとつわかることは、
ここの迷路から無事出られた人は
嘘のように晴れた顔をして出てくる。
だから心の迷路と巷で呼ばれている。
あなたも興味があればぜひお越しください。
きっと晴れやかな気分になることでしょう。
...無事出られたらの話ですが。
語り部シルヴァ
『ティーカップ』
休みの朝。
いつもよりかは遅めに起きて朝一にコーヒーを入れる。
棚からティーカップを出して湯を沸かす。
その間に豆を挽く。
普段ならインスタントの粉で済ますけど休みだからこそ
こういう時間がすごく心が穏やかになる。
サーバーにフィルターをセットしてお湯を注ぐ。
ゆっくりとティーカップにコーヒーが満たされていく。
手間隙かけてやっと完成した一杯。
普段使わないティーカップに
普段しない豆挽きから作るコーヒー。
私の休みはこれから始まる。
語り部シルヴァ