語り部シルヴァ

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7/15/2025, 10:19:12 AM

『2人だけの。』

"今日は部活早めに終わりそう"
"それじゃあいつもの場所で待ってるね。"

部活が終わり待ち合わせ場所に向かう。
視聴覚室や家庭科室とか
普段授業あまり使わない教室が集まった第2棟。
そこの最上階の視聴覚室前は特に人が来ない。
簡単な秘密基地のようで集まるにはうってつけだ。

四階もあって階段を登るのはすごく大変だけど...
登りきった景色はすごく綺麗で夕焼けの下走る車や
夕日を反射するビルのガラスがキラキラしている。

息を整えてる間に見るには絶景だ。
こんな素敵な景色をふたりじめなんて贅沢な話だろう。
だけど...

「ごめん、待った?」
振り返るとさっきの僕と同じように息が上がった君がいた。
君とふたりじめできるなら悪くない。
僕と君と、2人だけの秘密の場所。

語り部シルヴァ

7/14/2025, 10:31:44 AM

『夏』

照りつける太陽に焼かれた
アスファルトの上を歩いて三十分ほど。
大人しく電車を使えば良かったと後悔している。
目的地まであと一駅のところを何を思ったか
歩けばいいと考え今に至る。
その一駅がかなり遠く地図アプリで確認してみると、
なんと歩いて50分ほどだった。

先に確認すればよかったと後悔しつつも
足を進めないとこの灼熱地獄から
抜け出せないから歩き続ける。
ここら辺はなぜか自販機が全く見当たらず、
ここまで飲み物の補充はできていない。
唯一所持していた駅を出る前に買った
ペットボトルのコーラを口に運ぶ。

...ぬるい。三十分も日に当てられたらぬるくなってしまうか。
ため息をついて地図アプリでルートを再確認する。
目的地まであと25分。

流れる汗がジリジリと太陽に焼かれる感じがした。

語り部シルヴァ

7/13/2025, 1:05:16 PM

『隠された真実』

別れた元カノから手紙と一緒に花が来た。
紫色のトゲトゲした花びらにトゲトゲした茎...
花に疎い俺が知る訳もなく付き合ってた頃も
花についてよく喋っているのを聞き流していた。

「なーにそれ〜?」
彼女が俺の肩から顔を出して荷物の中身を覗く。
「お別れの手紙と花だよ。後で捨てる。」

頬にキスと頭を撫でて機嫌取りをして彼女を剥がす。
彼女は「重すぎて笑っちゃうね」と
悔しそうに言いながら飲み物を取りに行った。

捨てる前に手紙の内容を見る。
「今までありがとう。あなたのことは忘れない。」
もっと書いてるかと思ったけどこれだけか。
あと花も調べるか...

花の写真を撮って検索にかける。
"アザミ"という花らしい。
全部スッキリしたから手紙も花もゴミ箱に捨てた。

語り部シルヴァ

7/12/2025, 10:57:24 AM

『風鈴の音』

窓際に吊るした風鈴が風に吹かれる。
少し値段が張ったものの、
なんとなく市販より透明な音に感じる。
つんざくような音でも鈍い音でもない調度良い音。

気が付けば目を閉じて聞いてしまうくらいには
素敵な音だと思う。
この風鈴、些細な風でも綺麗な音が出るから
今日みたいなほんとにそよかぜでも音を出してくれる。
クーラーを止めて扇風機と桶に張った水に
足を突っ込みながら感じる風鈴の音は
日本の夏と言える風情ある音ものなのだろう。

今は太陽が一番照りつける時間だが暑さも
少しはマシになった気がする。

氷が溶けた麦茶をゆっくり飲む。
結露した水がズボンに垂れたが
それすら冷たくて気持ちいいと思う真夏日のお昼時。


語り部シルヴァ

7/11/2025, 10:31:00 AM

『心だけ、逃避行』

「ほら、行っておいで。」
胸を開くとハート型の小さなロボットがぴょんと飛び降りる。
こちらを向いてきたのでゆっくりと頷くと
小さなロボットは走り出した。

僕は人間を模して作られたロボット。
臓器と呼ばれるパーツは
人間が本来持っている場所に合わせられている。
各パーツは自立していて好きなように生きている。
だから僕の仲間はパーツが常時体外に出て
暴れ回っているなんてよくある話だ。

もちろん僕らは心臓なんてなくても生きていけるし
僕の心臓のパーツは随分と大人しい。
だが外の世界に興味はあるようでこうして仕事が終わったら
基本的に外に出して好きなようにさせている。

人間にこの話をすれば
「そりゃいいな。しんどい仕事も心が自由なら気楽だろう。」
と僕と同じような死んだ目で笑っていた。

人間は大変なんだなと思う。
人間もこんなこと出来ればいいのにね。

語り部シルヴァ

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