『光と霧の狭間で』
雨上がりの早朝。
やけに肌寒いせいか目が覚めた。
今日は休みだし...と思い普段着に
一枚上に羽織り近くの公園まで歩く。
公園は足が飲まれるくらいの濃い霧が出ていた。
陽が出てないのもあって随分と不気味な雰囲気だ。
幸い舗装された道の端からライトアップされてるおかげで
道の輪郭はハッキリとわかるからつまづくことは無さそうだ。
空は微睡んでみんなまだ寝ている公園は
どこか不気味で神秘的な空間になっていた。
なんだかいつもと違う世界に来たみたいでドキドキする。
いい経験をした。
これ以上は体を冷やしてしまうかもしれないから帰ろう。
帰って温かいココアでも飲もう。
語り部シルヴァ
『砂時計の音』
砂時計をひっくり返す。
特に何かを測るわけじゃない。
勉強中ふと目に映り無性に気になって仕方なかった。
多分集中力が切れたんだろう...
机に頬を付けながら落ちていく砂を見つめる。
これが全部落ちるまで...そう思いながら...
ものすごく小さくサラサラと流れる音が聞こえる。
集中して聞かないと聞こえないくらい。
...勉強もこれくらい集中出来ればいいんだけど。
こうなってしまったら少しは休憩を入れないと
復活しないだろう。
砂時計の砂が全て落ちた。
よし、勉強やーめた。
コーヒーが飲みたくなったから
台所へコーヒーを淹れに行った。
語り部シルヴァ
『消えた星図』
友人とプラネタリウムを見に行くことになった。
友人が張り切って図書館で事前に勉強しようと言い出した。
今回の予定は友人から誘ってくれたのだが
相変わらず行動力がすごい。
それに振り回されても
むしろ元気な友人につられて楽しくなってくる。
早速図書館で勉強することにした。
星を調べてみると色んなことがわかる。
歴史とか天文学のレベルとか...
面白いなあと星の本を見てみると友人が肩をつつく。
どうしたのか目で聞いてみると今度は本を指さす。
友人がさした部分を見てみる。
"19〇〇年〜19✕✕年。
世界中で星が消え星図が書けなかったようだ。
原因は未解決のまま気がつけば星がまた輝いた。"
友人と顔を見合わせる。
今までニュースや先生にも聞いたことがない情報だった。
借りて家に帰ってじっくり見てみようにも
既に予約が入っていて、次借りに来た時にはもう
その本は消えていた。
もうプラネタリウムどころじゃなくなった僕たちは
休みの日に合流しては消えた星図の歴史を
探しに行くことにした。
語り部シルヴァ
『愛-恋=?』
最近、恋人が冷たい。
イチャイチャしてくれない。電話もしてくれない。
抱きついてもすぐ引き剥がされる。
それでも...ってずっと信じてた。
もうだめなのかな...
明日一緒にしたいこと...なんだっけ?
あれ...恋人ってこんな顔だっけ?
なんだか別人みたい。
あれ...なんで付き合ってるんだっけ。
愛したい人って恋心がくすぐられるもんじゃなかったけ?
...まあ、もういっか。
「ねえ、話があるんだけど...」
語り部シルヴァ
『梨』
スーパーで梨が売られていた。
秋だから。なんて理由で買ってみた。
こうでもしないと季節の果物なんて買わない。
皮を剥いて食べやすいサイズにカットして...
小皿に移して爪楊枝を刺して準備完了。
一口食べる。
シャキッとした食感に爽やかな甘さ。
もう一口...もう一口が止まらなくなる。
気がつけば小皿は空に。
一個だけだとこんなにもあっという間に無くなるのか...
また買おうかなと思う反面
このひとつで満喫できてしまった気はする。
気が向けば。そう思いながら流しに小皿をそっと置いた。
語り部シルヴァ