『心の中の風景は』
学校の屋上から見る景色はとても鮮明に覚えている。
夕焼け空を視界いっぱいに堪能できて放課後は
こっそり鍵を開けてひとり空を見ていた。
ひとりだったけど、とても素敵な時間だった。
友達と呼べるような人はいなかったから仕方ない。
おそらく私の青春時代で一番綺麗だった景色だと思う。
今でもその記録は塗り替えられないほどだ。
今は...
空よりもパソコンの画面を見ることが増えたし、
夕焼けよりもブルースクリーンの方がよく見る。
ずっとしんどいし辛い。
けど...あの景色を思い出す度に
あと少しだけ頑張ろうって思える。
また...あの景色を見れたらなあ。
そんなことしてしまえば不法侵入罪で
うんたらかんたらと突っ込むのは野暮ってものだよ。
語り部シルヴァ
『夏草』
青く生い茂る夏草。
昔は腹の高さまであったはず。
今じゃ膝よりも下になってしまった。
夏草をかき分けて進む時の青臭さとか
肌に擦れてくすぐったかったのを覚えている。
大人になった今はそんなことすることは無くなった。
大人だから当然...なんだろうか。
童心と一緒に大切なものも忘れてしまったような気がする。
子供の頃の無邪気さはある意味無敵だったんだなと
夏風に吹かれて
サラサラと音をたてる夏草を見て思う。
ちょうど夕日が沈み辺りが暗くなって時報が鳴る。
さ、もう帰ろう。
語り部シルヴァ
『ここにある』
静かに行われると思っていた葬式は
想像以上に騒然としていた。
警察も参列者一人一人に事情聴取をしている。
お坊さんはこの状況でお経を読もうか迷っていそうだ。
今日はあの子が死んだ葬式の日。
順調に事が進むと思いきや、
あの子の心臓がくり抜かれているという話が上がった。
誰が言ったかは分からない。
けれど亡骸を持ち上げた時か
棺桶を持ち上げた時かに親族が参加して
その時パニックになって言い出したのだろう。
言っても聞かないからついに司法解剖をする医師が
わざわざ現地まで来て解剖の結果心臓が無くなっていた。
ただのパニックによる発作だと思っていた参列者も
ただ事じゃないと気付き最初に戻る。
みんな疲れている。
こんなこと早く終わらせて家で休んだ方がいい。
あの子はずっと家で眠っているのに。
語り部シルヴァ
『素足のままで』
今日も暑い。ただセミの声が聞こえなくなった分
静かな日中になったなと感じる。
部屋の温度計は変わらず30を超えている。
それでも網戸からは涼しい風は吹くし肌は汗ばむこともない。
ふと思い立って庭に出ることにした。
さすがに外は暑い。
靴もサンダルが肌に密着していると熱される。
風だけが味方してくれてる。
いっそ脱ごうか。
そう思いサンダルをポイと脱いで庭を踏みしめる。
小さな砂利は少し痛むし風で揺れる草はくすぐったい。
それでも少し心地いいと感じるのはなぜだろう。
残暑。そんな言葉がよぎった。
素足から伝わるこれらは残暑なんだろう。
少し寂しくなる。
もう素足から熱を伝わるあの感覚も
また来年になってしまったんだ。
残り火に縋るようにこのままの時間を噛み締めた。
語り部シルヴァ
『もう一歩だけ、』
もう疲れた。
面接も履歴書の制作も合否判定も全部疲れた。
精神面がもたない。
行きたいところも無いし内定は貰ったから
適当に選ぶのもいいのかもしれない。
本当に俺の行きたいところってどこなんだ?
俺にしか分からないとか今は気づいてないだけとか
わからないものはわからない。
けど...後悔はしたくない。
自分で言ってわがままだ。
これだけ内定貰ってるのもわがままだ。
だからこそ...自分が納得するまでやってみよう。
きっとこれを繰り返せば...本当に自分のしたいことや
自分の就きたい会社が見えてくるはずだから...
語り部シルヴァ