語り部シルヴァ

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『心だけ、逃避行』

「ほら、行っておいで。」
胸を開くとハート型の小さなロボットがぴょんと飛び降りる。
こちらを向いてきたのでゆっくりと頷くと
小さなロボットは走り出した。

僕は人間を模して作られたロボット。
臓器と呼ばれるパーツは
人間が本来持っている場所に合わせられている。
各パーツは自立していて好きなように生きている。
だから僕の仲間はパーツが常時体外に出て
暴れ回っているなんてよくある話だ。

もちろん僕らは心臓なんてなくても生きていけるし
僕の心臓のパーツは随分と大人しい。
だが外の世界に興味はあるようでこうして仕事が終わったら
基本的に外に出して好きなようにさせている。

人間にこの話をすれば
「そりゃいいな。しんどい仕事も心が自由なら気楽だろう。」
と僕と同じような死んだ目で笑っていた。

人間は大変なんだなと思う。
人間もこんなこと出来ればいいのにね。

語り部シルヴァ

7/11/2025, 10:31:00 AM