語り部シルヴァ

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7/5/2025, 10:48:48 AM

『波音に耳を澄ませて』

波が引いて波が寄せてくる。
小豆を転がしたり貝殻を耳に当てたりすると聴こえる音よりも
より鮮明でより耳に残る。
目を閉じればその音の心地良さに暑さを忘れて眠れそうだ。

夕焼け空に波音。そして沈んでいく夕日。
ここはコンビニすら無い何も無いところだけど
自然の景色だけは他に引けを取らないと思っている。
しかし本当にここは何もない。

時間ができて親に顔を見せに来たが
それ以外にすることがない。
よく十数年間もここで生きてこれたなとしみじみ思う。

多分十数年もの間。
今の俺のように波の音を聴いては目を閉じていたんだろう。
過去のことなんてあんまり覚えていないものだから
確信は無いけど、昔の自分ならきっとそうするだろう。

景色を見ながら波の音を聴いているこのシチュエーションが
どれだけやっても飽きないと思えたから。

語り部シルヴァ

7/4/2025, 10:50:47 AM

『青い風』

少し前から衣替えが始まった。
みんな堅苦しそうなブレザーをとっぱらって
制服のシャツ一枚になった。
幸いにもこのクラスはエアコンによるクラス内の揉め事は
起きずきちんと話し合ってエアコンの温度を調節したり
自分でひざ掛けを用意したりでルールを守っていた。

それでも窓側の席はガラスが
受けた日差しの熱によって机が温められる。
今日も暑くなりそうだ…
今は朝のショートホームルームが始まる前で人が少ない。
登校中に風が吹いていたのを思い出し、
窓を開けて風を浴びることにした。

しかしここは三階なのに風が吹かない。
それどころか朝からイチャイチャしながら
登校するカップルばかり目に入る。
...朝から見せつけてくるなあ。

クラスメイトが一気に教室に入ってきた。
そのことを理由にして窓とカーテンを閉めた。
閉じきれなかったのかカーテンは風を受けて揺れていた。

語り部シルヴァ

7/3/2025, 10:51:28 AM

『遠くへ行きたい』

「暑くなってきたねえ...」
「そうだな。」
「ここは冷房が効いてるけど暑いって感じるし、
暑い中アイスも食べれないから暇だよ〜」
「今度持ってきてやるよ。先生に相談しなきゃだな。」
「あ、私海行きたい海!」
「海もいいよな。今度行けたらいいな。」

「...行けるよね?」
「あぁ、きっと行けるさ。」

「あのね、私もっといろんな所へ行きたい。」
「うん。」
「海だけじゃなくて山とか見たい景色沢山ある。」
「行こう。絶対に。」
「約束...してくれる?」

俺は無言で指切りをした。
もってあと一週間。この時間で君と何ができるだろうか。

語り部シルヴァ

7/2/2025, 11:07:12 AM

『クリスタル』

私は病気持ちだ。
涙が水晶に変わる病気。たまに他の宝石に変わることもある。

鑑定士に見てもらうと
一生遊んで暮らせるほどの価値があるそうだ。
両親は大喜びしていた。病気の私にいつも感謝してくれた。
けどそれは私じゃなくて水晶にだろう。
最初こそ私の病気に寄り添ってくれたけど
今じゃ私の水晶のことにしか興味を示さなくなってしまった。

私が病気を治せばお母さんはどんな顔をするかな。
お父さんはなんて言うかな...

涙は真っ赤なルビーに変わった。

語り部シルヴァ

7/1/2025, 10:32:04 AM

『夏の匂い』

ジリジリと照り付ける太陽にアスファルトが焼ける。
靴に裏から伝わる熱がいかに暑いかを物語る。
湿気った風は体温を下げるどころか熱を籠らせる。

駅から出て数分なのにシャツが汗を吸って少しベタつく。
今日は自転車の方が良かったな...湿気った風が妙に匂う。
よく匂う...最近どっかで嗅いだことあるような...

悩んでいると空が轟く。
空を見上げた瞬間太陽が顔を隠し、雨が降ってきた。

夕立だ。あの匂いの正体は夕立だった。

語り部シルヴァ

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