語り部シルヴァ

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『波音に耳を澄ませて』

波が引いて波が寄せてくる。
小豆を転がしたり貝殻を耳に当てたりすると聴こえる音よりも
より鮮明でより耳に残る。
目を閉じればその音の心地良さに暑さを忘れて眠れそうだ。

夕焼け空に波音。そして沈んでいく夕日。
ここはコンビニすら無い何も無いところだけど
自然の景色だけは他に引けを取らないと思っている。
しかし本当にここは何もない。

時間ができて親に顔を見せに来たが
それ以外にすることがない。
よく十数年間もここで生きてこれたなとしみじみ思う。

多分十数年もの間。
今の俺のように波の音を聴いては目を閉じていたんだろう。
過去のことなんてあんまり覚えていないものだから
確信は無いけど、昔の自分ならきっとそうするだろう。

景色を見ながら波の音を聴いているこのシチュエーションが
どれだけやっても飽きないと思えたから。

語り部シルヴァ

7/5/2025, 10:48:48 AM