『愛する、それ故に』
ふと目が覚めた。喉に違和感があったから水を飲みに行く。
ついでにトイレも済ませて戻ってくる。
ゆっくりと動いたおかげか布団の中の彼氏は
ぐっすり眠っていた。
寝てる姿もかっこいい...とうっかり惚れそうになる。
いやもうゾッコンかもしれない。
はだけた布団を直しつつ隣に寝転ぶ。
ああ...幸せだなあ。
愛する人がいて同じ時間と温もりを共通できるなんて。
君と出会うまでこんなこと経験できるとは思ってなかった。
...だからこそ怖い。
君がいなくなったら私は絶望するだろう。
嫌なことは考えたくない。
君を起こさないようにゆっくりと動き、
もっと君の体温を感じるためピッタリくっついた。
優しい温もりが安心感と眠気を誘い、
そのまま眠りについた。
語り部シルヴァ
『静寂の中心で』
人は本当に驚くと声が出ないとはよく言うもんだ
クラスメイトの視線を感じる。
全員いるはずなのにずーっと静かだ。
全員が僕ともう一人を囲んで僕を晒し者にしてたんだ。
さっきまで和気あいあいとしてたいじめっ子も
やめなよといいつつからかう腰巾着も声が出ない。
僕だって実感が湧いた数分が20分くらいかかった気がした。
広がる血溜まり、生暖かい手の感覚、
天井の電灯が反射して眩しいナイフ。
まるでスポットライトに当てられてる気分だ。
今、どれくらい経っただろう。
未だ誰一人声を出せない空間が続く。
太陽に照らされるホコリが視界にチラホラと浮いている。
次の授業はなんだっけ。
そんなことを考えていると息をすることを忘れていた。
呼吸をする。鉄棒の匂いが脳を刺した。
語り部シルヴァ
『燃える葉』
ぱちぱちと燃え上がる炎が揺らめいている。
小さな炎とはどうしてこうも見入ってしまうものか...
周囲は真っ暗で燃やした炎だけがぼんやりと照らす。
葉っぱが1枚1枚燃えて鮮やかな緑や橙色が
瞬く間にして黒くなる。
燃えて黒くなった葉は闇に飲まれていく。
顔が少しずつ暖かいを超えて熱さを感じる。
熱いけど...眠気を誘う熱さだ。
前が熱い分背中が熱を奪われて寒さを伝う。
どれ...もう焼けただろうか。
燃える葉っぱの山へ棒切れを突き刺す。
手応えがあって棒切れを山から引っ張り出す。
巻きついたアルミホイルを
火傷しないように剥がして半分に割る。
揺らめく炎のように輝く焼き芋の完成だ。
語り部シルヴァ
『moonligt』
ススキが揺れる。
秋風が吹く。
優しい明かりが全てを照らす。
どうしてだろう。こんな晴れた日には無性に飛びたくなる。
ほんと、気持ちが軽くなるって感じ。
誰かが跳ねる。それを見てまた誰かが跳ねる。
ぴょんぴょん飛んで心が踊る。
踊る心がみんなを沸き立たせる。
ここまで来たらやることはひとつ。
宴だ。餅をついて色んな大福を作って
みんなで食べよう。
心がもっと踊るはず。
語り部シルヴァ
『今日だけ許して』
君はいつだってそうだ。
どんなことにも全力で。がモットーな君は
いつだって全力で取り組む。
そんな姿勢が好きだ。
もちろんそんな君にも嫌いなことはあるし
その嫌いなことには君は少し躊躇う。
そんな時は心を鬼にして君を応援するけど...
今回は一筋縄じゃいかなさそうだ。
「今日はやったの?」
「う...ま、まだデス...」
「僕も手伝うからさ、始めようよ。」
「いや〜?今日は筋肉痛で明日からなら...?」
「そう言って昨日マッサージしてあげて少しは動けてるでしょ?」
「う...お願い今日だけは!明日!明日からほんと全力で!」
二人で始めたダイエット。
目標はまだまだ先の話になりそうだ。
語り部シルヴァ