語り部シルヴァ

Open App
6/19/2025, 10:53:44 AM

『雨の香り、涙の跡』

早朝5時。この時間は人が通ることはなく、
朝早くに出勤か夜通しで走る車しか見かけない。
その空間は僕にとっては散歩するのに
うってつけというわけだ。

それに今日は雨。晴れた空が見れないのが残念だけど
なおのこと人通りが減るから僕は結構好きだ。
ズボンの裾が濡れているが足取りが軽くなる。
傘に弾ける雨粒も一定のリズムを刻む。
楽しいなあ...そう思う中、
元気な話し声が雨音を貫いて耳に響く。

(誰だ...?こんな早朝から...)
傘を少し持上げ辺りを見回すと
元気な話し声を出している人が歩いてくる。
向かいから歩いてきた人はいつも世話になっている先輩だ。
僕の...憧れの人。

(先輩だ!早朝から会えるなんてラッキー....)
そう喜んでいたのも束の間、
上がっていた口角は徐々に落ちていく。
その先輩の姿は日常で絶対見ない寝巻きのような服、
ボサボサの髪、おそらく化粧をしていない...
そして何よりやたらと距離感の近い男が隣で歩いている。

2人とも楽しそうで、幸せそうだ。
(...)
傘を下げて先輩にバレないように早足で通り抜ける。

こんなとこで僕の心のモヤモヤが
静かになくなってしまうなんて。
しかも雨の勢いが強まってきた。でも良かった。
これなら鼻水をすすっても気づかれなさそうだから。

語り部シルヴァ

6/18/2025, 10:24:29 AM

『糸』

君と私はずっと繋がっている。
昔君がいじめっ子から助けてくれてから私たちは始まった。
喧嘩したりもあったけど、私たちは絡み合えば合うほど
仲良くなっていく気がする。

それこそ腐れ縁かもしれない。
けれどどんな仲であっても私たちは離れられないと思う。
こんなこと言えば君はなんて言うだろうね。
きっと腐れ縁のことに
"そんなことない!"って全力で否定したり、
"だな。ぜっっったいに切れない何かで結ばれてる...
腐れ縁じゃなくて鎖縁ってね.."
なんてジョークを挟んでフォローしてくれるだろう。

実際に聞けばいいかもしれないけど、そんなことはしない。
君の言葉を借りるなら鎖縁かもしれないこの関係は
少しの歪みでも切れてしまうかもしれないから。

君と私は鎖のような、糸のような関係だから...

語り部シルヴァ

6/17/2025, 10:14:53 AM

『届かないのに』

夕日に向かって手を伸ばす。
届きもしないのはわかってる。
それでも僕含めみんな通る道だと思ってる。

あの夕日はなんだろうか。
夢なのか憧れなのか...
僕はみんながやってるからやってみただけ。
夕日の逆光で手の輪郭が鮮明に見える。
部活のせいもあって輪郭はボコボコだ。

伸ばした手をギュッと握る。
夕日を掴めるわけもなく
ただただ暑くなった空気を掴んだだけだった。

語り部シルヴァ

6/16/2025, 10:58:23 AM

『記憶の地図』

棚を掃除していると折りたたまれた紙がカサっと落ちてきた。
一瞬身に覚えなのないものだったが
持ち上げようと触れた瞬間記憶が蘇る。

紙を広げると自分ともう一人が書いた地図だった。
お気に入りのカフェや良く行くゲーセン。
お揃いの服を買いに行った洋服屋。

2人がどれだけ歳をとってもこの思い出を忘れないように。
そこで彩られた日々を色褪せないように...

今じゃなんの意味も無い紙切れだ。
躊躇したが紙をぐしゃぐしゃにして
ゴミ箱に捨てて掃除を続けた。

語り部シルヴァ

6/15/2025, 10:54:06 AM

『マグカップ』

ガシャンと大きな音を立ててマグカップが割れる。
飲み物は幸い入っていなかったが
陶器の破片がかなり散らばった。
小さい頃からずっと使っていたから
そろそろ壊れるかなと思っていたが本当に急に壊れた。

陶器の欠片を一つ一つつまみあげる。
なんだか今まで使ってきた思い出を拾い集めている気分だ。
夏にはアイスコーヒーを、寒い日にはココアを。
何気ない日常の日々の中で嗜好品を味わせてくれた。

初夏なのに冷たくなった陶器は
まるで宿っていた命の終わりのような冷たさだ。

「...ありがとう。」
そう思ったから不意に言葉が零れた。

明日からのマグカップを買いに行かなきゃな...

語り部シルヴァ

Next